NATUREINTERFACE.COM
ネイチャーインタフェイス株式会社 info@natureinterface.co.jp TEL:03-5222-3583
ネイチャーインタフェイス > この号 No.01 の目次 > P016-018 [English]

ネイチャーインタフェイスのための未来技術 -- ラファエル・ライフ



p16-18

ネイチャーインタフェイスのための未来技術

ラファエル・ライフ マサチューセッツ工科大学教授

Rafael Reif

1950年 ベネズエラに生まれる.

1987年 マサチューセッツ工科大学教授.

1990年 マサチューセッツ工科大学,マイクロシステム技術研究所所長.

1999年 マサチューセッツ工科大学,電子工学・コンピュータ科学学部,副学部長.現在に至る.

    専門は,マイクロエレクトロニクス製造技術,他.

    IEEE, 米国電気化学学会,米国物 理学会,会員.

1993年 半導体薄膜の低温エピタキシーの先駆的研究により,IEEEフェローとなる.

ネイチャーインタフェイスの構想、そして自然との対話を可能にする機器や技術に関する構想は、強力です。

ネイチャーインタフェイス構想とその実現は、私たちの思考対象も思考方法も変えることになるからです。

しかし、このネイチャーインタフェイス構想を具体化するには、先端技術、その中でも特に、マイクロおよびナノの寸法領域を利用可能にする技術が必要です。

私は、この小文で、ネイチャーインタフェイスの概念を具体化するためには何が大事であるかということに焦点を当てながら、マイクロ・ナノ寸法領域の技術におけるいくつかの課題をまとめてみたいと思います。

背景

 マイクロ製造技術によってもたらされた情報革命は,私たちの生活を大きく変えました.数多い革新技術の中でも,パーソナルコンピュータ,インターネット,無線通信,光通信,そしてワールド・ワイド・ウエブは,私たちの仕事のやり方も余暇の過ごし方も変えました.30年前には誰も予想できなかった革新技術により実現されたこの大変化も,もし30年後に振り返るとすれは,新時代の揺籃期の出来事と見えることでしょう.未来を予測しようとしても,うまくいかないでしょう.仮に予測したとしても恐らくは外れるでしょう.しかし,今,想像できることは,現在すみずみにまで及んでいると思われているマイクロエレクトロニクスでさえもその影響力は,将来のナノ技術が,仕事や余暇に対してだけでなく医療診断,治療,旅行,娯楽,通信,その他に与えるであろうインパクトに比べれば,範囲が極めて限られているように見えるであろう,ということです.ナノ技術はまた,人間と自然の対話を,今は誰も思いつかないようなやり方で実現するための数多くの手段を提供してくれることでしょう.

 私たちの日常生活で,ナノ技術が重要な役割を果たす場面は数多くあります.以下では,その中でも,ネイチャーインタフェイス構想では欠くことのできない演算処理と通信を取り上げます(図参照).

 

 過去30年間にまき起こった情報革命では,シリコン半導体産業の発展が原動力でした.最近では,依然として続くコンピュータの単位容積当りの処理能力向上が,現在の情報通信革命を推進してきました.情報の蓄積と処理は,多数の情報機器を接続した多様な通信ネットワーク上で,ますます分散化された形で行われています.このような,ネットワークで結ばれた情報機器による協調処理能力が,ネイチャーインタフェイス機器およびシステムの稼動に本質的に欠かせない,ということがいずれ証明されるでしょう.MITでも国でのようなマイクロシステムの研究を続けています。ただし,今までマイクロエレクトロニクスが謳歌してきた性能向上の傾向が,今後も同じペースでずっと続く訳ではありません.MOSトランジスタをスイッチング要素に用いるような,電子技術は,その驚異的な使命をもうすぐ終えようとしているのかも知れないのです.半導体電子回路の最小の構成要素であるMOSトランジスタは,その微細化追求の過程で,物質の量子力学的性質に由来する障害に最初に突き当たるであろうと広く考えられています.この障害が,トランジスタと配線構造を微細化し,さらに高速で高密度の電子回路を作ることによって達成される性能向上のペースを鈍らせると考えられます.加工できるギリギリの寸法までの微細化を追求しようとすれば,トランジスタの構造も配線構造も大胆に変える必要があります.この研究分野は,未踏の領域に属します.そしてそれは,ネイチャーインタフェイスの世界で必要となる技術の重要な部分に相当するのです.例えば私たちは,いつまでMOSFET電子デバイスをディジタル情報のスイッチングと処理のために使い続けるでしょうか?それほど遠くない将来に,量子デバイスをスイッチングに使えるようになるでしょうか?あるいは,生体細胞が行っているのと同じ原理で情報を処理するようになるでしょうか?

 もう一つの重要な研究目標は,通信システムの性能拡大です.現在,演算速度向上のペースと通信速度向上のペースとの差が広がりつつあります.1980年代の初頭から現在までに,マイクロプロセッサの処理速度は約100倍になり,記憶密度は1000倍を優に越えました.しかしCモデムや地域アクセスの速度は10倍になったに過ぎません.アクセス速度は,通信伝送の媒体によってある程度の制約を受けていますが,それにしても情報処理と通信の融合のための技術の進展が,情報量の増大に追いついていません.これは,エレクトロニクスの世界がフォトニクスの世界と結びつく(あるいはフォトニクスの世界に置き換えられる?)研究分野の一例です.遠からずエレクトロニクス主体のデバイスから,光(フォトニクス)主体のデバイスに移行するのでしょうか.

 ネイチャーインタフェイス構想を実現するために,特に重要な研究活動は,情報処理システムにおいて,集積化された機能を高めることです.これは,シリコン集積回路に機能を追加したり,シリコンベースの電子技術にフォトニクス技術を融合することで達成できるでしょう.最も重要な新機能は,高周波から光までの周波数領域をカバーする通信の機能です.この研究分野は,非常に多くの可能性がある分野です.機能性向上の実現を目指すに当たっては,シリコン技術への今までの膨大な産業投資をうまく利用することが大事です.一方,フォトニクス技術は,それ自体に,魅力的で飛躍した技術を生み出す可能性を秘めています.

 最後に,演算処理,通信,および機能性の向上は,エネルギ消費の改善とともに実現されなければならないことを書いておきます.ネイチャーインタフェイス機器は,極めて低いレベルのエネルギで機能するだけでなく,必要なエネルギを自ら供給できる技術を具備しなければならないでしょう.将来,ナノ・エレクトロ・メカニカル技術を駆使することにより,ネイチャーインタフェイスシステムにおいて,必要なエネルギを自ら生み出せる装置を作ることができるでしょうか?

 

結論

 私たちは,これから,歩みを止めることなく,ネイチャーインタフェイスの世界に入っていきます.そして,そこで自然と向き合い,今は夢でしかないような方法で自然から学ぶことができるようになるでしょう。この構想を実現するための主要技術は、低エネルギの演算処理と通信によってもたらされます。ネイチャーインタフェイス構想を実現するには、壮大な進歩が必要です。しかし、この構想は、私たちに素晴らしい動機付けを与えてくれます。

(訳:山内規義)

NATUREINTERFACE.COM
ネイチャーインタフェイス株式会社 info@natureinterface.co.jp TEL:03-5222-3583
-- 当サイトの参照は無料ですが内容はフリーテキストではありません。無断コピー無断転載は違法行為となりますのでご注意ください
-- 無断コピー無断転載するのではなく当サイトをご参照いただくことは歓迎です。リンクなどで当サイトをご紹介いただけると幸いです
HTML by i16 2018/10/17