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[コラム] 新領域創成科学研究科の目指す学融合とNPO活動 -- 似田貝 香門

〈コラム〉

新領域創成科学研究科の目指す学融合とNPO活動

―ネイチャーインタフェイスの役割―

似田貝香門(東京大学教授)

 大学の使命は、新たな発展を遂げている学問を受け入れ、推し進め、次世代に継続していくべき学問の研究体系を創るということである。東京大学では、本郷キャンパスにおいて伝統的なディシプリン志向の研究教育、駒場キャンパスは異なる学問領域の関係性の重視、そして柏キャンパス(新領域創成科学研究科)においては学融合という格好で相異なる学問から新しい学問を創設する、という三極構造を展開している。

 新領域創成科学研究科は、成熟レベルの異なる三つの学問分野、すなわち高度の方法論を有する物理学を基礎として形成される基盤科学研究系、分子生物学的な総合生物学、あるいは生命科学を形成しようとする先端生命科学研究系、そして明確なディシプリンはまだ存在しないものの環境問題の解明を目指す環境学系が同時に同じキャンパスに存在することにより学融合を図ることを目的としている。

 この学融合を、私はサラダドレッシングに例えて説明している。放っておくと別々のコアに分離する学問が、ある環境を設定したときに瓶を振ると互いに混じり合って別なものになる、というものである。したがって学融合のためには振り続ける仕組みが必要であり、その一つの方法は、多数のプロジェクトを持ち、相異なる分野の人たちが出会って仕事をすることである。また学融合は組織を越えた議論と試行錯誤により達成されるため、組織はネットワーク型で柔らかいことが必要である。環境学は社会で起きている現実の問題を対象とする。その対処には、現場を見て、異なるものから共通項を引き出し、解決法を考えることが必要である。その意味において環境学は学融合の手法と類似している。

 異なる分野の人が接近して問題を解決する手法の一つにNPO(非営利活動法人)がある。環境に関連するものでは自然保護や自然観察にもとづいて活動する環境NPOが多く存在するが、技術をベースにしたNPOは珍しい。しかし、本NPO(ウェアラブル環境情報ネット推進機構:WIN)の板生理事長からウェアラブルとネイチャーインタフェイスという二つのキーワードの説明を受け、新たな視点が存在することに気が付いた。物言わぬ自然に対してよりも言語活動をする知の世界こそが大切だ、それが近代の知だ、とヘーゲルは言った。しかし、そうではないという風に我々は考え直さなければならない。それがネイチャーインタフェイスというものだと私は解釈している。

 私が本NPOに期待することの一つは、技術とともに生活者の視点を持つ、ということである。これは自然と人工物の間に人間が入る場合に重要な事柄である。自然に対するNPOと福祉に対するNPOは多く存在するが、本NPOはその中間的なところを目指すものであろう。NPOは放っておくと官僚組織になる。NPOは自由に参加できる柔らかい組織である必要があり、学融合や環境学と同じ状況にある。その意味で、本NPOは新領域創成科学研究科が目指している学融合の一つの表現体であると理解している。本NPOにおいて参加者の間に新しい関係ができ、新しい技術が出現することを期待している。            (2000年8月WIN設立総会の講演から)

5Nature Interface July 2001

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