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NIクラブ エッセイ 磁器を作った錬金術師 -- 山内 恒子

ESSAY

磁気を作った錬金術師

山内 恒子

 ヨーロッパに初めて白磁気を持ち込んだのは、『東方見聞録』で有名なマルコ・ポーロであると言われている。彼は、13世紀末のベネチア商人で、中国から小さな白磁の壷を持ち帰った。その白い地肌や表面の滑らかさが、ポルチェラ(子安貝)に似ていることから、磁器はポーセリンと総称されるようになった。繊細な美しさを持つ磁気は、ヨーロッパの王侯や有力貴族の間で流行った中国趣味(シノワズリ)を反映して東洋からの輸入の主力商品となった。15世紀から16世紀前半には、ポルトガルが中国商人を通して磁器を取り寄せていた。その後、オランダが東インド会社の極東中国磁器貿易を始めた17世紀のヨーロッパでは、東洋から運ばれてくるこれらの磁器は、熱狂的な憧れの的となった。

 白磁器が発明されたのは、中国で宋の時代であったと言われている。磁器のことをチャイナと呼ぶ所以である。白磁器の焼成に欠かせないカオリンと呼ばれる磁土は、中国の磁器生産の最大の窯場として知られる江西省景徳鎮付近の高陵(カオリン)山の辺りで採集されたことから、以来そう呼ばれている。

 日本の有田にこの技術を伝えたのは、挑戦の陶工だった。豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に、佐賀鍋島藩の道案内をした李三平が、有田の泉山に陶石を発見した事に始まるというのが定説である。有田の陶石たちは、磁器製造法の秘密の流出を防ぐため、囲いの中で仕事をしたと伝えられる。中国の明朝から清朝への政変の影響で景徳鎮での生産が止まり、オランダ東インド会社は一点の磁器も買い付けることができなくなったため、その供給源を有田に見出した。江戸時代の慶安4年(1615年)から、貿易品としての古伊万里や柿右衛門様式の磁器は、VOC(東インド会社の頭文字)のマークを付けてヨーロッパへ運ばれた。これらの磁器は、色絵付けであったため、景徳鎮の染付け一辺倒だったそれまでの作品に比べ、さぞかし新鮮だったに違いない。

 ヨーロッパの冬は暗くて長い。ザクセン候フリードリッヒ・アウグストU世の宮廷で、東洋から輸入された磁器はどんなにか輝いていただろう。彼は、莫大な財産を投じ、富と権威の象徴としてこれらの磁器を宮廷内に飾り立てた。また一方で、錬金術師ベドガーと、家臣であり科学者、経済学者でもあったチルンハウゼンに白磁器製造法の開発を命じた。これに成功すれば、莫大な利益を得ることが約束されるからだ。カオリンは、その正式名称を珪酸アルミニウム水和物といい、粘土鉱物の一種で、石英を中心に粘土と長石が混ざっている。粘土があるので成形ができ、アルミニウムが含まれているのでその形を保つ事ができる。叩くとチンチンと音がし、割れたときもガラスと同じようなので 、ガラス質でもある。しかし、普通のガラスと違って高い焼成温度の耐えることができる。白くて透明感があり滑らかな表面を創り出すためには、1300〜1400℃の耐熱温度が必要である。ベドガーたたいの苦心はこの点にあった。ベドガーたちは、ケーニヒスタインの古城内に特別の工房を設け、白磁器焼成の鍵はカオリンにあることに着目し、王命によってザクセン各地の土を取り寄せて実験を繰り返した。そして、ドレスデンから南西90Kmの所にあるエルツ山脈のアウエに産する白磁土を採用し、1709年、ついにヨーロッパで初めて、真性の硬質白磁器の焼成に成功したのである。ヨーロッパの磁器の歴史は、アウグストU世の勅令でマイセン王立磁器製作所が建設されたことに始まる。そして、絵付師を迎えて本格的に磁器の生産が開始された。以来、その技術秘法の流出によって、各地に起こった窯場は発展と衰退を繰り返した。産業革命以後は、転写による大量生産も始まった。20世紀当初には、19世紀生まれのヨーロッパ陶工達が新天地アメリカへ渡った。オーリック、ビショップ、レイコフらの陶工は、家庭の夫人たちにも趣味のチャイナペインティングを広め、アメリカンチャイナペインティングの祖になった。現在、白磁器は、日本はもとより、中国、台湾、ブラジル、ヨーロッパ各地から、メールオーダーで取り寄せることができる。同じ白磁器でも、生産地により微妙に違う風合いが面白い。そして、中国で生まれた磁器製造の技術が、800年に近い年月をかけて、朝鮮半島、日本の有田、錬金技術が活躍した北ヨーロッパ下と伝わり、アメリカを経て、チャイナペインティングの素地の形で自分の手元にあることの不思議を思わずにはいられない。

山内恒子氏の作品は「NIクラブ」のとびらに掲載されています。

お知らせ

本誌NIクラブで「チャイナペインティングの世界」を執筆している山内恒子氏が、創刊を記念して、ネイチャーインタフェイス/オリジナルグッズをご希望の方に制作いたします。自然を題材にして白磁器に上絵付けされた作品は、金文字で短いメッセージを入れる事もできます。お土産やプレゼントにも最適です。価格は小皿が1900円、小箱が2200円で、総量は別となります。お申し込み、お問い合わせは、http://www.natureinterface.co.jpへ、商品の発送は、ご注文を受けてから3週間以内とします。

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