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ネイチャーインタフェイス > この号 No.04 の目次 > P044-047 [English]

[特別企画] IT導入により本格化する遠隔医療 -- コアネット東北







ITの導入によって

本格化する遠隔医療

コアネット東北グループの

積み上げてきた

遠隔医療の実践

1970年代にさかのぼる遠隔医療の歴史。

しかしそこには医師法という大きな壁があった。

1997年の医師法第ニ十条の改正によって

「遠隔医療は直接診療に法的に抵触するものではない」という通達がなされ

また1999年に電子媒体も紙やフィルムベースと同様に診療記録として認められたこと

さらに手術中の病理診断が保健制度上認められた(2000年)といった

法制度の整備が整いつつある中で最近、地域医療の大きな支援システムとして

遠隔医療が注目を集めている。

今号では、その歴史と現状を見つめながら

東北大学医学部、岩手医科大学、女川町立病院といった医療機関と

コアネット東北グループの行ってきた遠隔医療の具体的な実践例を追いかける。

そして次号では、コアネット東北の推進する地域医療の情報化が地域にとってどのような

サービスを供与するのか、その将来像を報告したい。

女川町病院における

テレカンファレンス風景

地域医療にとって必要不可欠な

遠隔医療

 まず東北地方に特徴的な医療環境について、簡単に述べたい。

 一九九二年の厚生省の調査によると、東京地区が病院一〇〇に対して病理医四〇人。それに比べ、東北地方では病理医一四人となっている。東京都と東北地方という、比較地域の面積的なスケールを考えると、この数の少なさは驚くべきだろう。

 さらに東北地方の中心にある宮城県の場合、病理医は、仙台市とそのベッドタウンである塩釜市、名取市に勤務している。つまりそれ以外の地域に病理医はいないということになる。

 以上が東北地方に特徴的な医療環境の例であるとともに、状況としては地域医療のかかえる現実でもある。

 また医療の高度化という点では、医療が専門分化している現状を考えると、医師は自分の専門分野に専念することで、患者に対する高度な医療サービスをすることができる。その結果、総合的な医療を、病院や大学、医療機関が行おうとしたとき、専門医をそろえる必要が生じる。

 一方、病理医の例を見るまでもなく、各専門医は、人口の集中する都市部に勤務するという傾向をより強めている。地方の中小病院、医療機関、診療所は当然慢性的な専門医不足に悩まされている。

 高齢社会を迎え、この状況はさらに深刻となる。高齢社会の中では、一般的に在宅介護は重要な課題だが、専門医の不足する地方において、患者は病をかかえながら都市部の大学病院や大病院へ通院することを強いられる。ところが高齢化した患者であればあるほど、家庭に医師が訪れる、在宅介護がより理想的になる。

 高齢化が深刻な東北地方にとって遠隔医療は、高度な医療を提供するということとともに、患者の負担を軽減するという意味からも必要不可欠な医療システムなのだ。

女川テレメディシン研究会 

IT革命が遠隔医療に果たす役割は大きい。

 パソコンの普及、インターネット技術の高度化はいうまでもなく、画像処理技術、通信速度の高速化など、その推進役として情報技術は、これまで実験、研究段階にあった遠隔医療を一気に現実化している。

 その一例として、コアネット東北グループがそのインフラ面を支援し、東北大学を中心に進められていたテレメディシンの事例を紹介したい。

 医療技術はここ数年急速に進歩し、CTやMRIといった医療機器はデジタル化され、さらにIT革命の影響もあり、大学病院を中心に大病院の中でLAN等のネットワークが整備されてきた。

 と同時に前述のごとく、病理をはじめとする、放射線、脳神経外科といった高度な専門性が必要な専門医は、都市部以外に配属されることはまれな環境下にある。東北地方においては、東北大学医学部をはじめとする中核医療機関でしか専門性の高い医療の提供は受けられないというのが現状だ。

 このように都市と地方の医療サービスの地域間格差は、専門分化と医療機器のデジタル化を含む医療技術の高度化によって広がっている。

 この医療格差を是正する有効な手段として、マルチメディア、ITを駆使した広域に渡る遠隔医療の可能性が具体的に見えてきた。その例が、東北大学、女川町立病院の病院間の遠隔医療からスタートし、将来、東北地区全体を想定した遠隔医療の実践計画。この計画は、一九九六年、女川テレメディシン研究会の発足から始まる。

 女川テレメディシン研究会は、女川町病院の設立を前に発足。つまり女川町立病院と東北大学医学部附属病院との間の遠隔医療の実践を前提として成立した。そのメンバーには、東北大学医学部附属病院、女川町立病院関係者はもちろん、インフラ整備にとって必要不可欠な企業として、コアネット東北グループなどが参画している。当時の話を(株)コアネット東北経営企画ゼネラルマネージャーである庄司一夫氏はこう語る。

「女川テレメディシン研究会では、遠隔医療を、非常に早い時期から実績に結びつけてきたと思います。この研究会の前身として『仙台テレパソロジー研究会』という組織があるんですが、一九九二年に創設され、NHK仙台放送局の協力を得ながら、ハイビジョンによる病理診断の可能性を追及してきました。その後、病理に加え、放射線科、脳外科、皮膚科の画像を光ファイバーで伝送し、診断することを主目的に、『女川テレメディシン研究会』が立ちあがったわけです。我々としては、この二つの研究会を通して遠隔医療の可能性を追いかけてきたわけですが、当初から地域に必要なシステムの支援策、つまり地域振興策として東北大学医学部、女川町などと共同作業を続けてきたんです」

 女川町は、石巻市の北東部に位置し、仙台市からは約六五km、石巻市からは約一五kmにある。町内には、離島と、女川湾を囲む半島が 二つある、もともとは遠洋漁業の盛んな水産の町。現在は、水産業と原子力発電所が主な町の財源だ。その人口は一万二〇〇〇人ほど。女川町立病院は、一九九七年、町内唯一の総合病院として開院、病床数は一〇〇、内科、外科、整形外科、小児科、眼科、耳鼻科、皮膚科を標榜し、勤務医五名を擁する。内科と外科以外は、東北大学から週数回、応援医師がやってくる。しかし病理、放射線科、脳外科の専門医は不在で、救急病院の指定は受けているものの、高次の救急医療や専門的な診断を要する治療は、石巻市などの病院を紹介するという形をとっている。

 このように女川町立病院は、新しい病院であり、医療機器の設備もそれなりに揃っているとはいうものの、地域病院の抱える問題点である専門医不足を大きな課題としていた。

 その第一が、病理医がいないためガンの手術に際して、術中迅速病理診断が不可能なこと。第二が放射線診断。放射線診断は、CT、MRIを使って消化器や頭部の異常を診断するものであるが、消化器、頭部の診断では、その専門医であっても判断に迷うことがあり、放射線の専門医がいないため、CT、MRIを持っていても検査なしに中核病院に紹介するということも実際にあったようだ。第三が脳外科医の不在による、脳卒中や頭部外傷など緊急の治療を要する患者の搬送に時間がかかり、救急医療が手遅れになる点だ。

 他にも医師も含めた医療スタッフの研修に関して、勉強会や研究会など都市部に集中している場合が多く、日常の勤務をしながら参加することが困難で、その機会が失われている点などがあげられていた。

ITを利用した遠隔医療の実践

 先の庄司さんは続けて語る。

「そこで回線速度384kの光ファイバー専用線を使用して、この二病院間を結び、術中迅速病理診断、遠隔放射線診断、遠隔放射線診断を応用した遠隔脳外科診断を実際に行い、遠隔皮膚科診断の可能性を検討してきました。(図1・2) 

 例えば術中迅速病理診断ですが、従来ですと女川町立病院で手術をし、病理医がいないため、患者さんの病理標本を作り、それを宅急便や郵送で東北大学に送っていたんです。それでもし悪性だということになれば、患者さんの一回目の術後の体力回復具合をみて、再手術を行う、というような手術フローがなされていたわけです。

 術中迅速遠隔病理診断の場合は、第一回目の手術中に標本を作り、ネットワークを介して東北大学に伝送する。東北大学の病理科では、ドクターがスタンバイしていて、送られた画像を診断し、良性ならば手術を終了する、また悪性であれば、つまりガンならば、『臓器を摘出してください』という病理診断の結果をその場で知らせる。患者さんのお腹を開いたままの状態で、迅速に手術を再開することができるわけです。結果、患者さんの精神的負担、肉体的なストレスを軽減できる、つまり二回手術をしなくてすみますから。

 脳外科診断であれば、脳に異常が発見され、女川町立病院に搬送されますね。病院では、CTとかMRIという機器で放射線撮影をする。今までですと、その診断をつけて病院の手配をする。または救急車で脳外科のオペのできる病院へ運ぶ。場合によってはその搬送先の病院でCTをとりなおすこともあるわけです。このように手術を行う、行わないの判断も含め、非常に時間がかかっていました。しかし放射線撮影の画像を東北大学に送り、その場で診断してもらえれば、温存療法でいいのか、緊急オペが必要なのか、という判断がすぐにつき、オペということになれば、病院を指定して患者さんを搬送できます。

 同時に搬送の最中に、オペを実施する病院とネットワークを利用しあらかじめ画像を送っておく。手術をする病院では、患者さんが到着するまでに、事前に手術の方針、治療法、手術室の準備などができるので、救急車が到着した瞬間にオペができる。脳外科は一分とか一秒が生死を決める場合が多い。緊急時に一時間とか二時間といった時間の短縮ができたという実績が残っています」

 図3に示されている、女川テレメディシン研究会の実績をまとめてみよう。

 まず遠隔病理(術中迅速病理診断)についてだが、これは病理組織標本の顕微鏡画像を病理医のいる中核病院に伝送することで、専門医のいない地域病院でも術中迅速病理診断が可能になる。例えばガンの手術の場合、切除標本のガンの広がりや残存チェックをすることで再手術を避けることができる。肺の場合には、結核かガンかの判断ができ手術の縮小、拡大の区別ができる。移植臓器に対しては、免疫制御剤の投与に際して副作用か拒否反応かの診断ができる。

 第二が遠隔放射線診断だ。インターネットを利用し、CTやMRI画像を伝送し専門医に読影してもらうというもの。放射線専門医は地域を訪問せず、しかも患者は地域の病院で検査が可能となり、特に高齢者にとっては精神的、肉体的な負担軽減につながる。また地域病院にとっても、CTやMRIといった機器を効率的に運用することができる。またTV会議システムを同時利用することで、リアルタイムのテレカンファレンスができ、最新医療情報の提供、医師の生涯教育や卒後教育に役立つ。

 第三が遠隔放射線診断の脳外科への応用があげられる。

 CTやMRIの遠隔放射線診断を脳外科の救急医療に応用した場合のメリットは、脳外科専門医が遠隔地で診断できるため、緊急性の高い脳疾患において時間の短縮がはかれることが大きい。また脳外科適応外の患者の搬送の減少もはかれる(図4、5)。

 第四が遠隔皮膚科について。

 女川町立病院では、皮膚科の医師は東北大学医学部附属病院から週一回応援にやってくる。そのため患者対応に苦慮するという現実があった。そのため同研究会では遠隔皮膚科の領域を設け、診断というより治療に遠隔医療を利用しようと考えた。病変の変化をデジタルカメラなどデジタル機器を利用して治療に役立てようとするものだが、静止画、動画、音声といったITの問題の解決が必要で、現在はまだ実験段階である。

 研究会では守備範囲にしていないが、この第四の分野は、内科、眼科、精神科、リハビリテーション科など応用範囲が広い。

 以上が女川テレメディシン研究会の行ってきた活動の概要だが、海外ではかなり普及している遠隔医療が、今後、高齢社会、医療格差、地方自治という時代背景によって日本でも急速に実現化されていく、ひとつの実践例として可能性の高い事例であろう。

コアネット東北の構想する

医療情報センター

 さらにコアネット東北は、複数の脳外科グループと共同で『青葉脳画像リサーチセンタープロジェクト』を立ち上げている。

 これは多数の脳研究機関である大学、研究所、企業を高速光ファイバーで連携し、脳画像データベースの構築、画像解析ソフトの共有、脳機能研究に関する討議を可能にするネットワークの構築、学術データの運用を目的として、一九九七年から二〇〇一年三月まで続けられた。

 また遠隔放射線診断の発展型として、古川市立病院、仙台市立病院など一六医療機関を東北大学医学部放射線科とインターネットでつなぎ『遠隔放射線治療支援システム』をサポートしようというものだ。

 コアネット東北グループとして、遠隔医療に取り組む今後の展開として何を考えているのかの質問に対して庄司氏はこう答えてくれた。

「これまでの実績を踏まえ、医療ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)として事業展開をすることです。つまり地域医療の情報化を推進したいと思っています。医療情報システムのIT化を推し進め、東北地区全体を統合する医療情報センターの構築を計画し、十二月から運用実験を行おうと思っています」

 現在、医療機関のIT化は、他の分野に比べ、そのニーズが叫ばれているにもかかわらず、進行速度が遅いといわれている。

 その理由のひとつが、病院内でのIT化、つまり院内医療情報の統合化が主流で、一般の企業が、今まさに行っているグローバルネットワークの構築には手が届いていない。

 次号では、コアネット東北グループが推進しようとしている広域医療情報システムとは何かをリポートしながら、都市、地域、企業、そして医療機関を取り巻くIT革命の現状を報告しよう。

図1

診断レポート

作成のプロセス

図2

図3-2テレカンファレンスの実績

10年3月9日

3月23日

8月25日

9月29日

10月27日

11年1月26日

2月23日

3月30日

4月27日

5月25日

6月29日

7月27日

8月31日

9月28日

10月26日

11月30日

12月21日

12年1月25日

件数

1

2

3

4

4

2

5

3

2

3

4

3

1

2

3

2

1

1

内訳

CT、MR、MRアンギオ

CT、MR、MRアンギオ

CT(頭部)3

CT(腹部)2、CT/MR(頭部)1、MR(頭部)1

CT(副腎)1、CT(頭部)1、CT/MR(肺)1、MRI(頭部)1

CT(骨盤)、MR(頭部)

CT(骨盤)3、MRI(頭部)1、CT(胸部)1

CT(腹部)3

CT(腹部)2

CT(頭部)1、CT(胸部)1、CT(肺)1

CT(腹部)2、CT(肋骨・胸骨)1、CT(腹部)2

CT(腹部)3、MR(腹部)3

CT/MR(頭部)1

CT/MR(腹部)1、CT(胸部)1

CT(胸部・腹部)1、CT(腹部・副腎)1、MR(頭部)1

CT/MR(腹部)1、CT(腹部)1

CT(腹部)1

CT(肺)1

図3-1遠隔画像診断の実績

10年8月

9月

10月

12月

11年1月

2月

3月

4月

5月

6月

7月

8月

9月

10月

11月

12月

12年1月

2月

件数

1

2

1

1

1

4

5

11

2

3

4

2

3

4

4

6

8

1

内訳

CT(頭部)1

CT(頭部)2

CT(頭部)1

MR(頭部)1

CT(眼窩部)1

MRI、MRA(頭部)4

MRI、MRA(頭部)5

MRI、MRA(頭部)7、MRI(肺動脈)1、CT(蓿部)2、MRI(蓿部)1

CT(頭部)1、MRI(眼窩部)1

MRI(頭部)2、CT(頭部)1

CT(腹部)1、MRI(頭部)3

MRI、MRA(頭部)1、MRI(頭部)1

MRI、MRA(頭部)1、MRI(頭部)1、CT(腹部)1

MRI、MRA(頭部)2、CT(頭部)1、CT(眼窩部)1

CT/MRI(肝)1、CT/X-P(胸部)2、MR(眼窩部)1

CT(腹部)3、CT(胸部)1、MRI(頭部)2

CT/X-P(胸部)1、CT(胸部)1、CT(頭部)1、MRI、MRA(頭部)3、MR(頭部)2

MRA(頭部)1

● 遠隔医療とは

遠隔医療には テレメディシンとテレケアの2方向の可能性が追求されている。

その歴史は、1970年代にさかのぼり、当時の目的はへき地に対する医療サービスの供給だった。

遠隔医療は、一般に「映像を含む患者情報の伝送に基づいて遠隔地から診断、指示などの医療行為および医療に関連した行為を行うこと」と定義されている。

 遠隔医療が行われる状況として考えられるのは、

1;医療機関と医療機関、特に地域の医療機関と専門医との間で行われる医療供給。

2;医療機関と医師のいない医療関連機関との間で行われる医療提供。

3;医療機関と家庭の間で行われる医療提供。

4;コメディカルと家庭の間で行われる医療提供。

の4つが想定されている。1と2を通常テレメディシン(Telemedicine)と呼び、3と4をテレケア(Tele-care)と称している。

 この4つの医療供給、医療サービスは、かなり意味合いの違いを示している。その最も大きな違いは、1は医師が介在するものの、2、3、4は遠隔地に医師は存在しない。つまり対面診療を基本とした場合には医師法上の問題が生じることとなる。

 特に3、4に関しては、医師法上、明確な判断がなされていないにもかかわらず、近年の介護保健の問題、在宅医療の必要性、都市部に専門医が集中しているという現状などを考えると、今後日本でも急速な普及が求められている分野であろう。

図5

図4

special focus...  + 医療と情報技術

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