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ワールド・ウォッチの目で見る この地球に12億人の飢えと12億人の肥満が

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二一世紀への地球環境財団の使命

財・地球環境財団理事長 立正大学大学院教授  福岡克也

地球時代へ価値感の転換を

 地球時代(地球的規模で思考し、地球的規模で行動し、地球的規模で新たな文明を創造する時代)を迎え、地球時代に対応する人間と自然のあり方が問い直されている。地球は水、土、大気、緑などの有機的な連関とバランスのもとで成り立つ一つの生命体である。

 しかし、二〇世紀において、人間の経済活動は生態系と人間系との間の物質循環(資源を取り込み、廃棄物で返すメカニズム)のバランスを崩し、エネルギーの大量使用と合わせ、地球に対して多大の負荷と損失を与えてきた。この基本的要因は、近代文明による自然の回復力を超える収量と物質的要求によるものであり、利便性のみからなる文明の矛盾の拡大の結果である。この状況を受けて一九八五年四月には、わが国で初の環境学会として緑の文明学会(初代会長・茅誠司東大元教授)が、文明の転換を訴えて創設された。

 人間の進歩が、自然からの主体的な自立にあったことは歴史的に否定できないが、今さまざまに生じている環境汚染や環境破壊は、人間の自立が、科学技術の進歩や社会的発展のあまり、自然と乖離し、自然に対する傲慢さを強めてきた表れである。

 この危機を克服するために二一世紀がある。このためには、人間のもつ価値観が根本的に正されなければならない。すべての価値観の基本は生命であり、またその生命を育む自然である。

 地球時代の原点は、西洋のヒューマニズムと自由、東洋の物心一如、自然への畏敬などを一つに、して人間が自然への根源的な愛を自覚し、人間と自然との共生の文明を創造するところにある。二〇世紀の物質文明は、結局のところ、すべての生命体の共通の財産ともいうべき地球資産の価値を見失っていたといえる。

 人口が増加し、経済成長をし、われわれはより多くの資源を必要とし、採取の規模は増大し、廃棄物も大量化している。とくに非分解物質などによる汚染は、地球そのものの生命としての自律的機能までも損なっている。地球時代において、今まで市場で無視されてきた、人間と自然との物質的バランスを回復し、新たな地球再生の理念のもとで、文明や経済のシステムを再構築しなくてはならない。

 われわれはエコロジーという観念を広げ、これを人間と自然との間の新しい共通概念として、過去の概念と価値観を置き換えることが必要となった。二一世紀に向かって、「人間と自然の共生」を実現すること、これなしに人類の将来も真の豊かさはないし、地球の再生もない。

二一世紀における

地球環境保全の旗手として

 二一世紀にあっては、この大目的を達成するために、各国・各民族それぞれの社会で、企業も、住民も、行政も、すべてが役割と責任を分担し、協力していかねばならない。

 地球環境財団は、一九八五年、「地球の健康をつくる会」として発足し、機関誌『アクア21』を発刊、首相サミットへ「地球環境再生のための国際協力」を提言、「ガボロジーフォーラム」で循環型社会の形式をいち早く提唱した。一九八七年、財団法人地球環境財団として設立され、地球環境保全のための民間資金だけによるNGO(環境庁所管の公益法人)として発足した。環境分野での学者や民間研究者に環境行政の専門家を加えた専門研究調査事業に着手し、森林の保全と適正な活力、公害防止のための技術開発、環境専門家の海外派遣システムの開発、廃棄物処理・処分、リサイクルの促進など、緊急の課題に対する対策について検討し、環境行政への協力を行った。これらの自主的調査研究は、「地球環境研究」レポートとして発刊し続けてきた。

 さらに地球環境国際シンポジウム、アジア国際環境シンポジウムなど、一九八六年より一九九〇年にわたって数次にわたって大規模なキャンペーンを行った。

 一九九〇年には、国際環境計画(UNEP)による世界環境意識調査のアジア調査担当機関として、日本・中国・インドを対象国として調査を行い、とりまとめをした。

 一方、独自の環境研究調査と並行して、より広汎な環境研究の発展のため、「地球環境財団研究奨励金」制度を創設し、一九九〇年以来、公募と審査による奨励金の交付を行っている。研究の成果は、「地球環境研究」に公表し、環境研究の発展に寄与している。とくに森林・自然保護分野、環境汚染・公害防止技術分野、エコロジー文明分野に対する公募を行っているのが特徴である。一九九一年の湾岸戦争による海洋汚染、一九九二年のリオデジャネイロ第二回地球サミットなどへ現地研究調査を実施した。

 具体的な環境保全対策としては環境対策委員会(その後環境浄化推進委員会)として、一九九二年より、廃棄物対策(ゼロエミッション)、生ごみ対策(とくに九州地方においては大きな成果を挙げている)などを推進している。

 環境教育面でも一九九七年以降、ダイオキシン緊急対策講座、環境オンブズマン講座、食養士養成講座、環境指導員(企業内)養成講座、環境保全理美容研究など、各分野への展開を図り、顕著な成果を挙げている。雑誌『アーシアン』は一九八七年以来、月刊で継続している。「地球白書」の刊行以来、これに対する助成と編集協力も行っている。

 これらの活動を支える会費収入のほか、一九九一年より、三菱信託銀行、安田信託銀行、三井信託銀行が、財団に向けての「ちきゅう信託」「かんきょう信託」「社会貢献信託」の制度をつくり、支援をしている。

 二一世紀に向け、これらの事業に加えて、IS014001、9000の審査認証機関としての活動、LUCC研究所その他の付置研究所の設置、海外研究機関との協力事業を加え、本格的な総合的環境保全推進NGOとして生まれ変わろうとしている。

 二一世紀においては、「地球生態系再生戦略と再生計画」「環境価値の導入による新環境政策と経済システムの創造」「東アジアの経済発展計画と環境保全計画」「環境公害、外来種侵入などからの生態系保護計画」「環境管理と循環経済システムの改革」など、地球時代における環境保全のため、国際的な貢献を目指した調査研究や国連などへの提言を行うこととしている。多くの人たちの参加をお待ちしている。

地球環境情報

ワールドウォッチの目で見る

この地球に一二億人の飢えと一二億人の肥満が

 ここ一〜二年NHKTVはじめ、米国のワールドウォッチ研究所がマスコミに度々登場した。「環境の時代」である二十一世紀への幕開きであれば、これも当然のことなのである。NHK衛星第一で夕刻のおよそ一時間にわたり、タイトルもズバリ『地球白書』が紹介された。シリーズとして数回にわたり放送され、それも世界向けに制作された。

 朝日新聞でも、ワシントンD・Cのワールドウォッチ研究所発の『地球白書』のプレスリリースの要約が取り上げられた。ヘッドラインは「米研究所が白書|地球延命h人口七〇億人に抑制i必要 気温安定も課題h再生エネルギーをi」というものであった。

 これは、もちろん邦題『地球白書』の原書であるhSTATE OF THE WORLDiの原書のプレスリリースで、年次刊行物として一九八四年に創刊され、以来、本文の組み体制も表紙もほぼ一貫したものだった。その上には、この報告書が「世界で一〇〇万部以上売れていることが表示されている。何しろ三〇カ国語以上で翻訳出版されているから、そのような数字にもなる。二〇〇〇年版からは、ブラジルでも発行されるようになった。

 「水が世界を脅かす|枯渇・汚染で奪い合い懸念」という見出しで、世界の主要河川の水不足とその影響が紹介された。水源から河口までに複数の国が横たわる国際河川では、上流国と下流国とで水の奪い合いが起きている。中近東を流れるチグリス・ユーフラテス川、ビクトリア湖からアフリカ北部へ流れるナイル川、インドとパキスタンを流れるインダス川、そして黄海まで流れがたどりつけない黄河の状況について、ワールドウォッチ研究所のデータとレスター・ブラウンのコメントを紹介しながら、現地取材のレポートがされている。

 こうした世界の水不足を扱った『ワールドウォッチ』誌も参考となる。水不足といっても、アジアモンスーンに位置して緑に恵まれたわれわれには、せいぜい夏の渇水といった程度のイメージしかないが、水があってこそ穀物が安定的に生産され、古代文明が生まれた。しかし、少ない水を農業に生かすために灌漑をし、その水管理の経験不足から農地に塩分が蓄積されて、穀物生産力が極端に低下し、滅亡していった文明が少なくない。今日にあっても、武力紛争の火種は石油より水資源にあるともいえる。

 ワールドウォッチ研究所は恵まれた環境のワシントンD・Cにあっても、世界の厳しい現実を摘出して見せる。日本では今日九〇〇億k弱の水を利用しながら三〇〇〇万トンの穀類を輸入している。穀類一トンの生産には水一〇〇〇トンを要するので、実は三〇〇億kの水を輸入していることに他ならない。

 朝日新聞では「太りすぎ一二億人|飢餓人口と同じ」というワールドウォッチ研究所の見解が紹介された。この記事を読んで、環境問題の世界一流の研究所が「肥満」と「飢餓」を取り上げるところに、またワールドウォッチ研究所のユニークさと一流たる由縁を見る思いがした。オゾン、CO2 、森林消失等々も大切な問題であり、複雑に相互作用をしている。しかし、世界(ワールド)を見つめる(ウォッチする)目の高さは、南北間に横たわる矛盾を見つめ、たえず弱き者に思いをめぐらせている。

 レスター・ブラウン所長は久保田博二さんという写真家がとらえたアジア諸国の厳しい食料事情と日常生活をテーマにした写真集『アジアと食料』に心を動かされ、すいせん文を快く引き受けてくれた。この本が日本で出版されてから、友人は久保田氏と共にワシントンのワールドウォッチ研究所へ出版の報告とすいせん文のお礼に行ったところ、ブラウン所長は「大変によい写真集だと思う。厳しい現実をより多くの人々に知ってもらいたい」と述べたとのことである。ブラウン所長は「自分は活字によって、久保田氏は写真によって、それぞれに役割を果たそう」という思いであったのであろう。

 都市化の進展が農業生産者と一般消費者を遠ざけ、便利さを求めるライフスタイルがパックに入った加工食品やファストフードの需要を押し上げるという、どこにでも見られる今日的な状況によって、食品産業は食物連鎖の中心にあって強い力を発揮するようになった。新たな形態の商品とサービスを供給し、それによって新たな需要を引き出しているのである。彼らは利益増大を実現するために、健康には良くない食品も所かまわず売り込んでいる。

 思い通りに企業展開するための「食環境」をつくり上げる最大の武器は宣伝である。アメリカで食品産業が宣伝に投下する金額は年間三〇〇億ドルに達すると推測され、他のいかなる業界をも上回っている。途上国においても、所得の増加と共にこうした宣伝費が急増傾向にある。

 そして、残念なことに宣伝攻勢の激しい食品ほど栄養的に見ると首をかしげるものが多いようだ。アメリカでは、ファストフードのレストラン業界だけで食品産業界の宣伝費総額の三分の一に達した。世界規模で見てもコカ・コーラとマクドナルドはその宣伝費のランキングのトップテンに顔を出している。しかも、食品産業がスポンサーとしてターゲットにしているのは、十分な判断力が育っていない子供たちである。たしかに人間が甘いものを好むのは自然なことであるが、子供時代に甘くて、しかも油の多い食品に囲まれるようにして育つと、生涯にわたって、こうした不健康的ともいえる食品の囚になってしまうという調査結果がある。

 加工食品は付加価値を生み出すのが最も容易である。たとえばドーナツ|原料である小麦粉、油、卵、砂糖といった商品を別々に売るよりも、はるかに大きな利益をもたらす。

 マーケティング戦略の最新の手法はジャンボ・サイズである。これはレギュラー・サイズの価格に、ほんの少し上積みするだけで消費者サイドからは「お得」な買い物に思える。実際、フレンチ・ポテト、ポップコーン、ピザ、炭酸飲料など、さまざまなファストフード関連商品で展開されている。一見して「お得」な商品だが、実はこうした商品全体のコストに占める原材料のシェアは極めて小さいもので、企業サイドの負担増は大した額にはならない。実態として、消費者はブランド、容器、宣伝のためにかなりの額を支払っているわけだ。

 こうした戦略によって先進国のマーケットが飽和状態になってくると、利益を追い続ける食品企業の目は所得が増大している途上国に向けられる。メキシコでは一人当たりのコカ・コーラの消費量はアメリカを追い越してしまった。このコカ・コーラ社の一九九八年の年次報告では、アフリカの急速な人口増加と一人当たりの炭酸飲料の消費量が少ないことに着目して「アフリカこそは、我々のビジネスチャンスである」と述べている。また、アメリカのファストフード・レストランも海外出店を急速に展開している。マクドナルドは毎日五店舗を新たに出店しているが、そのうちの四店舗はアメリカ以外の国である。こうして、途上国の都市には先進国の人々の健康に影響を与えている食品が、大量に出まわっている。

 貧しい人々は栄養学的な知識を得る教育機会も少なく、砂糖と脂肪の多い、安いジャンクフードを食べてしまいがちなのである。望ましい食習慣が一部のエリート階層から社会全体に広がっていくか、それとも肥満が飢えと同様に貧しき人々の悩みになってしまうのか|二〇〇〇年代幕開きの一〇年間、事態は果たしてどのように展開するのだろうか。

    *    *    *

 さて、私たち日本の食環境は豊かなのだろうか。一国の食糧政策には、その民族の未来がかかっているのである。

            (福岡克也)

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