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環境と住まい 1) 温室とガラスビル -- 冬沢 杏






p28-31

環境とすまい その1

温室とガラスビル

代建築は工業製品である鉄とガラスを使うことで成立したといえる。ガラス建築の歴史と、その環境へのインパクトをみてみよう。

冬沢杏

増えるガラスビル

 全面ガラス張りのビルが増えてきたのは1970年代以降である。日本では1974年の新宿三井ビルが最初だった。また、全面ガラス張りとまではいかないが、アトリウムを備えたビルも増えた。アトリウムとは、もともとは前庭のことだが、現在ではホテルやオフィスビルなどの大規模な建物に設けられた、屋根や壁面がガラス張りの中庭のような空間をいう場合が多い。ガラス張りの建築が増えたのは、大型の平滑な板ガラスができるようになったこと、空調の普及といった技術的なことのほかにポストモダン建築の流行といったデザイン的な側面もある。

 北欧やカナダなど寒い地域には、ガラス張りの商業施設が多い。この手で最大級のものがカナダのエドモントンにあるウェスト・エドモントン・モールである。ここは「極北における熱帯」をテーマとしていて、温水プールを中心としたレジャーセンターを含めた大規模なショッピング・センターである。これと同様な施設は、バブルの時期には日本でもいくつか計画されたが、なぜか実現したのは南国宮崎のシー・ガイアだけであった。

 ガラス張りの建物は、商業施設だけでなく、むしろオフィスビルに多い。ニューヨーク、トロントといった北の町から、はては南国のマイアミ、バンコク、ホンコン、ドバイに至るまで世界中どこへ行ってもガラス張りのビルが林立している。数年前のクリスマス・イブの夕方、バンコク名物の渋滞にはまってしまった。いかにもポストモダンです、というミラーガラス張りのビルに電光表示された「37℃」という文字をみながら、温室よりも暖かい気候で、なぜわざわざガラス張りの建物をつくるのだろうか考えてしまった。

ガラスビルは暑いか?

 北欧など寒い地域でガラス建築が作られるのは理解できる。だが、これを熱帯で作ったら暑くないのだろうか?実際に熱帯にあるビルで測ってみればよいのだが、そうもいかないので日本の夏に測ってみた。日本の夏は熱帯とあまり変わらない。測った建物は上からみるとほぼ卵型をしており、周囲は全面ガラス張りで、温室と違うのは屋根がガラスでないことだけだ。写真の手前側が南面で、ここは3階の高さまで吹き抜けのアトリウムになっており、この部分だけは空調がはいっていない。

 示したのは7月末の計測結果である。建物内の温度は日の出とともに上がり始め、太陽の直射を受ける東側の窓面は午前8時前には摂氏40度に達してしまう。室温もエアコンが動き始める午前8時には28度まで達している。アトリウムの室内温度は、午前9時ごろから午後4時ごろまで35度を超え温室そのものである。夕方になり太陽の直射がなくなると室温は下がり始めるが、壁や床に蓄熱が放出されるのに時間がかかるのでアトリウムの温度が30度を切るのは夜も10時過ぎである。

 このように、全面ガラス張りの建物はやはり暑くなるということがわかった。ビル内が暑くては困るのでエアコンで冷すことになるから、当然、電気消費が大きいいうことになる。

 計測した建物では、素透しのシングルガラスという熱環境上では最も悪い材料(これは、普通の温室と同じである)を使っているが、さすがに普通のオフィスビルでは、着色された熱線吸収ガラスや、光を反射するミラーガラスを使い、建物内部への日射を抑えている。実際、暑い地域のガラスビルでは、着色ミラーガラスが使われていることが多い。この反面、北ヨーロッパなどの寒いところでは、太陽エネルギーを多く受ければ、冬の暖房エネルギーを節約できるので有利なので素通しのペアガラスを使っている例が多いようだ。

 店舗などの商業建築物や、コンピュータを多く利用するオフィスなどでは、建物内部での発熱が大きく、冬でも冷房をしていることが多い。

このような場合は、外部からエネルギーを受け取らないようにするのが有利なので、温室はエネルギー的には損である。

 ミラーガラスも、建物内部に入る光線を抑えることはできるが、反射した光が思わぬ事態を招くこともある。バンコクでは、ある新築のミラーガラス張りのビルに対して、向かいの小学校が「太陽の反射で熱くなった」と訴訟を起こした。また、新宿などでは、ミラーガラスのビルの谷間を歩くと、オーブンの中にいるようだとの声もある。

 ガラス建築は近代的な美しさをもっている。ポストモダン建築の流行とともに熱帯都市などでも増加してきたが環境上での問題も見られる。気候・風土に対応した建築様式が必要であろう。

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