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[ケーススタディ1] 包括的環境モニタリングに期待すること -- 岡田 俊郎


(P025-027)

特集 包括的環境モニタリング

包括的環境モニタリングシステムに

期待すること

岡田俊郎

千葉県企画部次長

(おかだ・としろう)

千葉県企画部次長。1999年7月に通産省から千葉県に出向し、企画部参事に着任、2000年4月より現職。東京大学柏キャンパスと地域との連携、ベンチャービジネス・中小企業支援、幕張新都心、かずさアカデミアパークの活性化方策などに取り組んでいる。

 現在、地球環境への社会的な関心が非常に高まっており、従来の事業採択のフレームワーク、あるいは事業実施のあり方に対する疑問が噴出してきています。そうしたなか、公共事業の見直しということが盛んにいわれていますが、われわれ行政の立場としては、それにどう対応していくのかが大きな課題といえます。また、さまざまな研究活動が進むにつれ、情報量が急激に増大しつつあります。これらをどう扱っていくのかということも、非常に大きな課題です。

 とくに千葉県では、産業廃棄物の不法投棄に対する処置や、三番瀬の再生といった喫緊の問題を抱えております。なかでも三番瀬の再生については、すでにNPOや市民団体による自発・能動的な活動が開始されており、行政としては、こうした活動をも視野に入れた取り組みを始めているところです。

市民参加と情報開示を徹底する

「千葉モデル」 

 現在、千葉県では昨年四月に就任した堂本暁子知事のもと、従来の行政スタイルを変革しようと奮闘しているところです。これまで「依らむべし、知らしむべからず」という、明らかに中央集権的なスタイルでやってきたわけですが、三番瀬の取り組みにおいては、「千葉モデル」を合言葉に、施策の決定プロセスの段階から住民参加と情報開示を貫徹させ、地方分権の新しいかたちを示していきたいと考えております。三番瀬再生検討組織を、通称「円卓会議」と呼んでおりますが、会長を務める岡島成行氏も、「市民が参加する新しい形の施策プロセスを模索していきたい」と発言しておられます。まさに、われわれ行政サイドは、それをどうコーディネイトしていけるか、手腕が問われているのです。

 なかでも一番の課題が、情報開示です。たとえば、ダム建設一つとってみても、我々の飲んでいる水はいったいどこから来ているのか、カネの流れはどうなっているのか、ということは、これまであまり情報開示がなされてきませんでした。しかし今後は、何十年もの将来にわたって財政に大きく負担がかかってくるような事業に対しては、やはり情報開示をきちんとおこなう必要があるでしょう。「千葉モデル」では、この情報開示と住民参加を徹底しておこなっていきたいと考えています。

三番瀬埋め立て白紙撤回までの動き

 ここで、三番瀬に対する千葉県の取り組みについてお話しましょう。その取り組みには、すでに四○年もの歴史があります。昭和三六年から、三番瀬を埋め立てて産業用地として確保する、あるいは下水処理場を建設するといったプロジェクトが検討され、さらに四二年には港湾施設を整備するという方向で検討がなされてきました。昭和五○年代に入ってからは、これらの案を具体化する方向で進んでおりましたが、平成になると、環境を重視すべきだという動きが出てきて、平成七年には「環境会議」が開催される運びとなりました。ここへきて、埋め立てをするのであれば、さまざまな調査が必要ではないか、といった議論がなされるようになり、最終的には事業をやるか/やらないかといった検討が昨年春まで続けられたわけです。つまり、プロジェクト立案から四○年にわたって、いっさい開発はなされてこなったのが現状です。

 堂本知事就任後、市民シンポジウムというかたちで昨年夏に二回にわたって開催された「三番瀬フォーラム」の結果を踏まえて、埋め立ての白紙撤回の方向が打ち出されました。一方で、埋め立てをしないのであれば、三番瀬をいかに再生していくのか、という方向へと議論は展開してまいります。こうして、今年一月二八日に、第一回の「円卓会議」が開かれることになったのです。

 これまで、こういった委員会のメンバーは、どちらかといえば専門家に偏りがちでしたが、円卓会議の場合、構成メンバーは、学識経験者九名のほかに、NGOなどの環境保護団体、漁協関係者、地元住民、地元の経済界・産業界の代表といった方々です。これに、国、県、市がオブザーバーとして参加します。開発から一転して保護・再生へという歴史もさることながら、そのプロセスにおいても、本邦初ともいうべきスタイルをとっているのが、三番瀬にかかわる取り組みの特徴といえるでしょう。

自然のダイナミズムを探る

環境モニタリングの役割

 さて、三番瀬の再生にあたって、まず取り組まなければならないのが各種調査です。調査にあたっては、最新の科学技術に支えられつつ情報を収集する必要があります。海生生物・鳥類などの生息状況、コンクリート直立護岸の影響、赤潮・青潮発生原因の究明などについて、包括的環境モニタリングシステムをも活用しながら調査をしていきたいと考えています。

 そのなかで、調査対象として一番大きなものが、赤潮・青潮に関するものです。三番瀬は、ほとんどが浅瀬の一六平方キロメートルほどのエリアなのですが、どうやら東京湾の赤潮・青潮発生の一因もまた、この海域にあることがわかっています。というのも、かつて湾岸の埋め立てをした際に、このエリアの海底から砂を掘り出して使用したという経緯があり、じつは、その際にできた海底の巨大な穴が問題だといわれています。この穴には、植物性プランクトンの残骸のようなものが堆積し、これらの有機物が分解される際に硫化水素が発生したり、ほとんど酸素の含まれていない水がたまったりすることが青潮の原因となっているのです。

 さらに、これまでおこなわれてきた周辺地域の埋め立てプロジェクトによって陸域と海域が不自然なかたちで切れていること、洪水時に江戸川放水路から大量の真水が流れてくることなども、環境に悪影響を与えているようです。

 近年、これらの要因により、漁業資源が相当減少してきているといわれています。一方で、三番瀬には、アサリなどの貝類をはじめ、ゴカイやプランクトン、イシガレイやハゼの稚魚、カモやシギ、チドリ、コアジサシといった鳥類など、じつに多種多様な生物が生息しており、これらの生物の営みによる自然浄化力を備えているのも事実です。

 こうした三番瀬の生物的なダイナミズムを守るためには、このエリアだけでなく、東京湾全体におよぶような海水域のシミュレーションも必要でしょうし、各種生物の情報をきちんと入手することも必要でしょう。 

 また、コンクリートの直立護岸を解消し干潟を再生させる、あるいは、葦原をつくって陸と海を自然なかたちでつないでいく、市民による野鳥観察などの環境教育の場として利用していく、といった三番瀬の将来に向けて取り組むべき課題も明らかになってきています。これらを実現するためにも、包括的環境モニタリングシステムに寄せる期待には大変大きなものがあるといえます。 (談)

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