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[NIヒューマンインタビュー] -- 春田 博


NIヒューマン・インタヴュー|シチズン時計株式会社

春田博氏|.シチズン時計株式会社・代表取締役社長

聞き手|板生清(本誌監修)

シチズンが未来の時計を

つくりはじめた

板生|今年三月、御社は本社をここ西東京市の東京事業所(旧田無製造所)に移されましたが、どういった理由からだったのでしょう?

春田|ええ、それは開発・製造・管理機能と本社機能を集結させることで、経営のスピード化及び効率化、総合企画機能の強化を図るためです。わが社は創業から今年で七一年を迎えましたが、二十一世紀の国際企業としての基盤を確立していくための再スタートだと考えています。

板生|なるほど。すでに時計事業よりも、その他の情報通信機器事業の方が主力になりつつあるのですか?

春田|いいえ、そんなことはありません。あくまでもコア・ビジネスは時計です。全事業に占める時計事業の割合は四割くらいでしょうか。非時計事業としましては、ポケットボードやデータスリムなどの携帯情報機器のほか、携帯電話やゲーム機等に用いられる液晶ディスプレイやそのバックライト、水晶振動子といった極小デバイスなどを手がけています。まあ、業界全体としても、同様の流れにあると思いますが、他社に比べるとわが社の時計事業の占める割合は高い方ですね。

板生|今や産業の流れは、ミリやマイクロといった次元からナノやバイオといった方向へと進みつつあると世間では言われていますが、私自身は、時計事業の基盤であるミリやマイクロの世界というのは、まだまだ産業の主力だと思っています。こうした技術を引き継ぐものが、モバイルやウェアラブル、すなわち小型化・軽量化した情報端末といえます。小さなエネルギー源で機能する、小型で軽量な時計づくりの技術は、まだまださまざまな可能性を秘めていると思います。

春田|おっしゃる通りです。今、私どもが提案している新しい技術としましては、光発電のほか、体温と外気温との差による発電によって動く、「エコ・ドライブ」を搭載した時計です。電池交換が不要なことから大変好評を得ています。この製品は、一九九六年に時計では初めて「エコマーク商品」(環境保全型商品)に認定されました。自分で使う電気は自分でまかなう、これが携帯情報機器やウェアラブル機器にも必要な考え方ではないでしょうか。  

 また、ウェアラブルという観点からいうと、時計とパソコンと双方向でデータ交換が可能なダイバーウォッチ「プロマスターサイバーアクアランド」も、次世代の時計として注目を集めています。これは、水深計や水温計を備え、体内残留窒素量や航空機搭乗禁止時間計算、急浮上警告アラームなどのダイブコンピュータ機能を搭載したもので、パソコンで設定したアラーム音や各種ダイブアラームなどの読み込みが可能です。今後、さまざまな分野に応用できるのではないかと考えています。

板生|いずれも、時計技術をベースにした画期的な商品ですね。

 一つご提案があるのですが、今後、環境への発想をさらに進めて、エネルギーがたまっているときじゃないと働かない、用がないときは寝ているといった、生き物のような端末機器をつくられてはいかがでしょう。そうすれば、エネルギー消費を最小限に抑えることができ、環境への負荷が少なくてすみます。

春田|なるほど、生真面目すぎない端末ということですか。人間の生き様もそうだといいんですけどね(笑)。

板生|そうそう、面白くないと思ったら寝てる。

春田|それを咎めない価値観が拡がれば、もっとハッピーな社会になるでしょうね。実は、時計ではすでに「エコ・ドライブ パワーセーブ」という機能で実現しているのです。光が一定期間当たらないと針を止めてしまう。その間ICだけは時を刻んでいます。そして次に光が当たると時・分・秒・日付まできちんと修正して表示するというものです。これにより、フル充電で最長一〇年間、無充電で稼動させることが可能となりました。

板生|時計をつくってらっしゃる方を前になんですが、そもそも時間という概念はヨーロッパのものでしょう? かつての日本には、何を何時までにやらなくちゃいけない、なんて考えはなかった。時間に縛られることなく、もっと悠々と無駄のない生き方をしていたと思うんです。

春田|いやあ、そういう話を聞きますと、時計メーカーは皆さんの生き方をより息苦しくしてきたんじゃないかと、原罪意識をもちますねぇ。

板生|それは時計メーカーのせいではなくて、そういうことを社会が要求してきたからだと思いますよ。ただ、これからは、エネルギー消費を抑え、無駄のない暮らしのために、新たな技術を開発していく必要があるでしょうね。

時計は身体の一部。

ゆえに、可能性を秘めている

春田|時計は精密機器ですが、特徴的なのは、つねに身体にくっつけている特殊な機器であるという点です。身体の一部といいましょうか。だから、自分の分身のようなものであり、どうしても思い入れが強くなります。体温を利用して発電する「エコ・ドライブ」などは、時計の動きそのものが、生命の証ともいえます。

板生|そうですね。今や時計の代わりに携帯を利用する人も増えていますが、やはり、時計には時を知るという機能だけではない存在感を感じますね。

春田|そもそも、小さくて精密なものというのは、そのこと自身で美しいんだと思うんですよ。だから、時計は装身具にもなるし、親の形見や記念品にもなる。決して精度がいいとはいえない外国の腕時計が高値で市場に出回っているのも、そうした理由からだと思います。

板生|だいたい、左腕の手首は時計の指定席ですからね。小さいものを腕につけるという人々の愛着と利便性を、ぜひ、次なる技術革新へと結びつけていきたいものです。たとえば、時計を壁にかざすとそこにディスプレーのように画像が映し出されて操作できるといった、ウェアラブルな機器の開発も面白いですね。どうせなら、片腕といわずに、両腕とも時計の指定席にしてはいかがですか? 片方はメモリーとして機能させ、双方を無線でつなげば、時計の機能はより拡がります。

春田|それは面白いですね。時計を左手にだけつけるという固定概念を打ち破る。それはいいアイディアだと思います。

板生|それと、機械的な動作というのは、相変わらず非常に重要だと思いますよ。振動子などの微小な振動が、じつは、大きなものをより小さく、経済化するのに役立ってきたわけですね。今後も、そういう技術はなくならないし、情報処理にも生かされていくと思いますが……。

春田|おっしゃる通りです。時計メーカーとして蓄積してきたこれまでの技術を基盤に、「マイクロ・ヒューマン・テック」という、人に役立つ、人を幸せにするという視点に立って、今後もシチズン「Citizen」、すなわち市民に役立つ製品を提供していきたいと考えています。

板生|ありがとうございました。

春田 博〔はるた ひろし)

1932年石川県金沢市生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、56年シチズン時計に入社。

精機事業部設計部長、シチズン精機兼シチズンメカトロニクス代表取締役を経て、

91年シチズン時計専務、96年副社長。97年より現職。

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