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国や地域の自然情報をどう伝えるか -- 原 慶太郎





シンポジウム『野生と技術のコミュニケーション』・地球環境財団主催より

special feature...07

国や地域の自然情報をどう伝えるか

生物・環境に関する情報基盤の整備と利用

HARA Keitaro

原慶太郎

生物多様性保全のために地球規模で生物情報を収集し、それを公開するシステムのプロジェクト化が進行しつつある。その基本となる地域の生物の生息環境や分布情報をどのように収集し、データベース化するのか、さらにその情報を行政や研究者、市民がどのように共有し、野生動植物の保全に結びつけたらよいのか、このために必要とされる情報基盤について紹介する。

 生物多様性の保全のためには、地域から地球までの、短期から長期という時空間スケールでの取り組みが必要である。現在、インターネット上で公開されている取り組みを紹介し、現状と問題点を探ってみる。

 生物多様性の保全は、実際には各国のそれぞれの地域で、その施策が実行される。しかし、渡り鳥や大陸における国をまたがる領域を生活域にしている生物種の保全には、国家間もしくは全地球規模の取り組みが必要となる。92年の生物多様性条約の採択を受け、国連環境計画(UNEP)をはじめとする関連国際機関は、生物多様性保全のための機構づくりを開始している。

 国連環境計画(UNEP)のWorld Conservation

Monitoring Centre[URL゜01]は、イギリス・ケンブリッジに拠点をおいて活動していた組織だが、現在はUNEPのもとで活動しており、絶滅の危機に瀕した動植物データベースや樹木保全データベースが完備されている。

 また、生物多様性条約によるクリアリングハウス・メカニズム[URL゜02]は、生物多様性に関するメタデータの整備を進める情報センター的な役割を目指している。また、Bio Seek[URL゜03]は、生物多様性に関するWeb上の資源を検索するのに有益なサーチエンジンである。全世界の既知の生物種に対する基本的標準化の作業であるSpecies 2000 [URL゜04]や、全地球規模での生物多様性情報の収集とデータベース化を図ろうとする壮大な行動であるGlobal Biodiversity Information Facility[URL゜05]は、Species 2000 Asia Occasia[URL゜06]の活動の中で連携を図っており、世界的な規模での取り組みが始まっている。

 野生生物に関する正確な分布情報の収集とデータベース化、保全策策定への連携に関して最も良く知られている米国のGap解析プログラム[URL゜07]は、州という広大なスケールを対象とし、衛星データを用いて土地被覆を分類し、既存の研究に基づくハビタットモデルにより、野生生物の生息域を予測して保全策に結びつけるものである。全米でプロジェクトが進行しつつある。

 一方、日本では、93年5月に生物多様性条約を締結し、95年に「生物多様性国家戦略」を決定した。この流れを受け、旧環境庁は98年、我が国の自然環境と生物多様性の現状を把握し、その成果を客観的な情報として蓄積、広く提供していくための拠点「生物多様性センター」を設立した[URL゜08]。ここでは、「生物多様性情報システム」が構築され、各種データベースの公開が行われている[URL゜09]。

 さらに都道府県レベルでは、北海道GAP分析プログラム[URL゜10]や、瀬戸内地域をとりまく博物館が中心となって作成している「環瀬戸内いきものマップ」[URL゜11]は、注目される。後者は、博物館に収蔵されている標本や文献情報を生物の名前・採集日から検索し、その結果をもとに分布図を表示するシステムである。このシステムは、自分で観察した生物の情報を登録することもでき、双方向の情報のやり取りを目指している。

 市町村レベルでは、まだこのような取り組みは多くはない。仙台市科学館で公開している「いきもの調査」[URL゜12]は、市民参加型のページとして注目される。また、千葉県佐倉市の自然環境総合調査の結果をもとに、筆者らの研究室で、現在、環境マップ構築の作業が進められている。

 これまでも日本各地で「環境情報システム」と称される情報システムが都道府県を中心に構築されてきた。しかし、基本となるデジタル地図の整備の遅れや利用する側での仕様が明りょうでないなどの理由で有効には活用されてこなかった。欧米での先進事例を見ると、ユーザー側からの発想で、多くの組織や住民がパートナーシップのもとにシステム構築を進めている印象が強い。

 環境の問題は、民(住民)・産(産業界)・官(行政)・学(研究者)がそれぞれ独立した機能を持ち、パートナーシップを築きながら問題解決にあたっていかなくてはならない。ここにIT(情報技術)が大きく寄与できるところがある。インターネットを介して、環境に関する情報を共有し、それぞれの組織や個人間でのインタラクティブな情報交換をスムーズに進めることが可能になるのである。

 また、日本にとどまらず、アジア地区を見据えたとり組みも重要である。北海道環境科学研究センターが日本野鳥の会国際センターと協力して開発を進めている「鳥類を指標生物としたアジア生物多様性保護支援データベース」開発のプロジェクトは、アジア地区におけるデータ共有化を目指しており、今後の進展が期待される。また、東京情報大学では、平成12年度から文部省の補助を受けて学術フロンティア推進事業「アジアの環境・文化と情報に関する総合研究」が5ヶ年計画で始まった。NASAの衛星EOS-terraのMODISデータの受信をおこなっており、近日中に情報を公開していく予定である。ITは、環境問題に関するデータ収集や情報公開・共有などを通して、地域から国レベルそしてアジア地区に至る人と組織のパートナーシップづくりに大きく寄与しつつある。

URL一覧

01

World Conservation Monitoring Centre

www.unep-wcmc.org

02

クリアリングハウス・メカニズム

www.biodiv.org/chm/

03

Bio Seek

www.biodiv.org/search/

04

Species 2000

www.species2000.org/

05

Global Biodiversity Information Facility

www.gbif.org/

06

Species 2000 Asia Occasia

www-sp2000ao.nies.go.jp/

07

Gap解析プログラム

www.gap.uidaho.edu/

08

生物多様性センター

www.biodic.go.jp/

09

生物多様性情報システム

www.biodic.go.jp/J-IBIS.html

10

北海道Gap解析プログラム

www.hgap.org

11

環瀬戸内いきものマップ

www.naturemuseum.net/webgis/ikimono_map.html

12

いきもの調査

www.kagakukan.sendaic.ed.jp/html/ikimono.html

原慶太郎[はら・けいたろう]

1955年生まれ。1981年東北大学大学院理学研究科生物学専攻修了。理学博士。

東京情報大学情報学科専任講師、助教授を経て、1997年同大学教授。

1996〜97年英国ロンドン大学ワイカレッジ客員研究員。2001年東京情報大学総合情報学部環境情報学科教授。

専門は、生態学(景観生態学)、環境情報論。

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