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自然遺産の旅 観光地パリの美しい棚田 -- 冬沢 杏

観光地バリの美しい棚田

自然遺産の旅

観光地として有名なバリ島。ヒンズー教、ガムラン、様々な寺院、そして最近では生活雑貨などばかりが話題になっているが、実は美しい棚田があることはあまり知られていない。

バリの棚田をレポートする。

写真家や画家が魅了されたバリの棚田

インドネシアのバリ島は、年間140万人の観光客が訪れる東南アジアでも有数の観光地である。信仰と芸術の島として知られるバリ島は、ビーチ、寺、民芸、舞踊など多くの観光資源があるが、棚田の景観も有名である。島中部のウブドゥは、中心観光地のひとつだが、アユン川の斜面にはフォーシーズンズなどの最高級のホテルの瀟洒なバンガローが建っている。

 一見、バリと棚田は結びつかないが、バリの棚田が有名になった理由は、箱庭的な美しさのおかげで、多くの写真家や画家によって紹介されてきたためである。

バリ島は火山の島である。島の東側には、標高3142メートルのきれいな円錐形をしたアグン山があり、北部と中部にはそれぞれ外輪山とカルデラ湖を持つバトゥール山とバトゥカウ山がある。アグン山とバトゥール山はこの終十年の間に何度も大噴火を繰り返しており、多数の犠牲者を出している。1963年3月のアグン山の噴火では、火山の噴出物によって世界的に気温が低下したことでも知られている。

バリの棚田は火山地形と密接な関係がある。火山灰でできた斜面は、標高1000メートルよりも高いところでは、気温も低く水も得にくいので一帯がジャングルとなっている。標高が1000メートル以下のところでは台地上は畑や竹林になっている。そして、斜面が下方侵食されてできた深い渓谷の急斜面には箱庭的な棚田が作られている。さらに標高が500メートル以下の山麓では緩斜面に灌漑による雄大な棚田が広がる。特に島の西部のププアンから南部のタバナンにかけては、斜面全体、あるいは広い谷全体が棚田になっており、これが波打って続く雄大な景観となっている。

バリの気候は、熱帯サバナ気候で年間を通じて気温は27〜28度であるが、10月から4月にかけては、雨季のため雨が多く降る。気温がほぼ一定のおかげで稲はいつでも栽培できるため、二期作、あるいは三期作も可能である。したがって、刈り取り中の水田の隣では田植えをしているという光景を目にすることができる。

この稲作を支えているのが、灌漑である。バリの灌漑は、1000年も前から行われており、伏流水が湧き出る泉などを水源として、火山岩をトンネルで抜けたり、小さな谷を竹筒で越したりして棚田に導かれている。用水は水田に水を供給するだけでなく、洗濯や沐浴の場など人々の生活には欠かせない。用水路は、「スバッ(Sbak)」と呼ばれる共同体で管理されている。スパッは、

日本の農業組織である「結い」と似ていて、単に水利の管理だけでなく、共同作業や冠婚葬祭をおこなう組織でもある。

信仰の島であるバリには、2万をこえる寺院があるが、これらの寺院もスバッと密接に関連しており、田植えや稲刈りの際には、スバッ単位で祭礼を行う。ブラタン湖にあるウルン・ダヌ・ブラタン寺院など水を祀ってある寺院には、スバッの代表がお参りに行き、お供えをしてから聖なる水を持ち帰る。また、水田の中には、稲の神様を祀るお堂がある。

スバッが管理する用水路のほかに、大規模な水田がある地域では、写真にあるような近代的な幹線水路が州の土木局によって管理されており、これはイリガッシと呼ばれている。

衰退が予想される棚田の実情

 バリの棚田は今のところ健在である。観光業以外では産業が少ないバリでは、農業への依存が高い。特に、ここ数年の経済危機で就業先はますます少なくなってきた。あた、機械化が進んでいないバリでは、日本のように農業機械が使えないといった理由で棚田が放棄されるようなことはない。動力耕運機は多少使われているようだが、人力や牛での工作が中心である。バリの農村を自動車で800キロほど走ったが、コンバイン、田植機は見かけなかった。ちなみに刈り取りに関しては、稲穂に聖霊が宿って折るという信仰から、必ず女性が手で刈り取るのだという。

 しかし、観光客に人気がある箱庭的棚田は維持が次第に困難になってきている。深い谷間だと日照も悪い上、重労働である。増加してきた日本人観光客に現地物価の数百倍でみやげ物を売りつけるほうが商売になるのかもしれない。観光地のそばの有名な箱庭棚田で写真をとっていたら、数人のしつこい土産売りに取り囲まれてしまった。これも一種の観光農業かもしれない。

 海岸にある有名なタナ・ロット寺院写真をとっていたら、高校生のグループに話しかけられた。英語の郊外授業で外国人と話をして会話の練習をしているという。将来、農業を継ぐのか、と聞いたら全員が「そんな気はない」と言う。高度成長期以降、日本の農村では過疎化し棚田が消えていったが、そうならなければいいが、と思った。(冬沢 杏)

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