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NI Book Review




(P84-85)

NI

book review

未来ねっと技術シリーズ15

環境・エネルギー

笠原正昭=監修

桑野博喜、山田一郎=編著

オーム社/定価2000円

 インターネットとモバイルを機軸にした情報流通技術。私たちの生活ばかりでなく、ビジネスシーンにも大きな影響を与え、その様式だけでなく社会構造も変えようとしている。一方で、九七年の温暖化防止京都会議を契機に、環境に対する意識はかつてないほどの高まりを見せている。情報流通技術は技術の面から、環境問題は市民意識の面からの進展が大きな要因であるが、この二つには大きな関連がある。

 情報流通技術により、無駄なエネルギー消費、資源消費が抑制できる可能性があると考えられる。たとえば、人の移動、物の移動を最小限に抑えることができ、さらにインターネットなどを用いた環境情報の流通により、人々の思考が環境によい行動をするようになってくる可能性がある。つまり、情報流通技術は、環境問題という困難な課題に対して解決を図る有力なアプローチの一つである可能性が高いと思われる。

 本書は、NTTグループ内の環境、情報流通技術部門のキーマンたちが執筆しており、同グループで行っている各種施策を事例としてとり上げながら、環境問題の本質についてウェアラブルの観点からわかりやすく解説している。

 一章ではオゾン層破壊や地球温暖化、二章ではエネルギー問題の現状と将来展望、三章では鉱物資源、水資源、土壌資源、森林資源など天然資源の枯渇問題、四章では廃棄物問題全般、さらにPCB、ダイオキシン、環境ホルモンなどの有害廃棄物と不法投棄問題など、五章では情報流通技術の環境問題への適用として各種センシング技術や分析技術、環境負荷を減らすための情報流通媒体の電子化など、六章では国連を中心とした環境問題へのとり組み、最後の七章にNTTグループの環境基本戦略について概略を述べている。

 本書では、前述の環境問題が生じる背景にまで説明が加えられているため、できるだけ原点に立ち返ることによって問題点と解決策が理解しやすいように考慮されているといえるだろう。

 環境問題は、人類にとって今世紀の最大の課題になるだろうとみられている。個々人の飽くなき欲望と人口増加、発展途上国の工業化の進展などが複雑にからみあい、また、先進国同士のグローバルな競争などが環境問題を一層困難にしている。

 しかし、私たちはこのような二一世紀最大の課題に対し、複雑な糸のもつれを解きほぐし、次世代に「負の遺産」を残さないように、この地球を引き継ぐ義務と責任がある。そのためには、現在までに何が起きていてこれからどうすればいいのか、本書は何か具体的にアクションを起こしてみようと思わせてくれるだろう。情報流通技術と環境問題、興味のある人も興味のない人も、一度手にとって目を通してほしい一冊。

活断層大地震に備える

鈴木康弘=著

筑摩書房/定価680円

 一口に地震学者といってもさまざまで、震源の物理モデルの研究、地震波が地表にもたらす強震動の研究、日本列島のどこにどのような地震がおこってきたのかの研究など、いろいろな専門をもつ研究者が活躍している。活断層は、長い年月の間に活動を繰り返し、その累積的な隆起によって山脈を、沈降によって湖や低地をつくる。地球の起伏にメリハリをつけ、地球の造形美ともいえる。このような観点から、活断層は地形学の伝統的な研究対象になっていて、それを学んできた著者による力作がこの一冊である。

 密度の高い観測網が陸上に展開されていて現在すでに地震予知のターゲットとなっているのは、東南地震である。有史以来の地震の繰り返しがほぼ解明され、つぎの発生時期が接近していると考えられる海溝沿いの巨大地震で、震源域が内陸におよんでいて、観測がしやすいことから,東海地震発生が予知のターゲットとされた。それとは異なり同じ場所で同じような地震が繰り返す頻度が千年、万年以上に一回というスケールとなるのが、兵庫県南部地震のような活断層に関わる地震だ。活断層の性質から予測できる地震とその被害の特徴が、比較的平易な言葉で、しかし詳細に説明されており、好感が持てる。

 著者はいう。「地表のあらゆるものが切断された。道路も家屋も水田もみな同様に大きな右横ずれを被った。大地がずれる力を止め得るような強固な構造物はあり得ない。しかし注目すべき事実は、断層をぎりぎり避けて建てられていた家屋は倒壊を免れているということである」。一九九五年兵庫県南部地震の際の淡路島の被害には、上のような現象がみられた。一方、断層による明瞭なずれが地表では確認されなかった神戸I阪神間では、震災の帯と呼ばれる大きな被害が広がった。このような地震被害の特徴はいままでに知られていなかったわけではないが、戦後最大の自然災害となった阪神・淡路大震災によって、万人の知るところとなり、活断層研究に基づく地震発生予測に政府の研究費が大規模に投入されるようになった。本書はその成果や課題を明らかにするものでもある。

 本書は、自然のメカニズムから防災の知恵まで、活断層と暮らす方法の提案をめざしたものでもある。それはまず、活断層問題についての本質を掲げ、直下地震と活断層についてのメカニズムを説明から始める。そもそも地震はどうして起きるのか。予知はできるようになるのか。地震が起きやすいのはどこか。活断層を専門とする著者の結論は、日本列島で繰り返し起きてきた地震がいつまた起きるかは予知できないが、「ここからあそこまでの線に沿って地震が起きる確率が高い」とはいうことができるということだ。

 ではそのようなことがわかったときに、どうすればよいのだろう?

 本文中に、「阪神・淡路大震災以降、活断層と暮らすという表現をよく耳にする。そもそもこの表現は、病気とともに暮らすという表現に似ている。戦うのではなく、うまくつきあいながら生きていくというニュアンスに近い」というくだりがある。まさに私たちの置かれている状況を述べており、いい得て妙だと感じた。さらにいえば、WINの会のセンサー技術からも変わっていく可能性を秘めているのだと思う。

ナノテクノロジーの

「夢」と「いま」

森谷正規=著

文春新書/定価690円

 IT、バイオテクノロジーと並んでもっとも有望な科学技術領域として、にわかに浮上してきたナノテクノロジー。ナノは、一メートルの一○億分の一の長さをあらわす単位。この極微の世界を対象にする技術がナノテクノロジーだが、本書では情報・医療・環境などの分野で、革命的な成果をもたらすこの「夢の技術」について、米国と日本との国家戦略を通して詳しく紹介している。

 たとえば、ナノテクノロジーの研究・開発において、日本はスタートダッシュに成功するものの、米国は二○○○年のクリントン前大統領時に、年間五○○億円もの研究開発資金を投じる「NNI(国家ナノテクノロジー戦略)」により、猛烈な追い上げを開始しているとの危機感を述べている。著者が今世紀の日本の命運がナノテクノロジーにかかっていると主張するのも、この部分が大きいものと思われる。

 著者によると、ナノテクノロジー各技術はおおむね次の三つに分けられるという。一つはまったくの革新技術で、カーボンナノチューブのトランジスタ、分子素子、DNAコンピュータなど開発のごく初期のもの。二つ目は、次世代半導体、ゲノム創薬、DNAチップなど今後一○年以内に実現可能なもの。三つ目が高性能フィルムや高性能磁石などのナノマテリアルや走査型プローブ顕微鏡による観察技術の向上など、間もなく実用段階に入るもの。こうした技術を掲げたうえで、「夢の多くが実現してほしい」と結んでいる。

 ところで、ナノテクノロジーでもっとも技術開発が広く進んでいて、実用化の時期も見えてきているのは、カーボンナノチューブだが、その応用範囲は情報、環境など幅広い。

 このカーボンナノチューブを発見したのは、NECの飯島澄男氏だが、つい最近、うれしいニュースが飛び込んできた。米国フランクリン協会から二○○二年のベンジャミンフランクリンメダル物理学賞が飯島氏に授与されることが決まったという。日本人では有馬朗人、外村彰、江崎玲於奈の各氏に続く四人目で、過去の受賞者はノーベル物理学賞受賞者も名を連ねており、事実上のノーベル賞候補入りということになるだろう。

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