NATUREINTERFACE.COM
ネイチャーインタフェイス株式会社 info@natureinterface.co.jp TEL:03-5222-3583
ネイチャーインタフェイス > この号 No.03 の目次 > P36-40 [English]

ネイチャーインタフェイス・フロンティア -- 板生 清


ネイチャーインタフェイス・システムは、

センサ技術、情報通信技術を利用することで、

自然と人間、そして人工物の調和を

はかることを目的にしている。

自然系

ネイチャー

インタフェイス

宇宙

地球

生物

(脳科学)

Human Being

人間

(バイオ)

ビット技術

(情報)

アトム技術

(エネルギー・マテリアル)

(インタネット)

(マテリアル化学)

ヒューマン

インタフェイス

(コンピュータ)

(機械)

マイクロシステム

(エネルギー)

人工物系

板生 清(東京大学教授・本誌監修)

 ネイチャーインタフェイスの基本概念からスタートし、そのシステム研究の具体的目標&応用技術と進んできた基本レポート。第三回を迎えた今回のテーマはネイチャーインタフェイサとしての「ウェアラブル情報機器」。エレクトロニクス、半導体、マイクロメカトロニクス、情報処理、マイクロ実装など、さまざまな最先端領域の融合によって支えられる超ハイテク技術は、自然を呼吸する極めてヒューマンなものであることを紹介したい。

第一章▲生体情報センシングによる快適空間の実現

 21世紀初頭、人々は人工的に作られた環境のなかで多くの時間を過ごしている。オフィスビルや生産現場、ホテル、レストランはもとより、基本的な生活の場である住居でも、各種設備の持つ高度な機能をフルに引き出す設計がなされて、極めて快適な環境が整えられている。しかし、人間が求める快適への欲求は際限がない。例えば、快適の基準(人工環境)がある一定の法則(絶対多数の絶対快適という基準)でのみコントロールされるなら、やがては各自に固有であるはずの「快適の許容範囲」を越えて、冷房病やのぼせなどさまざまな弊害を訴える人が出てくるだろう。それは、快適さを享受するのではなく、置かれた環境に身体を慣らそうとして起こる数々の弊害という主客の転倒である。しかし、身体の状態を常にセンシングしながら人工環境をコントロールすることが可能になれば、各自に合ったパーソナルな快適を追求することができるようになる。そして、このことこそが今回のメインテーマである「ウェアラブル生体環境情報(身体に装着する情報機器による生体環境情報)」の極めて基本的な考えとなっているのである。

 快適な空間を実現するためには居住環境の客観的な評価が必要であり、建築分野では、従来から居住後評価(POE:Post Occupancy Evaluation )の概念が用いられている。このPOEの定義は流動的ではあるが「計画された居住環境の居住者(個人・集団・組織)に対する動的な効果(機能的・心理的)の検証」と表記されている。

 私たちを取り巻く人工環境を物理的に分類すると、音・光・熱・空気・空間という五つの環境要素で構成されている。これを各個人のパーソナルな環境要素に置き換えると、聴覚・視覚・温冷感覚・嗅覚・触覚などの感覚器官に対応づけられる。そこで「快適さを計り、評価する」ことを目的とした室内環境評価法「POEM-O」が開発されている。これは、先に述べた五つの要素について、測定とアンケートによって入手したデータを五段階で評価し、表示することができる、わが国で整備されたはじめての総合的なPOEの手法といえるものである。

 しかし、この方法をスタンダードなものにするためには、居住空間の状況について従来の機械的な定点測定ではなく、そこで活動する人間の実際の周辺状況を測定することが必要になる。そのためには機械的定点測定とともに、そこで活動する人間にウェアラブル情報機器を身につけてもらって、局所的な環境の情報検出をすることが必要である。そのためには、室内のどこにいるかという位置情報センサが重要となり、さらに五つの要素に関するセンサ情報をとり出すウェアラブルデバイスが必要になってくる。

ウェアラブル快適計の実現にむけて

 複雑な話をより理解しやすくするために、話を自動車のような狭い空間における快適環境に置き換えてみよう。ここでは以下の 1、2、3、の環境情報と4、5の生体情報を同時計測することを前提としている。

1、ウェアラブル温熱環境測定システム

  体温:測定部位、測定対象(皮膚表面温度測定または他の方法で測定)

  温湿計:体温などの影響を受けずに運転者などの周辺温度測定(断熱方法など)

  日射量:部位、測定方法自体(太陽電池などの活用など)

2、ウェアラブル光環境測定システム

  輝度:視線方向の輝度の測定方法(視線トラッキングシステムとの連携)

3、その他のウェアラブル環境システム

  音環境:ノイズ分離、空気環境:二酸化炭素濃度などの測定

4、心拍測定システム

  シートベルト型:着衣上からの心拍振動把握(測定位置など)、自動車の振動などによるノイズの除去

  ハンドル型:把持状態が変化する中での安定した心拍把握、短時間計測(同じ位置を常に把持していないため)

5、精神性発汗測定システム

  ハンドルタイプ:把持状態が変化する中での安定した心拍把握、短時間計測

 すなわち図1のような計測と人工環境をコントロールするアクティブな手段の必要性である。そして、これをチャート化すると図2のようなイメージが浮かび上がってくる。

 筆者の研究室では、ウェアラブル生体環境情報センシングユニットWISH2 を開発している。すでに三号機を数えるこのユニットの仕様は、アナログ入力端子を八個持ち、三軸加速度センサとマイクロドライブ記憶デバイスの接続が可能なWindowsCE OS環境下のワイヤレスデータロガーである。これを用いることにより、先の五つの人工環境要素の測定と生体情報の測定を同時に行うことができるようになり、ウェアラブル快適計の実現への第一歩を踏み出すことができる。

第二章▲N次元環境情報マップの作成

 新しい技術の開発が、新しいサービスを生み出し、やがて新しい産業へと成長していく。最近では、地図の上に各種の統計データを組み入れて、パソコンで処理する地図情報システム(GIS:Geographic Information System)の利用がその応用範囲も含めて広がりを見せている。インターネットとモバイル、ウェアラブル端末およびセンサ制御機器と組み合わせた新たなサービスとしての可能性である。このGISは、地表の平面的な情報だけではなく地下や地上の位置、領域にまでおよぶ三次元の空間の情報を提供するものである。三次元データとして地上構築物の高さ情報や大規模なビルのフロア情報などが容易に扱えるようになるので、立体的な都市計画や防災計画、携帯・PHSなどの形態エリア管理や都市の無線LAN設計にも応用できることに期待が寄せられている。

 わが国におけるGIS普及のひとつの要因となったものは、阪神・淡路大震災であった。神戸市の五〇万棟を越える建築物の被害度データをGISで処理できるようにして、復旧状況を地図上に逐次表示することにより回復が一目でわかるようになったのだ。

 このような行政の動きに誘発されて、顧客データを地図と属性データの両方で管理するというネットワークからのGISの応用が著しくなっている。また航空測量などがインターネットで簡易に利用できるシステムや、モバイル端末と組み合わせた位置情報サービスなども出現している。このように地図情報とそれに付属する情報をパソコンやモバイル端末から自由に検索できることで新しいサービスが次々と出現している。

 このようなサービス面の多様化と並行するように、制御機器メーカーによって複数の現場での計測データの収集・分析を容易にするソフトが開発され、サーバー機能を持ったパソコンでの小規模なシステムの構築が可能になってきた。センサなどでサーバー用パソコンに計測データを取り込むと、インターネット経由で遠隔地のパソコン上での閲覧やデータ加工などが容易にできるようになったのだ。これにより監視カメラで得た画像、騒音、圧力、二酸化炭素濃度などのセンサ情報を即座に地図情報の上に重ねて記録することが可能になった。

 以上のように、GISという二〜三次元の地図情報センサによって計測したその地点での属性情報を、さらに1〜N個加えると図3の概念図に示すようにN次元環境情報マップが得られることになる。各種情報センサによるネイチャーインタフェイサが、これらのマップを自動生成するまでにはそれほどの時間は必要ないと思われる。同じように、図4に示すような、動物からの情報およびセンサ情報からGISへのN次元情報マップが作られる日が遠からずくるかもしれない。

 そうした意味からもネイチャーインタフェイサ、さらに的を絞ればウェアラブル情報機器はN次元環境情報マップ(筆者の造語)にとって不可欠なマイクロ情報端末となるだろう。

第三章▲生き物モードの情報端末をめざして

 服や靴の中、草の葉や木の幹のそば、あるいは小鳥や小動物などにも、負担を感じさせずに埋め込まれ装着される小型で軽量な端末がウェアラブル情報機器の究極のネイチャーインタフェイサである。

 このような形態で、自らエネルギー源を持ち、通信機能を持ち、計算能力と記憶能力、さらにセンサ機能を持つ一〇g以下の端末の出現にはまだまだ時間がかかるだろう。なぜなら、カラスの挙動を調べるセンサの例(図5)をとってみても、「小型軽量化」と「測定の長期化(バッテリー寿命の増大)」という相反する条件をクリアできないというのが現状であるからだ。しかし、落胆することはない。こうした究極の姿に向けてのマイクロ化技術は着々と進化し、いずれそれを実現させることは確実であろう。

 ネイチャーインタフェイサとしてのウェアラブル情報機器を考えるとき、その用途が自然を相手にする場合、センサ情報発信の間隔は比較的長くてもそれほどの問題は生じないと思われる。なぜなら自然の変化は一年を周期として、かなりゆったりと流れているからだ。場合によっては、動物と同じようにエネルギーが十分に満たされたときのみ活動を開始するというマイクロデバイスが意味を持つことになるかもしれない。それは、図6に示す従来型の律儀で几帳面な等時間隔報告のモードに対して、太陽電池などで一定量のエネルギーを蓄えた時だけセンサが働き情報が発信されるので、等間隔ではない生き物モード端末が可能になる。そして、これを画像モニタ機器に応用すれば、図7のように太陽電池がリミットを越したときのみリレーが作動してパソコン、カメラが働き、情報伝達をはじめる。つまり、生き物が食事をとってある程度のエネルギーが蓄積されたときのみ活動をはじめるのとよく似た現象。したがって、これを筆者は「生き物モード」と命名することにする。

 ただし、このような生き物モードの構成をとれば、データベースによって送られてくるデータをあらかじめ推測しておくことが必要になる。それは非線型の現象に対して、シミュレーションによってあらかじめその結果を予測しておく技術がセンター側に要求されるということである。端末とセンターの役割分担は、このように端末のエネルギー消費ミニマムの条件にしたがって決定されるシステムの設計が重要になってくるということである。

 以上のようにウェアラブル情報機器に代表されるネイチャーインタフェイサはエネルギー源を自然環境の中から得て、そのエネルギー消費は必要最小限、なおかつエネルギーレベルが低下すればスリープ状態に入るという「自然を呼吸するデバイス」として、極めて動物に近いモードを持つ端末として進化していくことになるだろう。

Nature Interface July 2001 36

37 Nature Interface July 2001

Nature Interface July 2001 38

39 Nature Interface July 2001

Nature Interface July 2001 40

NATUREINTERFACE.COM
ネイチャーインタフェイス株式会社 info@natureinterface.co.jp TEL:03-5222-3583
-- 当サイトの参照は無料ですが内容はフリーテキストではありません。無断コピー無断転載は違法行為となりますのでご注意ください
-- 無断コピー無断転載するのではなく当サイトをご参照いただくことは歓迎です。リンクなどで当サイトをご紹介いただけると幸いです
HTML by i16 2018/06/24