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環境とすまい 2) 雨と都市 -- 冬沢 杏

A環境とすまい                        冬沢 杏

雨と都市

東京砂漠

 「東京砂漠」という歌があるが、あれは嘘ではない。東京都心の年間平均湿度は、1世紀前には78パーセントほどあったのに、現在では64パーセントしかない。

 東京郊外の住宅地では、いまでも年間平均湿度は75パーセントほどあるから、都市中心部の乾燥化が著しいことになる

この大きな原因は、地面がコンクリートに覆われ不透水生となったことだ。

 降った雨が河川に流れ出す率を流出係数という。流出係数は、土壌や地質でも異なるが、だいたい、砂漠で0.1、森林で0.2、畑だと0.4、普通の住宅知で0.5、商業地域では0.6、コンクリートの舗装面では0.9くらいである。

 つまり、コンクリートが殆どの都心では、雨の9割はすぐに下水に流れてしまうということだ。そうすると、約1500ミリの雨が降る東京では、150ミリ分の雨が地面にしみ込むことになるが、地下水になる分もあるので、実際にはこの約半分の80ミリ分だけが地中にとどまり、やがて蒸発散して大気を湿らせる。森林や農地だと、800ミリ分くらいが再び水蒸気として大気に戻るから、これと比べるとわずか一割ほどでしかない。蒸発散が少なくなれば、気化熱が奪われなくなるので気温は高くなる。これは、都市の気温が周辺より高くなるヒートアイランド現象の原因の一つだ。さらに気温が上昇すれば、相対湿度は低くなり、より乾燥することになる。これに輪をかけているのが水面の減少である。かなり早い時期に山の手線内の川の大半は暗渠になってしまったが、その後もなくなり続けた。生活排水が流れ込み、ドブ川として嫌われた中小河川ではあるが、これがなくなったことで乾燥はさらにすすんだ。「東京砂漠」の歌詞の二番では「ビルの谷間に川は流れない」ちあるが「流れない」のではなくて「無くなった」のだ。都市の乾燥化は健康にも影響を与えている。花粉アレルギー患者が増加した理由の一つは、都会まで飛んできたスギ花粉が、空気や地面が乾燥しているためにいつまでも飛んでいるということにある。

都市水害

 都市の不透水化は水害を増やしている。昨年は、福岡や東海地方で大きな都市水害があった。

 中小河川の氾濫のことを内水氾濫というが、最近の水害はほとんどこれだ。

 都市郊外では農地や里山が宅地開発される一方、市内では住宅地がマンション化され、雨は河川や下水改修の結果、高い連続堤防が造られ水位が上昇しても破堤や超堤は少なくなったが、逆に大河川に流れ込む中小河川の水位のほうが低くなったためポンプで汲み上げて放水するようになった。

 雨量がポンプ上の能力を超えると、浸水することになる。最悪の場合にはポンプ場が浸水して機能停止ということもある。

 これに加え、地球温暖化やヒートアイランドの影響で雨の降り方が「熱帯家」している事も原因だ。気温が上昇して大気層がより大きくの水分を蓄えるため、昔よりも激しいスコールのような雨になってきた。都市水害を防止するには、三通りの方法がある。まずは、流出係数をなるべく変えないようにすること、次は、遊水地を作ってそこに一時的に水をためること、最後に河川改修、あるいは下水の増強でより多くの水を流せるようにするという方法である。

 最初の方法は、地下水涵養の点からも最も望ましい。透水性舗装、透水枡などの方法があり、採用は増えてはいるものの、まだまだ少ない。隙間があるアスファルトを使う透水性舗装は高速道路、歩道、駐車場などで使われているが、ホコリや泥による目詰まりをときどき掃除する必要もあり、なかなか普及しない。

 河川改修は、住宅が密集していると市内では河川拡幅が困難な事も多く、道路下の地下河川も少なくない。地下河川や新設の下水幹線は海面よりも低くなる場合が多く、最後はポンプで汲み上げることになる。

 遊水地は、大規模開発地では、設置が義務付けられている。また、中・下流部では、河川のそばに遊水地を作り、通常はグラウンドなどに利用することも多い。ワールドカップのメイン会場である横浜国際総合競技上も鶴見川の遊水地の中にあり、大雨の時には駐車場などに水を貯められるようになっている。

雨水利用

我が家では、雨水利用を試みている。数年前に同じ町内で住み替えることになったとき、雨水をタンクに貯めておいて、雑用水に使えば、洪水防止と都市砂漠化防止に役立つのではないかと思ったからだ。我が家は鶴見川の流域にある。国土交通省によれば、鶴見川は「その源を東京都町田市に発し、多摩丘陵を東流し、横浜市鶴見区の工業地帯を湾曲して流下し東京湾に注ぐ、全国河川の中でも典型的な都市河川である。

 昭和30年代の市街化率は10数%程で、流域人工も20万人程度であったが、昭和40年以降急速に都市化がすすみ、現在では約85%が市街化され、流域人口も約184万人を数えるほどの過密な地域となっている」とある。ここしばらくは、水害は起きていないが、以前よく水害を起こしていた川だ。ちなみに、一級河川では、東日本で一番汚い川である。

 最初はトイレに使おうと考えた。日本では平均的な4人家族の世帯では、水道水を一人あたり一日220リットルほど使うという。我が家での水道使用量は月に25立方メートルくらいなので、きわめて平均的である。このうち、トイレに使う量はこの3分の1くらいだ。4人家族だと、一日240リットルくらいとなる。トイレの水を雨水でまかなおうとしたら、どのくらいのタンクが必要なのか計算してみることにした。雨は毎日、コンスタントに降るわけではない。東京の雨量は1400ミリ程で、梅雨時と9〜10月に降水が多く冬は少ない。ちなみに三重県の尾鷲は年間で4000ミリの雨が降るのに対し、網走では800ミリほどで4倍の開きがある。 

 東京では、トイレに毎日240リットルを使うとして、その4分の3を雨水でまかなう場合、6立方メートルのタンクが必要である。ここで困ってしまった。タンクそのものと中の水を合わせると重量が65トンになる。これでは、木造建物の屋根に載せるのは構造的に無理だ。床下に置くという方法もあるが、便器の水タンクより貯水タンクが低いと、ポンプで汲み上げることになり面白くない。さらに金がかかるということも面白くない。コンクリートでタンクを作り、ポンプを設置し、トイレに雨水用の配管を付け加えると100万近くかかるという計算になった。ちょっと我慢して雨水でまかなう率を3分の2に下げても、3立方メートルは必要だ。これで一年に節約できる水道料金はたった1万4千円なのだから、元をまず取れない。もっと良くないことは、ライフサイクル分析(LCA)、つまりタンクのコンクリートの製造や、ポンプの電力に使う石油エネルギー、あるいは最終的にタンクを壊して廃棄物にするエネルギーや、これに伴う環境破壊まで含めて考えると、結果として環境にマイナスになってしまうことだ。

 こんなわけで最初の意思はくじけてしまった。そこで、計画を縮小し、庭への散水と洗車程度にすることにした。1回の散水に100リットルの水を使うとすると、700リットルのタンクがあれば、年間を通じて80%を雨水でまかなえる。このくらいの大きさならば、重量的にも何とかなりそうだし、市販のプラスチックタンクを使えそうだ。しかし、規模が小さいだけに節約できる水道代も少なく、年間2000円ほどでしかない。実際には、運良く「廃棄物」のプラスチックが手に入ったので、安くしかも低い環境負荷で雨水利用システムを作ることができた。雨水利用は、東京都の墨田区など、いくつかの自治体で熱心に取り組まれている。雨水利用に補助金を出しているケースもあるので、挑戦してみると面白いだろう。

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