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世界の最先端を走る、環境情報システム ― 東京大学の開発している野生動物探索用端末











(P82-83)

NI report

世界の最先端を走る、

環境情報システム

東京大学の開発している野生動物探索用端末

取材:編集部 

現在、人々の生活は、あらゆる面で人工物の恩恵のもとにある。

いいかえれば人間を含む生態および自然環境の中に、

さまざまな人工物が存在し、私たちは、

その総体である人工環境に生存の基盤を持っているといえるだろう。

ところが人々は、時として総体である人工環境に目を向けず、

ひとつひとつの人工物にばかりを注視するあまり、

人工物を包んでいる生態や自然環境を

ないがしろにしてきてしまったのではないだろうか。

今回取材した東京大学新領域創成科学研究科(板生研究室)では、

人工物と人間や自然との関係を科学的に究明しようと研究をすすめている。

編集部では、その研究の中で特にマイクロ情報端末が、

望まれる人工環境にとってどのような役割を果たすのかをレポートした。

 本誌でも紹介した、都市部でゴミを荒らすカラスの生態調査システムの研究は、今回取材した研究室のひとつの成果としてマスコミ等でも話題になったが、その結果、これまでわからなかった東京のカラスの生態が明らかになったことは記憶に新しい。(図A)

 この成果を通過点として、現在、東京大学の環境情報マイクロシステム研究は、自然環境からより高度な環境情報の収集を可能とするネイチャーインタフェイサの開発を手がけている。それが“野生動物用位置探索端末”だ。

 カラスの生態調査システムでは、PHSの位置情報サービスを利用し都市型カラスの移動経路を追跡したが、今回の野生動物用位置探索システムでは、位置通信にGPSを用いて広範囲のエリアをカバーし、データ通信としてはPHSを利用し、高い信頼性と低コストをめざしているという。また、メモリを搭載しているので、通信不能のときはデータを記憶し通信可能域でこれを送出する機能をもたせている。(図B、図C)  

 この端末の大きな特徴として、特筆すべきは、野生動物の生態を考慮し、端末の電力消費を極力減らすパワーマネジメントにある。振動加速度を常時モニタリングし、探索対象となる動物の運動レベルが低い状態のとき、たとえば鳥であれば飛翔しているときや移動中であるときなどがその状態であるが、このようなときは、メインCPUとGPSがスリープモードあるいはオフになるように設計されている。つまり振動センサを用いたパワーマネジメントによる低消費電力化を可能にした点は、世界の最先端を走る日本の携帯端末の「小さく、軽く、いつでも、どこでも、情報が収集でき発信でき」、同時に「省電力」化の技術が、野生動物に対する負荷を考えた上で応用されたものであると想像できる。極論をいえば「重量ゼロ、寿命は無限大」の端末を開発することが、環境情報マイクロマシンの理想形だろうが――。(表D) ここで今後対象として想定している野生動物のいくつかをピックアップし、その応用例を紹介しよう。

 ひとつがタヌキだ。多摩森林科学園のタヌキに端末を装着し実装実験を近々行う。実装実験として有用なのは、タヌキの生態に関する研究の成果が出ており、タヌキの特性が情報として把握されているため、実際のタヌキの行動と収集データの関係が見えやすい点にある。(図E)

 もうひとつ想定されているのが、無人島におけるアホウドリの追跡調査だ。この追跡調査は、無人島(絶海の孤島)にPCとPHSの親機を設置し、アホウドリには端末を装着させ、巣に帰ったときに移動データをPHSのトランシーバモードでPCに転送するというもの。(図F)

 こういった具体的な環境情報の収集と分析の結果、左に示した地球規模の「環境情報統合N次元マップ」に発展して行くのだろうが(図G)、その詳細は今後紹介するとして、今回取材した東京大学の環境マイクロシステム研究は、冒頭にも述べたが、携帯端末でありながらコンピュータのミニチュアという考え方をはるかに超えている。簡単にいえば、人工物と人間、人間と自然環境、人工物と自然環境との関係がどういった状態であれば”共生“と呼ぶことができるかという問いかけの、ひとつの答を導き出してくれる可能性を予見させるからだ。その可能性が、「本端末の応用範囲」という図に表されている。(図H)

(P82図キャプション)

図A カラスの生態調査システム

図B

端末の内部構造

GPS  PHS

図C GPSとPHSを利用した野生動物探査システム

表D P-doco mini・P-doco との比較

K端末 P-doco mini P-doco

重量 22g 27g 43g

動作時間(寿命) 485時間 285時間(※1) 600時間

外形寸法 62.6(H)×38.6(W) 51 (H)×34.2(W) 69.1 (H)×41.4(W)

(単位:mm) ×13.5(D) ×16.3(D) ×17.4(D)

動作時間/重量(※2) 22.0 10.6 14.0

(※1)カタログ値より

(※2)独自に設定した指標。

値が大きいほど端末の単位重量あたりのパフォーマンスが 高いことを示す

図E タヌキに特化したパワーマネージメントの実装

+1Gを加えたときの波形   −1Gを加えたときの波形

・ 先行研究により対象の特性は把握済み(動作と加速度データの関係)

・ 農学部の協力により行動特性も把握

・ 回路図からの設計のため仕様を完全に把握

・ 設計時点でパワーマネージメントを考慮

(CPUのスリープモード割込み端子への結線)

          ↓

対象(タヌキ)の動作に応じた最適な動作を設定可能

(P83図キャプション)

図F 考え得る応用の例 無人島におけるアホウドリ追跡

・ 無人島(絶海の孤島)にPCとPHSの親機を設置

・ アホウドリに本端末を装着

巣に帰ったときに移動データをPHSのトランシーバモードでPCに転送

→次の寄港時にデータをまとめて回収

図G

環境情報統合N次元マップ――GISと環境情報の統合(例)

昆虫の生息分布と自然環境

自立型監視カメラシステム「ひまわり」

・ 太陽光による自立エネルギー供給

・ 振動/音響センサによる監視対象(大型トラック)の検出

・ ローカルな画像処理機能による監視対象の追跡

図H 本端末の応用範囲

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