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BOOK ● 書評● 『ウェアラブルへの挑戦』 板生 清◆著 工業調査会/2001年1月/2100円+税
ウェラブルな情報機器といえば、昔の日本で、懐に入ったり、腰にぶら下げたりできる小さな携帯用そろばん(計算)や、矢立て(筆記用具だが、懐紙に書き留めるのだから記憶装置ともいえる)などがあったが、完成された形態といえるものは、腕にはめる形の腕時計であろう。 時刻情報の日時計や水時計、時間情報の香時計、線香時計などから、機械時計、ゼンマイによる駆動装置や振り子の等速性を利用した調速装置、さらにはテンプなどによって携帯可能な大きさの海中時計から、手首に留める腕時計へと進化していった。この、手首に留めるウレスレット型は、大変利用しやすく、ウェアラブル情報機器のひとつの典型的な形態といえよう。腕時計はさらに水晶振動子利用や、低電圧作用のLSI、液晶表示、電池の高性能化、ステップモーター、小型歯車伝導装置などによって究極に近い小型化が追求されるとともに、単なる時間情報だけでなく、血圧測定、脈拍測定、カロリー計算など健康指向機能、あるいは電話番号、FMポケベル受信機能を持つビジネス指向機能など、いろいろな機能性を組み込んだマルチメディア情報端末装置となった。 このような時計の進化を見てもわかるように、諸技術の進化による情報装置のマイクロ化によって、計算、記憶、通信、映像撮影などの機能を持つ情報装置が、次々にウェラブルサイズとなると、今まで利用できなかった情報が即時に利用可能となるようになった。たとえば、情報の受け手としての装置から、情報の発信源としての装置として、健康管理、物流管理、自然環境のモニタリング、野生生物の研究などのネイチャーインタフェイスなどなど、多くの面での開発が行われ、期待されるようになってきた。 さらには、人間の感覚情報器を補完するバイオネットシステムへの展開も期待されている。ウェアラブルは身体外部に装着する装置であるが、さらに一歩進めて、体内に埋め込んで情報を提供し、あるいは身体に情報、指令を提供する装置へと進化しつつある。心臓のペースメーカーは既に多くの人の体内で活動しているが、さらにインストリンなどのホルモン分泌システムの自動化なども近いうちに実現するだろう。また、欠損した情報機能、たとえば視力を欠く人のための小型テレビの情報を後頭葉に埋め込まれた電極に送って刺激し、欠けている視力情報を補完する。あるいは、切断された手足の切断面から神経伝達微電流をとりだし、その指令に従って動く義手や義足の開発も進められている。また、海洋や河川などの水質変化、地磁気や地番の変化やずれ、大気汚染に対する情報など自然環境の情報、生体情報のモニタリングによる快適空間の実現、さらにはインターネットとモバイル、ウェアラブル端末、センサ制御機器を組み合わせた個々の建築物や地下敷設設備の情報を基にした都市の管理などのGISサービス、農業、工業などの生産環境、交通、流通などの管理など、多くの情報を入手し、管理する新しい情報産業の開発段階に来ている。 このようにウェアラブル情報機器は、単に携帯可能という段階を超えて、自然環境のモニタリングや地盤のずれ、地磁気の変化などへの応対や、人体内への埋め込み、野生動物への装着など超小型化へ発展しつつあるが、この前途の大きな、しかもきわめて多方面に影響を及ぼす情報端末機器の歴史と現況と関連技術、さらには将来にわたる紹介を、マイクロ情報端末の開発現場の経験を持つ筆者は要にして簡潔にまとめあげている。ある意味では、あらゆる方面に深い関連のあるウェアラブル情報端末機器であるだけに、興味を持たれる方々も多いだろうが、その期待に十分答えられる内容となっている。
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