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セイコーエプソン株式会社半導体事業部による、PFCガスの放出削減 -- セイコーエプソン








未来のためのエプソン・エコ・フレンドリー・フォレスト

インドネシア、カリマンタン島で始まった、森と暮らしの再生のための国際協働

 森林に地球温暖化を進行させる炭酸ガスを蓄える働きのあることはつとに知られているが、なかでも熱帯雨林は、地球上の植物が蓄える炭酸ガスの約半分を貯留するといわれる。しかし先進国の需要による伐採のほか、熱帯地域での人口の急増や貧困層の拡大などの影響で、焼畑による焼失、過剰な放牧、薪炭材のための利用などが増加し、現在、毎年日本の面積の30%を占める熱帯雨林が消失しているといわれている。

 そうした問題が深刻な地域の一つ、インドネシアのカリマンタン島で、現地の政府と人々、日本の植林活動支援団体、そして企業の4者が協働した植林プロジェクトが開始された。その内容は、インドネシア政府が事業計画を立案、セイコーエプソン株式会社が資金相当額を寄付し、現地の人々が植林を行うというもの。その際、日本の民間団体が海外での植林活動を行う際に仲介役をしてきた財団法人国際緑化推進センター(JIFPRO)が、実際の事業の橋渡しをする。昨年12月22日にはジャカルタ市内で、プロジェクトの調印式がおこなわれた。

 プロジェクトの具体的な計画と今後の展開を紹介する。

調印式でのインドネシア政府代表と、セイコーエプソン会長・安川英昭氏(右・当時社長)。

植林作業は、地域住民によって結成された共同体によって行われている。

植林の記念プレートにサインをするセイコーエプソンの橋爪伸夫氏(取締役地球環境室長)。

焼畑で森林が失われた現地の様子。ここに豊かな森が育まれていく。

環境と地域住民の生活の共生をはかる

アグロフォレスト方式

森と村の生活の再生をはかる

 すでに昨年11月より植林が始められている地域は、インドネシアのカリマンタン島、サウスカリマンタン州のBintok Darat Villageだ。州都バンジャルマシンの南東約45kmのこの地は海抜18〜78mの草原地帯。カリマンタン島のこうした高地では、昔から森林を焼いて耕地に変え、数年して地力が衰えると余所に移動し、植生が回復した頃にまた戻ってきて森を焼く、いわゆる焼畑農業が行われてきた。しかし、人口増加や社会構造の変化による貧困の増大の影響で、土地や森林が収奪的に利用されたり、企業などによる大規模な伐採によって、森林が自力で再生できない状態に陥り、その面積を急速に減少させてきている。多くの地域と同様に、ここでも環境問題は、社会問題でもあるのだ。

 そこで今回のプロジェクトでインドネシア政府が提案し採用された植林方式は、 アグロフォレスト方式(Agroforestry System)。この方式は、名称がAgriculture(農業)とForest(森)の合成語であることによって示されているように、農業と共存する森づくりをめざすものだ。

 具体的には、一般の樹木とともに、果樹などの多目的樹木(Multi Purpose Trees=MPTS)の森をつくり、その間に農作物を育てる。Bintok Darat Villageでは、300haの地域に、一般樹木として、マホガニー、スンカイ、カリアンドラなどを、またMPTSとして、パラゴムノキ、ドリアン、ランブタン、ネジレフサマメノキ、パンの木などを約20万本植える予定で、農作物としては、陸稲(おかぼ)、トウモロコシ、ピーナッツを混植する。

 実際の植林は、地域住民で結成された共同体によって担われている。将来この地に出来る共同体の規模は、150〜300家族になる予定だという。

期待される成果と拡がり

 セイコーエプソン地球環境室によると、エプソンがプロジェクトに参加を決めたのは、@企業活動のすべての分野で取り組んでいる地球環境負荷の低減活動の一環として地球温暖化防止に寄与できる、A紙を消費することが宿命のプリンタメーカーとして、森林資源の保全に寄与する必要がある、B海外現地法人の所在する国に対する貢献、C社員の環境活動意識の啓発、といった理由によるという。ちなみに試算によると、この植林活動で吸収される炭素量は年間約2970t-cで、エプソンが1999年に日本国内で排出した炭素量の約3.3%に相当する。

「未来のためのエプソン・エコ・フレンドリー・フォレスト」と名付けられたこの森の植林期間は2003年10月までの3カ年で、毎年100haずつ植林の予定だが、初年度の成果によっては2年目以降の面積を拡大する可能性があるという。エプソンでは、今回の活動を第一次計画と位置づけており、さらに広い範囲に拡大していきたいと話している。

 グローバルな理念と協働による現地の森と人々の暮らしの再生が、どのような実りをもたらすのか、今後の日本の企業、団体の環境保全・支援活動の在り方の可能性の一つとして、期待しつつ見守りたい。

植樹第1号で植えられた苗木(手前)。

セイコーエプソン株式会社半導体事業部による、PFCガスの放出削減

セイコーエプソン富士見事業所全景と社屋正面玄関(写真左)

知られざる温暖化物質PFC

 一九九七年のCOP3(地球温暖化防止京都会議)では、削減すべき温暖化対象ガスとしてCO2, CH4, N2O, HFCs, PFCs, SF6があげられ、その削減目標を、基準年(CO2, CH4, N2Oは九〇年、HFCs,PFCs,SF6は九五年)に対しマイナス5%(日本はマイナス6%)と決定した。

 CO2の温暖化への影響は一般によく知られるところだが、上記のうちHFCs, PFCs, SF6は 、PFC ( Per Fluoro Compounds )ガスと総称される物質で、大気中への排出量は少ないが、温暖化効果はCO2の一万倍、SF6では二万三九〇〇倍といわれ、その大気寿命も1万年と長期間にわたる。

 PFCガスは、半導体や液晶表示体の製造に使用されている。従来安定していて健康にも影響が少ないため大量に使われてきたが、温暖化への影響が明らかになり、現在、半導体業界では放出削減への取り組みが行われている。セイコーエプソン半導体事業部では、新たな解析による最適化をおこなうことで、このPFCガスの使用量を大きく削減することに成功した。

最適化による大きな効果と簡易計測法の確立

 図1は、半導体事業部の九八年のPFC放出量を示している。エプソンでは、二酸化炭素に換算すると26万tのPFCガスを使用しており、これは全社の排出量の約4割にあたり、うち半導体と液晶表示体の製造工程では7割が使用されている。一方会社全体の環境総合施策では、九七年比で二〇〇〇年度末にマイナス20%、二〇一〇年度末にマイナス60%の温暖化ガス削減目標を掲げており(図2)、増産傾向のなかで大幅な削減努力が求められていた。

 半導体事業部では、以下の方針で放出削減に取り組んだ。

@まずPFCガスをCVDクリーニングガスとして使用する際のプロセスを見直し、投入使用量を削減する、

Aその後、最低限の除害装置を導入する。

 以下は、その具体的な取り組みである。

CVDクリーニングガスの最適化による使用量の削減

 PFCガスは、集積回路などの下地の皮膜を溶かして回路を刻み込むエッチングと呼ばれる工程や、皮膜をつくる際に成膜をする容器・チャンバーの中に出来る余分な付着物をクリーニングするために使用されている。半導体部門では、成膜装置で多く使用されるCVDクリーニングガスを減らすことを第一の目標に掲げた。

 ここで取られたのは、従来の方法とは違い、プラズマクリーニングを化学反応として取り扱い、その最適化を探る方法であった(1)。

 そのために基本データの採取や効果の確認のために簡易計測を必要としたが、従来のインテルプロトコルと通称される半導体のPFC放出量の計測メソッドには、計測自体の詳細なノウハウがなく、取り組みは、新たな簡易計測方法を開発することから始まった。今回の取り組みで編み出された計測法は、「エプソンメソッド」(2)として公開されている。

 プラズマクリーニングは、チャンバーと呼ばれる反応室に一定量の反応ガスを供給しながら、同時にチャンバー内を一定真空に保ち、そこに高周波を印可してプラズマを発生させ、反応ガスをプラズマ化させて反応活性にしてクリーニングを進める仕組みである。つまり、クリーニングの機能を化学的にいえば、チャンバー内に付着した余分な酸化膜(SiO2)をFと反応させSiF4やCOとして排気することである。その反応は次のように分類できる(ここで、O2 はプラズマ反応時、重合物の生成を起きにくくするために添加される)。

SiO2 + C2F6 + O2 →

SiF4 欲しい主反応

CO 〃

CF4 欲しくない副反応

COF2 〃

C2F6 未反応

 最適化のポイントとしては、Fに着目し、欲しい主反応であるSiF4を大きく、未反応であるC2F6をより小さくすることで、結果として欲しくない副反応が最小になるようにした。通常は、悪さ加減として副生成反応を小さくする試みが多いが、本来の欲しい反応と未反応にのみ着目したのである。

 実験の際は、一定量の酸化膜を成膜後クリーニングを行うため、図3のようにSiF4は、チャンバー内の酸化膜のクリーニングが進むに連れて減少する。

1 解析

 解析は、FT│IRよる排ガス濃度C2F6から1.5倍のSiF4が生成されるためSiF4の濃度を2/3にし、特性値として行った。単位は体積濃度(ppm)。

 制御因子は、圧力・反応ガス流量・酸素ガス流量・電極間隔・印可パワーをL18直交表に割り付け解析した。

2  解析結果

 解析の結果、効果の大きい項目順と傾向は以下のようになった。

 ・C2F6流量は少ないほうが良い

 ・パワーはかけたほうが良い

 ・電極間隔は広いほうが良い

 ・圧力は最適領域がある

 ・酸素流量は少ないほうが良い

 このように最適化された条件では、従来のメーカー推奨条件に対して、図4のように、C2F6分解率が20〜25%から40〜45%に、SiF4の有効使用率が10〜13%から約30%に改善され、またC2F6の使用量は従来条件の1/3に、放出量は1/4に削減されたのである。

 これらの結果を、社内のプラズマCVD装置にフィードバックをかけた結果、表1のように、ほとんどすべてのCVD装置でクリーニングガス流量を半分以下にすることができた。このことにより、ガスの購入費用は、二〇〇〇年度実績で年間約二億円の削減となったという。

新規工場ではゼロ放出対策を

 以上のようなCVDクリーニングガスの使用量削減の他に、排出量削減のための方策として、設備変更に制約のある既存の工場では、CVDクリーニングC2F6用として、燃焼式除害装置が追加設置された。

 これによって、副生成物であり分解の難しいCF4を95%以上分解でき、また燃料ガスの使用量の少ないタイプのプロパンに酸素を助燃剤とする燃焼除害装置が展開された。

 エッチング装置に使われ、特に温暖化係数の大きなSF6には、水を触媒とした平行平板式のプラズマ除害装置が導入された。また、CF系のガス系には、ICP式のプラズマ除害装置が導入され、コストと性能のバランスが計られた。

 液体PFCについては、絶縁性の問題から純水に変更できないものが高沸点系のものに置き換えられ、蒸散量が抑えられた。一部HFE系溶剤についても一部で適用が開始されている。

 一方、新規工場では、レイアウト上の制約がないことなどから、ダイナミックな構成が可能となった。今年より稼働する酒田のラインでは、装置群ごとに除害装置の種類や構成を最適化することによって、コストダウンとエネルギーに考慮したうえで、基本的に放出量がゼロになるようにはかられた。これらの検証は現在進行中という。

達成された目標

 さて、目標の排出量削減はどのようになっただろうか?

 図5は、九九年度の放出量推移である(PFCの放出量は、JEITAの集計方法に準じ、ボンベへの残として10%を使用量から差し引き、除害装置の付いている場合はその除害分を係数として乗じ、除害装置のない場合はそのまま放出されたとして集計されている)。

 半導体部門の好調に支えられた生産量の増加と、層間膜厚・層間数の増加により、本来なら年間で4倍の伸びを示すはずの放出量増加に対して、最適化による使用量半減と燃焼除害装置の効果が顕著に現れているのが分かる。

 また図6の二〇〇〇年度の放出量推移を見ると、継続的な対策の効果から、4Qでは目標の九七年比でほぼマイナス20%を達成したが、通年では、ほぼベンチマーク並となっている。

 計測技術であるエプソンメソッドに基づいて計測された各装置の分解率を、先の二〇〇〇年度の放出量に加味した二〇〇〇年度の放出量推移が図7である(ベンチマークである九七年度値は、当時の装置構成をベースに同様に算出されている)。これによれば、4Qでは目標の九七年比でほぼマイナス32.4%を達成している。通年でも、マイナス15.7%と若干及ばなかったが、目標の九七年比でほぼマイナス20%を達成することができた。

生産効率と環境パラメータの両立

 エプソンの半導体事業部門では、CVDクリーニングガスの最適化と除害装置を適用することで、温暖化効果ガスの排出を大幅に抑制することができた。今後は、継続的に既存工場への対策を行う予定であり、自社目標である二〇一〇年に九七年比マイナス60%の削減目標に目処がついたと考えている。

 同部門では、ガスの使用の抑制が使用資源の節約と環境負荷の低減を生んだように、生産効率の向上と環境のパラメータを一体のものとして考えていきたいと語っている。

[参考文献]

(1)南百瀬‥化学反応としてのプラズマクリーニングの効率化、第9回品質工学研究発表大会

(2)南百瀬、杉浦‥Equipment Environmental Characterization Guideline (通称インテルプロトコル)を補完するFT-IRを用いたPFCの簡易計測方法

図1  温暖化ガス別放出量(1998)

図2  温暖化ガス削減目標と実削減量予想

図3 改善前の排ガス分析結果

図4  改善後の排ガス分析結果

表1  CVDクリーニングPFC使用量改善

図5 1999年度PFC放出量推移

図6 2000年度PFC放出量推移

図7 2000年度分解率を考慮したPFC放出量推移

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