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[コラム] 「地球リテラシーのプラットフォーム」 -- 竹村 真一

[コラム]

「地球リテラシー」のプラットフォーム

竹村真一[東北芸術工科大学教授]

最先端の科学技術がモニターするダイナミックな地球の姿を、パソコンで見るだけでなく、地球儀のように手で触って回して見たり、衛星の眼をかりて地球上のいろいろな場所を探索できるとしたら?

いま私が多分野の科学者と共同で制作している「触れる地球」(Tangible Earth)は、そんな思いを実現してくれるリアルでインタラクティブなマルチメディア地球儀だ。(この冬休みから日本科学未来館で展示予定。写真及び関連イベント企画はp055を参照)

直径1メートルあまりの青い地球に、衛星データに基づく雲の動きや日影線まで準リアルタイムで映し出されている。モードをかえれば、ここ数年のエルニーニョ現象や温暖化の推移、地震活動やオーロラ、さらには渡り鳥やクジラが地球上を移動していく航跡などが、いきいきとヴィジュアライズされる。気象や火山活動のデータと渡り鳥の航跡を同期させて表示すれば、地球のどのようなイベントが渡りにどんな影響を与えるか?といった学際的な発見も触発されるだろう。

何より、この約千万分の一の地球で見ると、たとえば雲や気象現象が発生する大気の層(対流圏)も最も深い海も、厚さわずか1ミリの実にフラジャイルな皮膜に過ぎないことがよくわかる。月も約38メートル彼方に浮かぶバスケットボールといった具合に、宇宙的なスケール感もタンジブルになるのだ。

渡り鳥のコンテンツは、東大の樋口研究室から衛星追尾データをお借りして表示している。小さな体で数千キロの季節移動を行なう渡り鳥は、人間とは異なるスケールで地球を認識している。また、星々との関係で自分の位置を計るというから、ある意味で宇宙を内面化した存在といってもいい。

となると、鳥は人間にとって、「人間中心的」な地球観を相対化してくれる重要な媒介者(メディア)となるかもしれない。地球上を鳥が移動してゆく様子を、各中継地の美しい映像とともに見ていると、地球規模の渡りというものが急にリアルに感じられてくる。鳥たちが高空から見ている地球の風景や星の配置なども、衛星データに基づく3次元マップやCGで再構成すれば、「一人称」で(つまり擬似的に自分が鳥になった視点で)旅する鳥たちの経験世界に人間がアクセスすることも可能になる。

そうやって鳥たちのグローバルな感覚を人間が少しでも理解してゆくきっかけができれば、単なる“保護対象”としての鳥との関係を超えて、より内面的な人間と鳥類の共生関係が培われるのではないか?

いわば電子技術に媒介された「異種間コミュニケーション」の可能性だ。

さらに、この地球儀で渡りをリアルタイムにモニター(衛星追尾)しながら、鳥たちが中継地にいる間にインターネットで‘いま鳥たちはどうしてますか?’と問いかければ、その湿地の住人や現地の自然保護に携わる人から、ライブで‘on site’(現場的)な情報が返ってくるかもしれない。

渡り鳥を介して、地球上の見ず知らずの人々がつながり合う。リアルタイムに意識を共有した人々の連携を通じて、野鳥や地球環境の保護がなされてゆく。

それはたんなる情報網をこえた、「地球共感圏」とでもいうべきInter-NationalかつInter-Speciesなコミュニティ誕生の兆しといえるのではないだろうか。

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