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ネイチャーインタフェイス > この号 No.06 の目次 > P24-25 [English]

[特集] 国や地域の自然情報をどう伝えるか -- 原 慶太郎







シンポジウム『野生と技術のコミュニケーション』・地球環境財団主催より

special feature...06

コンピュータでつくる生き物の保全計画

MOMOSE Hiroshi

百瀬浩

近年、GIS、GPS、リモートセンシングなどの技術の発達により、生物の分布や生息環境など空間的な広がりを持つ情報の解析が容易に行えるようになってきた。これらのデータを処理するためのソフトも、最近ではパソコン上で手軽に利用できるようになってきている。本稿では、栃木県で行った野外調査にもとづく希少猛禽類の生息環境解析について紹介する。現地でどのようにデータをとり、それをどのようにコンピュータで処理しているのか、GISを活用して環境を解析し、生き物の保全計画へと結びつけるための技術の可能性を探ってみたい。

 私たちは現在、国土交通省の国土総研(旧建設省土木研究所)環境部緑化生態研究室で「生態情報の統合化及び活用に関する研究」というテーマで研究を行っている。この研究は、環境アセスメントの効率化を図るため、既存自然情報やリモートセンシング技術などにより把握した地域の自然概況をGISデータベースとして整備し、アセスの各段階で必要な情報を提供するシステムの開発を目的としている。

 このための事例地として、栃木県の宇都宮市から芳賀郡にかけての南北一一・〇キロメートル、東西二四・六キロメートルの範囲をモデル地域として、植生・地形・土地利用・気候等の環境情報をGISデータとして整備した。[fig.01参照]

 また、同じ地域でオオタカ、サシバ等の猛禽類の生息状況を調査し、植生・地形等といった環境との関連を調べる研究も実施した。最近、各種事業において希少猛禽類の保全への対応が求められており、この研究は猛禽類の保全に関する基礎的な知見を得ることを目的としている。ここでは、サシバという渡り性の中型の猛禽類を例に、GISを活用した希少猛禽類の生息環境選好性の解析について述べてみたい。

 サシバは近年、個体数の減少が指摘されており、今後保全が必要となると考えられているタカの一種である。サシバの調査は九九年四月中旬から七月にかけての繁殖期に三回から五回、調査地全域の林縁部を踏査して営巣地の分布を確認した。

 調査の結果、百十六ヶ所のサシバの営巣地を確認し、そのうち三十三ヶ所で実際に巣を発見した[fig.02]。調査地を一辺が約二キロメートルのメッシュに分け、その中のサシバの繁殖数を目的変数に、各メッシュの樹林面積、樹林と水田の境界線の長さ、水田の面積と周囲長との比、周囲のメッシュの樹林面積、そして人口を説明変数として重回帰分析を行った。

 重回帰分析の結果、サシバの生息数と環境を表す変数群との間の決定係数はr2=0.812で、優位な関係が認められた[fig.03]。個別の変数で寄与率が最も高かったのは、樹林と水田の境界線の長さと周囲のメッシュの樹林面積で、谷津田の多い環境が連続して存在する地域がサシバの生息地として好適であることが示唆された。

 このモデルには、改善すべき点もあるが、植生などの環境だけからサシバという種の生息数(密度)が八割強説明できたことになる。こうしたモデルが各種の希少猛禽類や保全を必要とする生物種について完成すれば、それを用いてある地域の潜在的な希少猛禽類の生息数を予測したり、事業を実施した場合の影響の程度(例えば、異なるシナリオに基づく開発計画による影響の度合いの違い)を量的に評価したりといったことができるようになると考えられる。[fig.04参照]

 モデルの適用にあたっては、地域による違いや環境データの精度などさまざまな点について考慮する必要があることは言うまでもない。今後、他地域での調査結果によってサシバの生息モデルの適用性を高めるとともに、他の希少猛禽類についても同様の生息環境モデルを引き続き作成するための調査研究を進める予定だ。

参考文献 

1…土木技術資料43(8) 百瀬浩・藤原宣夫・木部直美・武田ゆうこ・小栗ひとみ・吉川勝秀 2001 pp.32-37。 情報基盤を活用した環境影響評価支援システムの構築。

2…日本鳥学会2000年度大会講演 要旨集 百瀬浩・植田睦之・藤原宣夫・石坂健彦 2000 pp.16。 栃木県宇都宮周辺におけるサシバ Butastur indicus の生息状況と環境選好性について。

3…日本生態学会誌(Japanese Journal of Ecology) 51(印刷中) 百瀬浩 2001 地理情報システムを活用した動物の生息環境の解析。

百瀬浩[ももせ・ひろし]

1956年生まれ。京都大学大学院(理学研究科)で学位取得後、カリフォルニア大学デイヴィス校客員研究員(動物学)、

(財)山階鳥類研究所研究員を経て、現在国土交通省国土技術政策総合研究所環境研究部招聘研究員。

鳥類の音声によるコミュニケーションの研究や、IT技術を用いた自然環境のモニタリング手法、

GISを用いた生物の生息環境解析と保全計画の立案手法などについて研究している。

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