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包括的環境モニタリングの構築に向けて -- 御幡 徳宏




(P020-024)

特集 包括的環境モニタリング

包括的環境モニタリングシステムの

構築に向けて

御幡徳宏

株式会社NTTデータ 公共ビジネス事業本部

(おばた・のりひろ)

―NTTデータ 公共ビジネス事業本部 環境ビジネス事業部 環境ビジネス担当。1985年NTT入社。1988年NTTデータに転籍。入社以来、中央省庁での大規模システムの設計・開発、地方自治体等公共分野のシステム提案活動等に従事。現在、環境分野におけるITソリューションビジネスの企画・提案活動を展開中。

包括的環境モニタリングシステムが

求められる理由

 現在、私たちが直面している環境問題は、かつての公害問題と多くの点で性質を異にしています。公害問題においては、工場や自動車など特定の発生源から排出される有害物質等により、周辺地域の住民や自然環境に直接的・集中的に影響が生じました。このため多くの場合、被害が目に見える形で現れ、原因との関係も比較的容易に特定することができました。

 これに対し近年の環境問題は、多くの発生源から排出されるさまざまな原因物質による間接的、あるいは複合的な影響が、当該地域だけでなく地理的、時間的に離れたところにまでおよぶという特性をもっています。

 たとえば地球温暖化の場合、原因となる温室効果ガスが広範な発生源から排出され、長期にわたる蓄積的な影響により、地球環境全体に重大な問題を引き起こすと見られています。また環境ホルモンと呼ばれる物質は、ごく微量でも生物の生殖系、神経系、免疫系等に障害を引き起こすおそれがあるとされており、その影響は将来の世代にもおよぶ可能性があります。

 このように、多種多様かつ直接実感することが難しい環境リスクに適切に対応していくためには、環境に影響をもたらす要素や相互関係に関する情報を包括的に把握し、行政施策や各主体の活動に反映させていくことが必要であり、そのための新たな環境モニタリングシステムの構築が求められています。

情報を共有し、

新たなニーズへ対応する

 環境問題の改善に向けては、従来の行政主導型の施策の推進だけでなく、市民、企業、行政の協働による取り組みが重要でしょう。また行政区域を越え、地理的条件や自然生態系をベースとした広域的な対応も重視されてきています。このため、新たな環境モニタリングシステムの構築においては、情報の収集、管理、分析、公開のプロセスを関係者が共有し、相互の連携・協力を強化していくことが必要です。

 多様化するモニタリング対象への対応も重要な課題です。NOx、SOx、SPM(浮遊粒子状物質)等の大気汚染物質、pH、BOD、CODといった水質関連指標に加え、ダイオキシンや環境ホルモン等の有害物質、温室効果ガス、エネルギー消費量、森林や河川・湖沼等の自然生態系の変化、廃棄物の不法投棄の状況など、広範多岐にわたる環境要素を的確に把握することが求められています。これらのなかには、極めて低い濃度の物質量の測定が求められるものや、問題の発生地域が明らかとなっていないようなケースもあり、それぞれの事象に応じたモニタリング手法が必要となってきます。

 これに加え、測定方法やデータの提供等に関し、新たなニーズも生じてきています。環境保全の推進にあたっては、問題の早期発見による効果的な対策の実施が重要であり、モニタリングにより観測されたデータを、いち早く関係者にフィードバックすることが求められます。また、決められた場所における定期的な観測だけでなく、必要に応じさまざまな場所・時間において測定をおこない、そのデータを即時に処理するといったことも必要でしょう。さらに、データ等のもつ意味を、専門的な知識をもたない人にもわかりやすく伝えるため、情報提供方法等における工夫も必要となってきます。たとえば、測定結果を数値として公表するだけでなく、図表に示すなど、情報の受け手に応じた表示や解説をおこなうことが重要です

進化するモニタリング技術

 近年のITの進歩には目を見張るものがあり、これらの技術は、環境情報の共有やモニタリング対象の多様化、ニーズの高度化といった要請に対し、的確なツールを提供することを可能にしつつあります。

 たとえば最新の衛星技術を利用することにより、白黒画像の場合、地表から高さ一メートル、カラー画像で四メートル単位という詳細な画像を撮影することができ、森林や河川などの状況を広範囲かつ正確に把握することが可能です。

 GIS(地理情報システム)技術も、環境問題への対応において有効に活用することができます。環境関連のデータを地図上に表示し、その影響等についてシミュレーションをおこなうことにより、現状の的確な把握や将来の予測が可能となります。さらに、複数のデータを地図上に重ね合わせ相関関係を分析する、といったアプローチも期待されています。

 また、GPS(全地球測位システム)機能を搭載したPDA(携帯情報端末)を活用することにより、対象地域に関するリアルタイムの情報把握が実現し、携帯電話等を通じてこれらをタイムリーに送受信することが可能となります。さらに、携帯型センサや計測器の開発に伴い、さまざまな場所において環境データの測定をおこなうことができるようになってきています。

 このように、新たなニーズに対応した環境モニタリングの実現において、ITは極めて重要な役割を果たすと考えられ、対象分野や地域の状況に応じてこれらを組み合わせ、効果的なシステムを構築することで、モニタリングのレベルを大きく向上させることができるでしょう。

包括的環境モニタリングシステムの

構成と特徴

 包括的環境モニタリングシステムでは、定点観測、経路観測、移動観測、衛星観測などのシステムを活用し、これらを効果的に組み合わせることにより環境の状況を多面的に把握します。情報収集にあたっては、行政機関等による観測だけでなく、市民やNPO・NGOなどの参加によるきめ細かな対応にも期待が寄せられています。

 把握されたデータは、国や自治体の環境情報センター(仮称)において集中的に管理されます。そして、解析・シミュレーション等をおこなったうえで、迅速に関係者にフィードバックされます。こうしたプロセスを通じて、問題に対する早期の対策実施に結びつけることができます。また、一般市民への情報公開や環境教育への活用を通じて、環境意識の高揚、活動への積極的な参画が促進されることが期待されます。

 システムは、―定点観測等による法律・条例に定められた基準データ、―簡易センサー等による簡易計測データ、―市民・NPO等による草の根測定値、の三階層のデータを統合する形で構築されます。一方、情報提供においても、専門家向けの精緻な情報と一般市民向けの平易な情報といったように、対象に応じた形で情報が提供される仕組みになります。さらに大気・水質、自然環境、廃棄物など複数の分野に対し、リモートセンシング、PDA、GISなどのツールを横断的に活用し、無駄のない効率的なモニタリングを進めていきます。

いかにシステムを運用するか

 システムの運用にあたっては、まず「簡易モニタリング」により地域の環境変化全般について監視をおこない、この結果、環境悪化等の変化が確認された場所について「詳細モニタリング」を実施します。これらのプロセスにおいては、モバイルネットワーク、リモートセンシング、簡易/移動測定などのツールが適用されます。そして、収集されたデータの分析結果に基づき適切な対策を講じ、その後の状況を「常時・定期的モニタリング」によりフォローするといった流れになります。

 たとえば、モバイルネットワークによる情報収集とは、山間部や河川敷などの環境情報を市民等が把握し、携帯電話を利用してこれをGIS上に書き込むというものです。その結果、不法投棄が発見された場所について、調査マニュアルに沿った調査表などをインストールしたPDA、モバイルPC等を持って専門家が詳細調査に出向く、といった形態が考えられます。

 リモートセンシングによる情報収集に関しては、中分解能/レーダー系センサーを搭載した衛星により、山間部などについて広域・時系列の環境を把握、変化が確認された地域を対象に、高分解能/ハイパースペクトルセンサを搭載した航空機や衛星による撮影をおこない、現場の詳細な状況を把握し必要な対策を講じる、というプロセスが効果的と思われます。

 簡易/移動測定による情報収集においては、地下水等に含まれる重金属等を簡易分析できるキットを使って市民が測定をおこない、その情報を携帯電話やPDAを通じてGIS上に表示。異常が発見された箇所に移動観測車を派遣し詳細な測定をおこない、具体的な対策に結びつけるという方法が想定されます。

システムの適用領域と

導入のメリット

 包括的環境モニタリングシステムは、水質、大気、自然環境、廃棄物等、さまざまな分野に適用することが可能です。具体的には、水質汚染の防止・汚染源の特定、自動車による大気汚染の防止、ダイオキシン類の発生源確認・発生抑制、希少動植物の保護、森林・農地・都市部の環境管理、廃棄物の不法投棄対策などが考えられます。

 システムを導入することにより、従来に比べ早期の問題発見と効果的な対策の実施が可能となるでしょう。環境問題への対応においては、実態の把握と対策実施の遅延により環境への影響や修復に伴うコストが増大していくケースが多く、環境の変化やその原因の特定をいち早くおこなうことが、極めて重要なポイントといえます。

 また本システムにおいては、環境情報収集の段階から市民が参加する仕組みを取り入れることで、環境意識の高揚が図られ、自分たちの住むまちの環境を自らよくしていこうというインセンティブがはたらきます。

 システムの構築・運用においては、一般に普及している携帯電話やインターネットなどのツールを利用することで、導入コストの低減を図ることができます。また、たとえば衛星での水質監視、植生状況把握、不法投棄監視など、一つのモニタリングツールを分野横断的に使用しモニタリングシステムを構築することで、効率的な運用が可能となります。

 このように、包括的環境モニタリングシステムは多くのメリットを有しており、関係者の協働による効果的な環境保全対策を推進するうえで、きわめて有効なツールとして活用することが期待されるのです。

「環境モニタリング・コンソーシアム」発足

 環境モニタリングの重要性の高まりを踏まえ、株式会社NTTデータをはじめとし、株式会社NTTドコモ、株式会社NTTドコモ関西、国際航業株式会社、東亜ディーケーケー株式会社、および株式会社NTTデータ経営研究所の六社で、二○○一年九月に「環境モニタリング・コンソーシアム」を発足させました。

 本コンソーシアムは、携帯電話、人工衛星をはじめとする最新のITと、高性能センサー、携帯型計測器などの最新のモニタリング技術を結集し、多様な環境問題の解決に向け包括的な情報収集をおこなうとともに、これを有効に活用し対策に結びつける環境モニタリングの実現を目的としています。

 コンソーシアムの参加企業は、それぞれの分野において先進的な技術やノウハウを有しており、これらを融合させることによって、さまざまな環境問題に対応できる新たな環境モニタリングシステムの可能性を追求します。このなかで、NTTデータは高分解能衛星画像をはじめ各種衛星画像供給サービス(Geoコンテンツサービス)、衛星画像解析技術、GIS技術、システムインテグレーション技術などを担っており、各社の得意技術を活用し効率的なシステムの構築を進めていきたいと考えております。

 本システムにおいては、たんにモニタリングを通じてデータを収集するだけでなく、GIS技術、シミュレーション技術等を駆使することにより、市民、企業、行政それぞれの環境管理、環境対策等へのタイムリーなフィードバックの実現を目指すものです。さらに、NPO法人WINにおいて東京大学ネイチャーインタフェイスラボラトリとともに、包括的環境モニタリングシステムGを立ち上げ、研究を加速しております。

 こうした包括的環境モニタリングの手法は、広範な分野において、政府、地方公共団体等の環境管理および政策立案のためのインフラとして、大いに活用できるものであると考えています。

(021写真キャプション)

図1. 今こそ求められる「包括的環境モニタリングシステム」

Copyright ゥNTT DATA CORPORATION 2002 All rights reserved

(022写真キャプション)

図2 包括的環境モニタリングシステムのイメージ

(023写真キャプション)

図3 包括的環境モニタリングによる対策フロー

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