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ネイチャーインタフェイス・システム研究の最前線 -- 板生 清

あらゆる生態系の連続的な関係を見据える、ハイブリッドな科学技術を目指して

ネイチャーインタフェイス・システム研究の最前線

板生 清(東京大学教授・本誌監修)

創刊号では、ネイチャーインタフェイスの基本概念を述べたが、今回は、東京大学を中心に進めているネイチャーインタフェイスシステム研究の具体的な目標とその応用技術について述べてみたい。

研究開発の背景

ウェアラブル情報機器は、精密情報機器技術を基盤とする小型センサ技術や微小エネルギー技術など、日本が得意とする研究分野をベースにしている。これらの技術は、腕時計型のコンピュータやPHS、超大容量ハードディスク、光ディスクとしてすでに製品化され、現在のIT産業の牽引力ともなっている。図1に示すように時計と電話とコンピュータが三本柱である。その研究レベルでは、ウェアラブルコンピュータにカメラを接続した工場での作業管理システムや、心電計とウェアラブルコンピュータを結合したヘルスケアシステムなどの開発がはじまっており、広範な分野でのセンサ端末が注目されている。

これら微小なセンサ端末に関する研究は、日本時計学会主催のウェアラブル情報機器シンポジウムにおいて、最も活発な情報交換が行われ、過去6回の会議が開かれている。

ネイチャーインタフェイスシステム・開発のねらい

センサ、エネルギー源、CPU、無線デバイスからなる微小な端末をネイチャーインタフェイサと呼ぶ。これはウェアラブルがさらに進んだ形態だ。この端末を、人間や自然や人工環境に組み込み、情報を収集し、各種環境の高度化に役立てることがねらいである。また、このようなセンサ端末の研究開発は、医療福祉や自然環境監視の基礎となる。また、端末数が数兆台と予測される将来のインターネットにおける基本モジュールともなる。このようにネイチャーインタフェイサの開発は、21世紀の情報技術の推進と普及に欠くことのできない研究であるといえる。

そのキーとなる技術は人間や動物がもつ五感の機能と判断・記憶能力を実現する技術で、図2のような構成技術である。つまりハード(デバイス)とソフト(アルゴリズム)に大別され、デバイスはエネルギー、センサ、通信機、プロセッサが主要素となり、アルゴリズムは対象に対して各々千差万別である。

研究テーマ 人間環境への応用研究

ウェアラブルな生態情報収集システムを開発し、その技術をヘルスケアに応用することが期待されている。それは、心電計、加速度計などの既存センサにに加え、筋音、咀嚼、発汗センサなどの新開発センサや超高密度光メモリ、人体が発するエネルギーを用いた充電機能などを備えることが大きな特徴となっている(図3)。また、人間の認知過程のモデル化や、さらにこれらの技術を基盤に、疲労感や快適性認識の定量化法の研究、ネイチャーインタフェイサの知的インタフェイスの開発を行うこともそのテーマのひとつ。また、自動車運転者、プラント保守者、造船内作業員などの快適性、安全性への応用、計算機上での協調作業効率化の研究といった労働環境への応用も照射している。

研究テーマ 自然環境への応用研究(図4・5)

自然環境への応用研究については、野生動物や植物の観測と大気分析を行うことが最も大きなテーマだ。

前者では、GPSやPHSに、姿勢、温度、加速度などのセンサを組み込み、動物に装着することで野生動物の生態そのものを詳細に観測することができる。まず、既存デバイスの組み合わせにより試作して可能性を確認し、次いでマイクロマシニング技術による超小型センサの実現を目指す。

後者に関しては、重金属や化学物質の浮遊環境における環境微粒子(大気浮遊微粒子、地下水中分散微粒子)のレーザ計測システムを構築する。またその小型化と、GPSによる位置探査技術により、SPM、花粉などの時々刻々の空間分布の観測も可能となる。

その方法は以下の通り。

まず大気をポンプ吸引して収集のみ行い、これに場所と時間データを付与し、分析は研究拠点にて行うオフラインシステムを開発する。次に、センサもウェアラブル化して、リアルタイムに表示するシステムや人の位置、発汗、照度などのデータを無線伝送したり、建物内の空調や証明をリアルタイムに制御するシステムなどを構築する。さらには、生産機械の切削音や画像から故障診断を行い、遠隔通報するシステムをつくり上げる。

この時、センサとしては、まず、既存のマイク、カメラを用い、次いでマイクロマシニングによる微小振動子や首振りつきマイクロカメラなど を導入する。その結果、例えば従来故障診断が困難であった時計などの微小部品の切削作業、多芯光ファイバモジュール組立て作業、電子部品はんだ付け状況の監視などが可能となる。このように、ネイチャーインタフェイサは、船舶・航空機・自動車などの大規模生産現場から情報機器・精密機器などの精密生産現場などへと応用されるわけだ。さらには物流状況のデータベース化をしたり、交通システムの安全性と効率化の研究に提言を行うこともできる。

技術開発テーマ センサ・アクチュエータの研究(図7・8)

ネイチャーインタフェイサでは、非破壊で情報量の多いセンサが前提となるであろう。これには画像と音響データが有効だが、さらに方向を変化させると性能が格段に向上することが重要である。このためにCCDチップに3自由度振動機構を結合した、直径10o程度の首ふりカメラを開発し、また音響・振動データ収集のため、1o角以下のアレイ状振動子を製作する。

具体的には、まず、既存CCDに3自由度振動機構を組合わせた、50o角の高山植物監視カメラを開発する。次に、3自由度球面アクチュエータを用い、先端部直径5oのはんだ付け検査用カメラを製作する。さらにマイクも組合わせ、はんだ付け検査用カメラを製作する。さらにマイクも組合わせ、はんだ付け、高密度配線板、光ファイバ組立て、精密部品検査に適用可能な装置を開発する。音響ネイチャーインタフェイサとしては、PZT薄膜により自己検知可能なカンチレバーアレイを製作し、ボタン電池、FM送信回路などと一体化した超小型振動検出チップを開発する。

技術開発テーマ マイクロエネルギー源の研究

以上に述べてきた研究では、自然が発信する情報をネットワークにつなぎ込むためのシステムの開発、プロトコル、無線装置、電源系の検討と設計、人体表面などの情報伝送のデバイスや、人体を導線として利用する方式の研究が待たれる。また、工場や病院など、ノイズに敏感な環境での光無線方式も検討している。

このように、今回はネイチャーインタフェイス技術を概観したが、次号は、さらなるネイチャーインタフェイス・フロンティアについて述べてみたい。

詳細をお知りになりたい方は『ウェアラブルへの挑戦』(板生清著/工業調査会)をご参照下さい。

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