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各地で本格化するゼロエミッション事業


NIトピックス

各地で本格化するゼロエミッション事業

写真=世界文化フォト

ゼロエミッションのモデルは自然界の食物連鎖

 ここ数年、ゼロエミッションということばを耳にすることが多くなり、ゼロエミッションへの取り組みをおこなう企業、自治体が急速に増えてきた。

「ゼロエミッション」は、エミッション(廃棄物)ゼロを意味し、一九九四年、国連大学によって提唱された概念。九二年のリオデジャネイロ地球環境サミットとそこで採択された行動計画「アジェンダ21」の「持続可能な発展」を実現するための方策として提唱されたのがゼロエミッションであり、それを研究・啓蒙により推進していくのが国連大学高等研究所による国連大学「ゼロエミッション」研究構想(UNU/ZERI:Zero Emission Research Initiative)である。

 この概念の提唱者の一人で、現在、この構想のプロジェクトマネージャーとして日本での普及活動の中心的存在である鵜浦真紗子氏によると、この概念は、自然の生態系をモデルにしているという。自然界では、食物連鎖によって、ある生物の排出したものや生物の死骸は、すべて他の生物に必要な食物となりむだのない繋がりをもっている。同様に、ある産業から出た廃棄物や副産物を、他の産業分野の資源として活用していくプロセスを組み合わせることによって、廃棄物ゼロを目指せるのではないかという発想である。またこの構想では、廃棄物を他の産業の資源に転じることで、地域に新たな産業をおこしたり、リサイクルの際に発生する余熱を暖房や給湯に利用したり、ゴミを固形燃料化して発電エネルギーに利用するなど、産業と環境の両立を目指していることにも特色がある。

環境問題解決と地域産業の活性化が手を結ぶ

 ゼロエミッションは、ここ数年、多くの取り組みが開始されている。

 国の施策としては、九六年、通産省による「エコタウン構想」をはじめ、環境庁の外郭団体・環境事業団による「ゼロエミッション工業団地」、建設省「ゼロエミッション道路」、運輸省(以上いずれも当時)「臨海部リサイクル・コンビナート構想研究」などが発表され、地域レベルでも、山梨県国母工業団地の入居二四企業共同による廃棄物削減の取り組みをはじめ、各地で取り組みが行われている。

 また、企業においてもすぐれた成果が達成され始めている。アサヒビールでは、ビールの製造工程で出る麦芽の搾り滓を、肥料や養殖場での餌にし、酵母を医薬品・食品として再利用し、総合住宅設備機器のINAXでは、汚泥をセメントやタイルの原料に、陶磁器くずを路盤材に再利用するなどして、すべての生産事業所から発生する埋め立て廃棄物ゼロを達成している。また、荏原製作所の藤沢エコインダストリアルパーク構想、太平洋セメントのエコセメント構想など、多くの企業がすぐれた取り組みを実現している。市民主体の取り組みも行われていて、学生の街・東京早稲田の商店街では、行政・企業・学生と共同してゼロエミッションに取り組み、街の活性化をおこなって、街の再生にも大きな成果を得ている。

 こうしたなか、ゼロエミッションが全国に広がりをみせたのは、九七年、旧通産省が旧厚生省と連携して「エコタウン事業」(今年度の省庁再編によって、廃棄物行政が環境省へ移管されたため、経済産業省と環境省の共同承認の形に変わった)を発表し、ゼロエミッションへの支援制度を設けたことが、大きな追い風になったと、先の鵜浦氏は語る。この事業は、都道府県または政令指定都市がエコタウンプランを作成し、それが承認を受けると、プランに基づいて実施される中核的事業について支援が受けられる仕組みだ。助成金の補助率は二分の一である。開始以来、長野県飯田市、神奈川県川崎市、北九州市、岐阜県(九七年度)、福岡県大牟田市、札幌市、千葉市(九八年度)、秋田県北部一八市町村、宮城県鶯沢町(九九年度)、北海道、広島県、高知市(二〇〇〇年度)、熊本県水俣市(二〇〇一年度)と、現在までに十三地域が、この事業の承認を受けた。

 こうした地方自治体の積極的な動きには、環境に対する関心の高まりと同時に、切実なごみ問題もあるようだ。ダイオキシン問題に対する市民の関心の高まりでごみ処分場、産業廃棄物処理場の新たな立地が難しいなか、各地の最終処分場があと数年で満杯になるところも多い。また各地で問題となった産業廃棄物の不法投棄は、GPSを用いた不法投棄監視システム(本誌創刊第2号16ページを参照)の実現で、かなり防げる可能性が出てきたが、今度は捨てられなくなったゴミの行き場がなくなることが予想されるのだ。

期待と課題

 エコタウン事業で注目されている事例の一つとして、福岡県大牟田市の展開を紹介してみよう。

 大牟田市では、九八年にエコタウン事業が開始された。かつて三池炭坑を有した大牟田市は、日本有数の炭鉱地帯としてその名を知られたが、九七年、百年余り続いた炭坑が閉山し、石炭なきあとの街づくりをどうしていくかは、地元にとって重い課題であった。そうしたなか、地域にとって最適な方向性がエコタウン建設による環境問題への取り組みと地域の産業創出だったという。その理由として市では、(1)化学コンビナートの歴史があり、環境技術への応用が可能、(2)工業系の学校が多く、技術系の人材が豊富である、(3)公害を克服してきた経験があり、市民の環境問題への関心が高い、(4)地理的に九州の中心に位置し、鉄道、港湾などの便に恵まれている、を挙げる。

 大牟田の計画は、未利用用地であった臨海部の健老町・新開町地区を計画地とし、家庭から出される可燃ごみをRDF(ごみ固形化燃料)化して発電を行うRDF発電所を中心に、粗大・不燃ごみや空き缶、ペットボトル、紙類などをリサイクルする「一般廃棄物資源化施設」、さらに環境技術の研究施設や市民の環境学習の場を備えた「中核的支援施設」、そして、上記以外の生活系廃棄物や工業、農業、水産業から排出される廃棄物をリサイクルする「産業廃棄物資源化施設」からなっており、産業廃棄物資源化施設には、企業誘致を基本に民間の活力導入をはかる一方、リサイクルを目的としない単なる処理施設や、技術の確立していない安全性に疑問のある施設の導入はしない方針だ。

 RDF発電は、福岡県、大牟田市、電源開発の三者を中心に設立された「大牟田リサイクル発電株式会社」が整備するもので、福岡、熊本両県の二八市町村の家庭から出る可燃ゴミをRDF化して集めて二万キロワットの火力発電を行い、発電した電気は九州電力に売電される仕組み。大量のRDFを高温で焼却するため、ダイオキシンの発生もほとんどないという。

 二〇〇一年七月末の段階で、可燃ゴミのRDF化施設、発電所、それに、環境技術の研究開発などをおこなう環境技術センターと、市民の環境学習や交流の場となる市民交流・学習センターを含む中核的支援施設が着工されており、発電所の稼働は来年度から、全体の建設事業終了は二〇〇四年度を予定している。

 環境への取り組みとともに注目されるのは計画を推進する過程で、環境への取り組みが進むドイツの産炭地ノルトライン・ヴェストファーレン州との交流による現地視察やドイツから講師を招いての「環境・リサイクルテクノフェア」などが開催されたほか(ジェトロの「地域国際化産業交流事業」の支援を受けておこなわれた)、市民への説明会は一〇〇回以上を数え、計画に対する市民の理解が進められた。

 順調な滑り出しをみせ、大いに期待される大牟田市の試みだが、ゼロエミッションやエコタウン事業が全国に広がりつつある状況を考えるとき、似たような手法、技術が一律に広がっていく可能性も否定できないだろう。例えばRDF発電の場合、大量のRDFを高温で焼却することが必要なため、大規模集約型のシステムが必要となる。また大量の可燃ごみの排出が前提となっているため、ごみそのものの削減努力とのかねあいを指摘する向きもある。スウェーデンのゴットランド島(人口五万人。夏場は一〇倍の観光客で賑わう)のように、安全性と経済性についての吟味から焼却炉導入を選択せず、同時にZERIの協力でつくったコンポスト施設で生ゴミを処理し、またゴミの減量、リサイクルの努力を重ねて脱焼却、脱埋め立てを実現しつつある島(地域)もある。

 やはりその地域にあった技術、システムを選択していく創造的な思考と柔軟な取り組みが求められており、そのためにもNPOを含めた市民参加、情報公開、さらには大学などの研究機関による基礎研究を超えた実用的技術の開発・提案が、ますます重要となってくるように思われるのである。

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