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[特集] ITハウスにおけるエネルギー供給 -- 内田 要太郎



(P35-38)

未来予測アグリビジネス最前線

06

ITハウスにおけるエネルギー供給

内田要太郎

(エバーグリーンプラネット 代表取締役会長)

 農業の後継者問題、有機農産物の認証制度の実施、熾烈化する外国産農産物と国内農産物のコスト競争等々、農業をとり巻く環境は激烈な転換期を迎えている。一方で世界規模でとり組まなければ解決しない環境問題は、農業にとってもっとも大事な水と土壌の汚染問題が深刻化させている。農業環境の制御は不可能といわれているが、「オランダ式農法」は「ハウス」という閉ざされた環境を制御することでトマト生産の工業化を実現した。

 日本でもここにきてITを駆使した生産環境の全自動化を目指す「ITハウス」の研究・開発が急速に進んできたが、当然、コスト高の「ITハウス」の維持費を軽減するための方途も重要な課題となってきている。ハウスの維持に必要な冷暖房用のエネルギーコスト。このコスト削減を実現する画期的なボイラーが完成した。

開発の経緯

 高度経済成長期以降ますます増加の一途をたどる産業廃棄物は、平成二年をピークに年間総排出量四億一五〇万トンにも達している。聞き飽きた数字ではあるが、これは一般廃棄物の約八倍にのぼる量である。我々の生活が便利で快適になるのと引き換えに環境破壊、環境汚染の原因を我々自身がつくり出している。特に近代の象徴であるモータリゼーションの登場は、現在のIT革命に匹敵する、あるいはそれ以上の革命であった。モータリゼーションは我々の生活を大きく変化させた。現在でいえば情報の流通が空間距離を越えて瞬時に世界に届くようになったように、モータリゼーションは我々自身の空間移動の自由度を革命的に変化させた。と同時に物流の在り方をも根底から変えてきた。

 現在でこそIT革命と叫ばれ、ITを制するものは世界を制するかのように喧伝されているが、情報のあとには「モノ」が来ることを忘れてはならない。ITの推進に伴って物流の量はかつてないほどに飛躍的に増大するものと考えられる。つまり、ITの普及とモータリゼーションの増大は表裏であると考えるべきである。

 日々増大する廃棄物の中でも、移動手段でもあり物流の手段でもあるモータリゼーションの増大に伴う廃タイヤの発生量は、年間一億三〇〇万本(二〇〇〇年度集計)、重量にすると一〇二万九〇〇〇トンにものぼる。二〇〇〇年度でそのうちの八八%がリサイクルされているとはいっても、一方では「野積みタイヤ」が年々増大し、環境破壊という社会問題に発展している。

 我々は一九七○年代のオイルショック以降、資源の少ない日本が自力で立つため、重油に替わるエネルギー源として、重油と同等の発熱量を持つタイヤ、それも、日々増大し、我々の生活からもはやとり上げることのできない自動車の廃タイヤを、重油に替わる燃料として再活用すべくボイラー・焼却炉の開発を行ってきた。

PDC(Perfect Direct Combustion=完全直接燃焼)方式の確立

タイヤと重油の組成を比較すると、形成元素、特に炭素が非常に似ていることが分かる。また発熱量もタイヤと重油は近似値である。(表1)

 つまり重油に近い発熱量が完璧に生かせるなら、タイヤは重油と同じエネルギー源としてきわめて高付加価値のある廃棄物といえる。そのために我々が採用したのが、芝浦工業大学の森政保教授の燃焼工学理論に基づいたPDC(Perfect Direct Combustion=完全直接燃焼)方式の焼却技術である。紙面の都合上詳細は割愛させていただくが、その概要は下段@ABが基本理論であり、それを基に実験開発の繰り返しの中から私の導きだしたものがCDEになる。 

 だが、理論が即応用実現という具合にはいかない。理論的にはそうなのだが、つくり上げてみると、さまざまな難問があった。最大の難点は黒煙がどうしても消えないこと。タイヤ三本くらいまでは理論どおりであったが、五本を超えると黒煙が発生、その解消だけで約十年の年月を要したことになる。細かいところではタイヤ内のピアノ線がとり出せなくなるとか、理論と実際の現場と違いを体で感じる十年であった。

 結局自らが缶体に入り込んで微調整を繰り返すことによって初めて現在のファイアバードが完成した。

水を燃やす?

 このように、タイヤは有効な燃料である。しかしNOx、SOx、ダイオキシン等の発生を抑えるには、タイヤの燃焼温度をさらに高める必要がある。

 一般的に燃焼とは、点火を契機に燃料と酸素が反応熱(炎)を発しながら、新たな生成物分子である二酸化炭素へと結合する現象である。これは一燃焼現象であり、誤解をおそれずにいうなら、人間が糖分を燃やして活力を得るのも、植物が太陽の光を得て二酸化炭素と水分を糖と酸素に分解し成長し続けるのも、一燃焼現象といえるかもしれない。換言すれば、燃焼とは酸化現象のことであり、酸化燃焼と還元燃焼の二通りがある。酸化燃焼は高温となり、還元現象は低温である。燃焼を酸化現象とすれば、酸素そのものが燃えるのではなく、酸素は燃焼を助ける強力な助燃材といえる。であるならば、我々の生活のもっとも身近にある優れた助燃材は、可燃ガスである水素と強力な助燃材の結合であるH2O、すなわち水自体であり、それを燃やすことができれば高温燃焼が可能であるということになる。

 空気中には酸素が約二一%弱しか存在せず、大部分が不燃性の窒素である。一方、水の酸素含有率は三三%強である。つまり、二一%弱の酸素含有率の空気でモノを燃やすよりも、三三%強酸素含有率の水で燃やすほうがよく燃えるということになる。もっとも、水そのものが常態で燃えるわけではない。そのためには水素と酸素が分離する高温状態をつくり出さなければならない。 

 そこで、燃焼に重要な要素をさらに次のように考えた。

一、触媒の存在――鉄は燃焼を助ける触媒作用があり、おおよそ二〇%着火温度を下げる。他の金属では一〇〇〇℃に二秒以上接触させる必要のある可燃ガスを、鉄であれば八〇〇℃に二秒以上接触させることで同じ条件を実現できる。

二、燃焼速度――発熱量と時間と温度は密接に関連があり、同じ発熱量のモノを短時間で燃焼させれば温度は高くなる。つまり酸化現象を促進することで温度を高くできる。

三、接触時間――一般に、完全燃焼させるためには、前述した通り二秒以上の接触時間が必要である。そうすると高熱を発する高分子系物質を燃やすと焼却炉内の温度が高くなることから、上昇気流は毎秒五メートルを超える。したがって最低でも焼却炉の高さが一〇メートル以上必要になる。さらに、炉内温度が下がったときには三秒以上の接触時間が必要とされるので、十五メートル以上の燃焼室の高さが必要になる。

 当社が開発した「ファイアバード」は、以上の条件を満たす特徴を持っている。

@ 燃焼室は円形である――炎の回転を容易にする。

A 炉壁は鉄製である(本体は総ステンレス製)――鉄を触媒作用とする。

B 強制送風装置を備えている――燃焼速度を早くして、急速に燃焼室内の温度を高温にする。

C 蒸気を燃焼室に送り込む――燃焼効率をよくして、つねに燃焼室内の温度を高温にする。

D 炉内の炎を回転させる――πの原理で接触時間を増大させる。たとえば一メートルの炉内を三回転させれば、3.14×1.0×3=9.42で滞留時間が長くなる。さらに灰をまき上げて触媒作用を促進する。

E 除塵は湿式である――急速冷却によってダイオキシンの発生を回避する。つまり300―400°Cの時間帯を極力少なくする。

 まとめると次のとおりである。

 この温水発生装置・焼却炉は、蒸気を燃焼室に噴霧することによって、気化潜熱を奪われない高温度・高濃度酸素の供給が可能となり、焼却物は完全燃焼して焼却炉内の温度が高温となる。しかも、炎を回転させて接触時間を十分に与えると同時に、回転力(遠心力)によって可燃ガスを炉壁に押しつけ、炉壁より供給するエアーおよび蒸気と可燃ガスがよく混合されるようにし、その上に二つの触媒を使って燃焼させる構造を持っているのである。(図1)

ダイオキシン濃度〇.〇〇〇一六ng/m3を実現

 当社はマレーシアに製造拠点を設け開発を行ってきたが、日本国内では一年前から、宮城県矢本町の田倉電気工業所の子会社である農業法人TRAファームに胡蝶蘭ハウス用の温水ボイラーとして納入し、日本国内での計測も昨年一一月に終えている。

 その結果は表2の通りである。ファイアバードPDC5000は、伝熱面積9.9m2で二トン未満の施設であり、もとより大気汚染防止法の対象となるばい煙発生施設からも除外されるものではあるが、この結果を見ると、廃棄物焼却炉ばい塵排出基準である0.25ng/m3も楽々とクリアしているのがわかる。表3のNOxについても、排出基準(廃棄物焼却炉二トン未満)が250―700ppmのところ140ppmであり、これも十分にクリアしている。

 TRAファームでは、南国産の胡蝶蘭を育成するハウスであるために、温室の熱源として本来重油ボイラーを考えていたが、設置にあたって、その最大の課題は、室温維持のための重油コストをいかに軽減するかであった。ハウスメーカーをとおして当社に打診があり、即納入の運びになったが、幸いなことにTRAファームのオーナーは制御盤の設計・製造、プラント電気設備の専門会社のオーナーでもあった。さらに隣接地が松島基地という広大なエリアで、その端にファームがあることから、新たな開発がさらに進むことになるのだが、ここでは触れないでおく。

 重油に替わる熱源としてタイヤが優れていることは、先に述べたとおりである。しかしここで別な問題が浮上した。ボイラーの条件のひとつに、「有価物」を燃料とすることと定められている。このことをめぐって、産業廃棄物対策課とのやりとりが生じたのである。すなわち「廃」タイヤは、「産業廃棄物」であるから「廃棄物法」に則り、「廃棄物」であるから燃料としての「有価物」とは認められない、ということであった。現在日本各地で、「野積みタイヤ」が環境破壊という社会問題になっているのを見るたびに、私は「もったいない」と嘆息している。ここにダイオキシンを限りなく”0“にできる技術があるのに、妙なところで普及できないものである。

 しかし宮城県で検討の結果、「循環資源法」の『熱回収』できるものは熱回収すべきであるという一項に則り、基準値をクリアするのなら「有価物」として認める、との判断にいたった。結果、宮城県は、「循環資源法」の最先進県になったのではないだろうか。このことにより、はじめてハウスの維持費大幅削減が可能になった(表4参照)。

技術でつくる環境にやさしいシステム

 廃タイヤを燃やし、焼却熱で温水を供給することにより、限りなくエネルギーコストを“0”円に近づける。マレーシアでは昨年、農業に対して一〇年間無税策を打ち出した。また韓国でも、農業を国策と位置づけ、農業に対する支援を協力に推進している。日本でも、ユニクロが農産物を中国で展開することが発表された。農業をとり巻く情勢は激烈なものがある。

 一方、従来の日本の農業はどうであろうか。後継者問題は深刻を過ぎるレベルにまで達しており、また、一方で有機認証制度の導入も行われることになり「健康」な農産物の生産を余儀なくされている。

 このような状況を打破するために、現在日本の農業は、環境を完全にコントロールし、「健康」な農産物を「安定供給」するシステムとして、農業エキスパートシステムともいうべき栽培ソフト搭載のハイテクハウスの開発が盛んになってきている。

 現在、NPO法人WINを中心とした「情報家電並に世界に冠たる農作物を生産するシステムの開発」プロジェクトが進行している。世界に冠たるウェアラブル端末の一大メッカである東京大学工学部と、WINの「知」を結集したこのプロジェクトは、オランダ型ハウスを震撼させるものであると確信しているが、問題はハイテクハウスを維持する冷暖房に要するエネルギーコストである。IT農業の代名詞ともいうべきハイテクハウスは、当然従来型ハウスの何倍ものコストになるはずである。

 くり返しになるが、ここで運営コストを削減するために、冷暖房のエネルギーコストをいかに安く、もっといえば限りなく無料に、さらにはタイヤを有償で燃やしながら冷暖房できればよいことになる。

 技術はここにある。問題は制度である。循環資源である廃タイヤを有料で「処理」しながら温水と冷房を行い、さらにここで発生する蒸気で発電を行えれば、これほど環境にやさしい理想的な仕組みはない。

 ハイテクハウスとファイアバードが一体となったシステムの開発を期待した

い。

(P36表組み)

表1 燃料組成と発熱量 *タイヤの発熱量は重油とほぼ同じです。

種類 成分 発熱量

炭素 水素 酸素 イオウ 窒素 kcal/kg

原油 85.51 12.59 0.35 1.43 0.12 10,060

軽油 85.24 13.34 0.30 0.86 0.21 9,720

重油 85.24 11.80 - 2.10 - 9,320

普通タイヤ 84.72 6.56 1.82 1.17 0.16 9,320

無煙炭 62.25 4.74 11.84 2.24 1.26 5,930

れき青 79.61 1.51 1.31 0.42 0.43 6,810

(P37写真キャプション)

1.本体

2.水洗除塵器

3.煙突

4.測定口

5.点検口

6.投入口

7.灰出し口

8.観察口

9.水室

10.空気室

11.蒸気管

12.スプレーノズル

13.投入機

14.高圧送風機

15.送風機

16.送風機

17.給水口

18.温水出口

19.除塵器給水口

20.除塵器出水口

21.シャワー水給水口

22.シャワー水出水口

23.貯湯タンク

24.排煙経路

25.簡易ホッパー

P.給水タンク

図1 ファイアバード構造図

ファイアバードPD C5000写真

(P38表組み)

表2 ファイアバードPDC5000ダイオキシン類及びコプラナーPCB計測結果

物質名 2トン未満廃棄物焼却炉基準値 ファイアバード値

排ガス(SOx) 一般排出基準 0.1ng/m3 0.0019ng/m3

ばい塵 一般排出基準 3ng/m3 0.00016ng/m3

焼却灰 一般排出基準 3ng/m3 0.00013ng/m3

表3 大気汚染防止法に基づく排出基準(ボイラー)

物質名 基準値 ファイアバード値

硫酸硫黄物(SOx) 許容排出量(m3N/h=K×10-4×He2)=1.6m3N/h 0.48m3N/h

ばい塵 一般排出基準:O212%換算値0.04~0.7gm3N 0.35g/m3N

窒素化合物(NOx) 新設:O212%換算値:180ppm 140ppm

ダイオキシン類 新設(2t/h未満):5ng/m3 0.0019ng/m3

塩化水素濃度 一般排出基準:O212%換算値:430mg/m3N 3mg/m3未満

参考 NOx=排ガス量 10,000m3N/h未満は180ppm以下(ファイアバードPDC5000は8,200m3N/h)

10,000m3N/h以上は150ppm以下

100,000m3N/h未満は130ppm以下

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