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●●● 最新ウェアラブル・ツールに隠された技術力 ●●● かつて“服”といえば寒さから身を守るためのものだった。それがファッションとして自分を表現する手段になり、二一世紀は、コンピュータを身につけるための服になる。 現在、情報端末は小型化・軽量化が進み、「ウェアラブルコンピュータ」の出現によって、服とコンピュータが融合し、それによって、ファッション性やデザイン性、快適性といった面も注目されるようになってきた。 人々の生活を豊かにするという視点から、ウェアラブルコンピュータの最先端技術を紹介するとともに、ここでは東京大学および文化女子大学で催されたファッションショーを中心に身に付けるためのファッションを特集する。
ビブリアム/アレキサンドラ/ギラ 宅配電子図書館。デジタルペーパーというデジタルディスプレイが商品化。どこでも本が読める。メディアサットが上空に待機し本も送ってくれる。衛星や高速回線を使い、世界中のあらゆる場所で大量の情報をやり取りできる服。これを使った高密度なデジタル情報の配送サービスが行われ、好きな場所で、好きな情報をパッケージとして受け取れる。
電影中心/ジョー/北京 ストリート系を思わせるファッション。若者が道端に座ってコミュニケーションができるように膝に電話と情報機器端末を付け、肘や膝にもスピーカーが仕組まれて何時でも音楽が楽しめる。マイクロ端末を装着することでストリートで24時間過ごしても飽きない。
カンバンムスメ/マサエ/デジタルハラジュク 歩くデジタル広告塔。ネットショップがリアルスペースでのプレゼンをするためのサンドイッチマンのようなレトロな響きでブームになったストリート広告ガールのドレス。ポップな姿にネットで配信された広告がディスプレイ(服の前後)に表示され、人々の目を釘付けに。同時に帽子に付いたカメラ(画像認識装置)で相手を瞬時に解析し、マーケットリサーチも。手にもったバッグからフライヤーが出てくる。
オムニメディコ/ホワイトジャック/ブタペスト 究極のナノテク医療ペア。ナノテクノロジーやサイボーグテクノロジーを駆使してどんな場所でも最高の医療を施すことができる。最高の医療データベースにリンクしている。
サイバートレック/ヘレナ/バークレー もはや身障者という言葉はなく、完全に個人の肉体や機能を補正してくれる服。全身に付いたカメラが障害物などを認識し知らせる。相手の言葉は音声認識装置が文字にして表示する。体が不自由でも自由に街を歩くことができる。
究極のウェアラブルは 服が情報端末になる
携帯電話やノートパソコンに代表される情報のパーソナル化、モバイル化が一般化した今日、次のパラダイムとして実用化が期待されているのが「ウェアラブルコンピュータ」である。 このウェアラブルコンピュータは、小型・軽量化、省力化の極限を目標に、日々技術開発が進んでいる。近い将来には服や腕時計、アクセサリーのように常に身に付け、いつでもどこでも欲しい情報にアクセスできるようになるだろう。 文字どおり「着用するコンピュータ」の時代になるわけだ。 このように、情報端末がどんどん進化しウェアラブルになれば、それを身に付けるスタイル=新しいファッションも生まれてくる。そこがモバイル・コンピューティングと大きく異なる点だ。モバイルは、使い終われば電源を切り鞄やポケットにしまう。それに対してウェアラブルは、服そのものにコンピュータのチップを埋め込んだり、アクセサリーやメガネのような身に付ける“道具”になり、それ自体がコンピュータとして機能する。ゆえにスイッチは常にオンの状態で、そのままアクセスできるのだ。そこで必然的に、ファッション性の高いデザインや、快適性といった“ソフト”面でもさまざまな試行錯誤が行われている。
ファッションと コンピュータが融合する
去る五月一一日(金)、東京大学駒場キャンパスで、「芸術とコンピュータの融合 ファッションショー&ウェアラブルコンピュータ」 が東京大学工学部システム創成学科によって 開催された。コーディネータは同学科生体情報システムコース板生教授(本誌監修)である。これは、一九九七年に文化服装学院がアメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)と共同で開いたのを皮切りに、毎年最新のウェアラブル・ファッションを発表しているもので、今回はその研究成果の一部が披露された。 ウェアラブルコンピュータとはいうものの、まだまだテクノロジーが優先され、ファッション性が遅れているのが現状だ。その分野のリード役であり総合プロデューサーとして活躍する林泉教授(文化女子大学)は、「コンピュータとファッションの一体化」「機能とデザインのバランス」「街で着こなすための快適性」を備えた真のウェアラブルの実現を提唱している。 今回掲載したものは、MITで披露された以外に、「二〇一〇年にはどんなコンピュータが実現されているだろうか」をコンセプトに、文化服装学院と文化女子大学の学生たちの自由な発想によってデザインされたもの。目を引くのは、コンピュータを小さくするという考えだけでなく、日常の生活環境をより豊かに、快適にするためのファッションという発想だ。ビジネスはもちろん、音楽を奏でる服や、救急医療スーツ、生体のモニタリングが可能な端末の着用など、ライフスタイルの未来が素材やデザインに生かされているのが大きな特徴だ。
文化女子大学の林 泉教授に、ウェアラブル・ファッションの未来についてお話を伺った。
ファッション性と情報機能の両立を目指して
アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)から、ウェアラブルコンピュータのファッションショーのためのデザインを依頼されたのが、一九九七年。当時はまだ、「ウェアラブル」という言葉はほとんど認知されていなかった。 「私もその時には“ウェアラブルコンピュータって何?”というくらい、まったく知らなかったんです。それでいろいろ聞いてみると、これからは情報機器がどんどん小型化して軽くなり身に付ける時代がやってくる。そのためにコンピュータというハードの進歩だけでなく、ファッションというソフト面も考えていくことが必要であるということでした。どんなに素晴らしい機能がついたコンピュータでも、やはりファッショナブルでなければ身につけることはできないですから」 林教授は学生たちとともに、ファッション面からみたコンピュータをテーマにディスカッションを重ね、自由な発想でコンピュータの未来を描いた。アメリカの研究者たちの元に届けられたそのデザインは、新鮮な驚きと称賛で迎えられた。早速、二五点を製作し、高い評価を得たのである。これを契機として毎年、最新の研究成果が発表されている。 「日本では、携帯機器端末はシステムにおける機能の開発が優先している」と話す林教授。しかし、小型・軽量化が実現されれば、よりファッション性に富んだアイデアが必要になる。それが「使う側からの視点を重視したウェアラブルコンピュータ」だ。 「そう、機能美といったらいいかしら。“使いやすさ”とか、“触って楽しい”、とか、“見て面白い”といった感覚を反映しなければ、ウェアラブルコンピュータとはいえないでしょう。携帯電話だってそうでしょう、身に付けるにはやはり小さいだけでなくカッコ良くなくては。もちろん服もただ着ればいいというものではありません。人に優しいということも大切なテーマですね。だから、それぞれのライフスタイルや目的に合ったウェアラブルが必要になります。たとえば医療分野などがそうですね。コンピュータを身に付けていても、患者さんに恐怖感を与えない形や感触のもの、床ずれしない素材などの研究もこれからの課題ではないでしょうか」 林教授がいう“ファッションからみたコンピュータへのアプローチ”は、むしろコンピュータを身に付けるということが夢ではなくなった証拠なのだろう。
林 泉(はやしいずみ)
一九六五年文化服装学院デザイン科卒業と同時に国内外のファッションショーを手がける。七二年より母校の専任講師をつとめ、九二年から文化服装学院ファッション流通専攻科のファッションショーを有名デザイナーの作品を交えて開催(九八年まで計七回)。九七年米国MIT主催「ウェアラブル・コンピュータ国際シンポジウム」に日本代表として参加。九八年朝日新聞社主催「ウェアラブル・コンピュータ2010」総合プロデューサーに。 著書に『ファッション・コーディネート』(日本ヴォ−グ社)、『ファッションコーディネートの世界』『ウェディングハット』(ともに文化出版局)他がある。
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