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[コラム] 社会に開かれた公教育を -- 西村 和雄



[コラム]

社会に開かれた公教育を

西村和雄[京都大学経済研究所]

8月の初めに、数学の国際会議に招待されて、ドイツに行って来た。そこで、インドのバンガロー市の大学の数学者と会った。バンガロー市にある大学院大学と学部中心の大学の2つが、国内外での研究と技術者の輩出において、優れた業績を上げ、この地域をインドのITの機関車役とする役割を果たした。彼によると、インド国外へのソフトの輸出の80%がこの地域からなされるとのこと。ひとつの地域の教育が新しい産業をつくり、その地域が国をひっぱっているよい例である。この数学者も、アメリカの大学で30年間教えた後に、最近、帰国したとのこと。

「ところで、日本はいったいどうしたのか。日本人の数学教育の水準は高いはずだ。なぜ、不況から回復できないのか」と逆に訊かれた。中央政府による無意味な規制の緩和が進まないこと、「ゆとり教育」がなされてきたことを説明すると、「誰が、なぜそんなおろかなことをするのか」と、理解してもらえない。今まで、何度同じことを外国人に訊かれたであろうか。

これまでの日本には、数学、例えば2次方程式などは、生活の中で使わないから、学ぶ必要はないという意見もあり、それをマスコミを通じて述べる文化人や大学関係者もいた。そして、行政も、大学の入学試験の科目数を削減するように指導していた。2002年からの新学習指導要領では、二次方程式の解の公式は日本の中学の教科書から姿を消し、高校に移される。

そこで私たちは、3つの私立大学の経済学部の卒業生を、大学の入学試験で数学を選択したグループと数学を選択しなかったグループに分けて、卒業後の所得を調べてみた。その結果、明らかに、数学受験者の平均所得の方が高く、とくに、共通一次試験導入以降の入学者については、数学受験者の方が、平均所得が107万円も多かった。特別な才能をもった作家やプロスポーツ選手になるのならいざ知らず、一般の人にとって、「数学は役に立たない」は嘘なのである。

中央の思惑を現場に押し付ける政策は、もう限界に来ている。子どもたちに画一的な学習指導要領で内容のうすい教育をするよりも、政府や民間の研究機関に複数のカリキュラムをつくらせ、その中から現場が適切なものを選ぶようにしてはどうだろう。さらにいえば、教育政策ですら、地方分権にしたり、アウトソーシングしたりするほうがよい案ができるであろう。日本社会にも、それだけの実力がある。

西村和雄・平田純一・八木匡・浦坂純子による「数学教育が人材をつくる」から

西村和雄編『「本当の生きる力」を与える教育とは』日本経済新聞社/2001年7月に収録

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