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NI科学技術メディア時評 科学技術NPOと市民の科学、科学の文化 -- 林 衛




[NI科学技術メディア時評]

科学技術NPOと市民の科学、科学の文化

 市民科学者は、独立した専門の研究能力のもとに、企業や国家が持続可能な事業を行えるように手助けをする。高木仁三郎さんとともに、市民科学のノーベル賞といわれるライト・ライブリフット賞を受賞したマイケル・シュナイダーさん(ヨーロッパの市民科学グループ、ワイズパリで活躍)の説明は、じつにわかりやすかった。二〇〇一年一〇月八日、高木さんの一周忌を記念した東京の教育会館における講演での発言であった。

 ベトナム戦争の時代にアメリカで始まった市民科学(citizen science)は、当初、専門的知識をもたない市民を「無知」を理由に退けようと政府によって動員された政府側科学者に対抗し、市民の側に立つ科学者たちの運動だったという。

 それから三〇年が経過して誕生した、WINの会に代表される科学技術NPOも、よく似た面をもっている。高い専門性をもって、持続可能な事業や具体的なビジネスの可能性を提起するのが大きな役割だ。科学知識の普及・共有もめざしている。これは、市民科学が新たな拡大の時を迎えていることを示していると思う。

 対立・対抗の構造を乗りこえるのは、専門性をもった科学技術者、学生や市民によるあたりまえの参画・実践の機会の拡大であろう。科学技術NPOがその道をまさに切り開いている。

 とくにエネルギーや環境問題といった社会的に重要な課題に、社学共同でとり組もうとしたとき、たんなる技術解説だけにとどまらず、高度な内容をかみ砕き、わかりやすく問題点を深く掘り下げながら実践を重ねてきた高木さんの著作に改めて触れる価値は高い。

科学技術と文化をつなぐ

Museum Magazine

 右の目標を掲げ、毛利衛館長の日本科学未来館が創刊した新雑誌が『MeSci』だ。  

 巻頭対談では、レイチェル・カーソン協会理事長の上遠恵子さんが毛利館長と、『沈黙の春』などで知られるレイチェル・カーソンの最後の作品『センス・オブ・ワンダー』について語り合う。

 化学の黒田玲子さん、地球温暖化問題に取り組む茅陽一さんなどの科学者が登場するだけでなく、アーティスト坂本龍一さんによる「環境と人間、光と音楽のコラボレーション」、科学史・科学技術論の佐倉統さんと金森修さんがそれぞれ音楽好きの科学者とSFについて語るなど、まさに科学の文化をめざした内容になっている。

 オールカラーで七〇ページ余り。入手方法についてはぜひ未来館に問い合わせてみてほしい。

 東京都立大学助教授を辞して原子力資料情報室の活動に進み市民科学を実践した高木さんと、北海道大学助教授から宇宙飛行士の経歴を経て科学の文化をつくりあげようとしている毛利さん。高度の科学知識と知的好奇心に支えられた社会的活動力という共通点で、お二人はまさに科学者のなかの科学者だといえると思う。

科学教育――二〇〇二年問題は

まだ終わらない

 二〇〇二年完全実施予定の文部科学省新学習指導要領は、「生きる力」を養うため教科の内容を三割削減するなどして「総合的学習の時間」を導入したが、前号でもお伝えしたとおり、多くの欠陥がその実施前に明らかにされている。

『論座』一月号の特集「新学習指導要領に現場の反乱が始まった」では、東大教育学部苅谷剛彦さんらによって、ある県教育委員会が文部省の方針を読み替えて、総合的学習の時間を教科の内容に結びつけ、基礎的な学力低下を招かない方針を小中学校に伝えている様子が、詳細な聞きとりに基づいてレポートされており興味深い。

 そのほか小学校教諭、私学校長の発言に加え、NI誌前号に登場の滝川洋二氏がイギリス留学で体験した高度な科学教育について詳解するとともに、教育の地方分権時代に向けた「理科カリキュラムをつくる会」への参加を呼びかけている(55ページ参照)。これも社学共同で新しい公教育をつくる実践だといえよう。

林 衛(ユニバーサルデザイン総合研究所主席研究員、兼本誌副編集長)

『プルートンの火』

高木仁三郎著作集

第1回10月配本、七つ森書館(2001)6500円。1997年ライト・ライブリフット章受章記念『プルトニウムと市民のはざまで』も収録。

『MeSci』

日本科学未来館

(http://www.miraikan.jst.go.jp/)によって2001年11月に創刊された新科学雑誌。

『論座』

新年号(2002)780円。NI5号で取り上げた2002年新学習指導要領のはらむ問題に鋭く切り込む。

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