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[コラム] 21世紀、「社会のための科学」確立の条件 -- 有本 建男



(P4 コラム)

NATURE INTERFACE Column

ARIMOTO Tateo

21世紀、「社会のための科学」確立の条件

有本建男内閣府大臣官房審議官(科学技術政策担当)

 1999年7月、ハンガリーの首都ブタペストに世界中の科学者、技術者、国会議員、ジャーナリスト、行政官ら2000人が集い、世界科学会議が開催された(ユネスコと国際科学会議共催)。採択されたコミットメント(公約)では、19世紀―20世紀に発展した「学問のための学問」「知識のための科学」に加え、21世紀の科学のあり方として「平和」「持続可能な開発」そして「社会」のための科学の確立をめざすことが宣言された。

 では、日本において21世紀の「社会のための科学」はどのように実現するのであろう。最近注目されているデータがある。特許1件あたりの科学論文の引用件数を示すサイエンスリンケージの各国比較をみてみると、日本と欧米間の較差が1990年代後半に、先端技術のITやバイオを中心に著しく拡大していることだ(グラフ参照)。ブレア首相のイギリスは、最重要政策として「知を原動力とする経済(Knowledge-driven Economy)」を掲げている。科学知をベースにした21世紀の社会経済の発展のためには、イノベーションの上流から下流まで、つまり基礎研究から成果の社会への活用、特許化・製品化にいたるまでのすべてを見据えたとり組みが重要となり、学問分野や所属組織の枠を超えた知の結集が必須だ。科学技術NPOの活動意義のひとつがここにある。

 21世紀に重要になる大きなテーマに、科学のガバナンスシステムの確立がある。従来までの「知識のための科学」の時代に、先進国を中心にモノの豊かさが実現した一方、環境の破壊、水・エネルギー資源の浪費と枯渇、飢餓や貧困、南北経済格差の拡大といった問題が深刻化した。日本の科学技術もこの問題に真正面からとり組んで行く必要がある。科学者、技術者の社会的責任は重い。ところが、日本ではアカデミズムが社会に向き合わず、科学技術が市民の信頼と支持を得るための力を発揮しないまま、若者や市民一般に科学技術離れが進行しているのではないか。アメリカの科学アカデミー、イギリスの王立協会のように、自立し権威をもち信頼されたアカデミー(科学者のコミュニティー)が確立され、社会のために力を発揮することが求められる。

 アメリカの大統領府科学技術政策局(OSTP)、イギリスの首相府科学技術局(OST)をモデルに誕生した政府の総合科学技術会議は2年目を迎えている。アカデミーと政府に加え、企業、NPO、そして市民が、相互にコミュニケーションを深めながら、自立し責任をもって実力を発揮することが、21世紀の日本に、科学のガバナンスシステムを成熟させ、「社会のための科学」を確立する条件だと考える。 

米国特許に関する主要国のサイエンスリンケージ(全分野)の推移

サイエンス・リンケージ

注:分類は、出願者の国籍による

データソース:CHI Research,Inc., "International Technology Indicators 1980-2000"に基づき

科学技術対策研究所が作成

情報通信分野におけるサイエンスリンケージの推移

サイエンス・リンケージ

サイエンスリンケージの各国比較

その国のイノベーション(特許)がどれだけ基礎研究(論文)に支えられているのかの指標とされる。

グラフは文部科学省科学技術政策研究所による。

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