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モノづくり不思議教室 つなぐ 薄いもの、微小なものを接合する技術 -- デンソー




低温・低圧力での接合を実現する、 水素結合利用の方法は、ウェアラブル機器等の新しい小型システムの実現に大きな力 を与える。

小さなものをつなぐ

 マイクロマシンやウェアラブル機器等は種々の材料からなる多くの微小部品で構成される。サイズの大きな部品は、コネクタやボルト、ネジ等を用いることで、他の部品や筐体に結合するが、微小部品の場合、結合のための機構を持つことができないので接合技術が一般に使われる。微小部品の接合技術は、接着剤やはんだ等の中間剤を用いた間接接合と、中間剤を使用しない圧接法や溶接法等による直接接合とに分類できる。今日、微小部品の代表とも言えるICや抵抗、コンデンサといった電子部品には間接接合が用いられているが、間接接合の場合、部品サイズがミリメートルオーダー以下になってきたり、接合面に機械的な作用が関係してくると、組み上げ後の接着層となる中間剤の厚みによる寸法精度劣化が大きな問題となる。また、圧接法や溶接法等の高温あるいは高加圧力を必要とする従来の直接接合技術は部品に与えるダメージを考えると適用できる材料や形状は非常に限られたものになる。このような背景から、微小部品に最適な接合方法としては、可能な限り低温で低い加圧力で接合可能で、様々な材料に適用可能な技術が求められる。そこで、当社では比較的低温・低加圧力で異種材料が直接接合可能な方法として水素結合を利用した接合方法を開発した。

強度のある水素結合

 通常、原子同士は、共有結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス結合のいずれかで結びついている。これらのうち水素結合はOH(水酸)基間の結合によるものであるが、これは結合原子間の結合距離のフレキシビリティが大きいため、結晶構造が異なる異種材料間の接合に最も適している。また、結合強度もファンデルワールス結合の2〜3倍あり、十分な強度が得られると考えた。この結合方法の実現には、いかに様々な材料表面に水素結合の結合手となるOH基を高密度に化学吸着させるかがキーとなる。OH基は材料の酸化膜表面に吸着することが広く知られている。そこで、材料が酸化されやすいものは、酸化性溶液等に浸せば容易に表面にOH基を吸着させることができる。しかし、材料の腐食性が高く酸化性溶液に浸すことができない場合や、逆に表面が酸化されにくいものに関しても、表面に効率よくOH基を吸着させる技術が求められる。当社では図1に示すような装置を開発し、ドライプロセスで、材料表面にOH基を吸着させることに成功した。この装置を用い、接合したい材料表面に水をプラズマでイオン化した水分子イオン(H2O+、OH+、O+等から構成される)のビームを照射する。すると材料の表面に薄い酸化層ができるとともに、そこにOH(水酸)基が吸着する。そういった材料同士を大気中で重ね合わせて、30MPa程度の圧力をかけながら材料の表面同士を密着させ、250℃以上の加熱処理を行うと、界面の余分な水分子が除かれて、界面の酸素原子とOH基間に強固な水素結合(O-H…O)が形成され、その力によって材料同士が強固に接合されるというものである。図2は水素結合の過程の模式図。また図3はこの方法によって接合したアルミニウム(Al)とシリコン(Si)の接合界面の断面TEM(透過型電子顕微鏡)写真である。原子レベルで中間剤なしに接合されていることがわかる。接合強度は数10MPa程度で、通常のはんだ並の強度が得られている。この接合方法は原理的にはOH基が付与でき、表面が鏡面並(平均表面粗度が数nm以下)に平坦であれば、どのような材料でも適用可能であるが、現在までに、Al、Si、Cu、PZT、ステンレス等の接合が確認されている。

小型システムの未来への寄与

 この技術で接合された部品は、寸法精度が高いだけではなく、接合界面において熱や力の伝達が、間接接合に比べて良好であるという効果もある。こうした効果を利用するため、マイクロピエゾアクチュエータと冷却フィンの接合や、圧電バイモルフアクチュエータの圧電体と支持基板との接合、超音波センサの超音波振動子と音響レンズとの接合等への応用が試され、従来の接着剤を用いた接合方法に比べ、放熱特性の向上、アクチュエータの変位向上、超音波センサの感度の向上といった効果が確認されている。

 また、この接合技術は、基本的には水素結合を介して物質同士を強固に結合させる技術であるため、例えば薄膜の密着性向上にも応用が可能である。薄膜を被覆したい材料の表面に水分子イオンを照射し、その上に薄膜を形成することで、従来では被覆が困難であった材料同士も密着させることが可能となる。例えばテフロン材料にAl薄膜を被覆したい場合、通常、テフロン表面は撥水性が高く、蒸着法等でAl膜を堆積させても、すぐに剥がれてしまった。しかし、水分子イオン照射されたテフロン表面は親水性を持ち、堆積させたAl膜も強固に密着させることができた。

 今後、この接合技術が、従来の接合技術が適応できないような微小部品の接合に展開され、ウェアラブル機器等の新しい小型システムの実現に寄与することを期待している。

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つなぐ

薄いもの、極小なものを接合する技術

株式会社デンソー

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13 Nature Interface July 2001

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