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[ケーススタディ2] 市民が活用する環境情報提供を目指して -- 本庄 克彦





(P028-031)

特集 包括的環境モニタリング

市民が活用する

環境情報提供をめざして

本庄克彦

NTT生活環境研究所 環境情報流通研究部

(ほんじょう・かつひこ)

NTT生活環境研究所環境情報流通研究部長。工学博士。1982年、北海道大学大学院工学研究科応用物理学専攻修士課程修了。同年、日本電信電話公社(現NTT)武蔵野電気通信研究所に入社。95年、NTT関東技術開発センタ担当部長、99年、NTT東日本サービス運営部技術協力センタ担当部長、2001年より現職。電子情報通信学会、応用物理学会などの会員。

 地球温暖化、オゾン層破壊、酸性雨、廃棄物の増大、環境ホルモン、ダイオキシン、大気水質汚染――これらの環境問題を解決するためには、もはや我々市民一人一人が深刻にとらえて、子孫に対して少しでも負の財産を残さないよう最大限の努力が必要です。しかし、こうした環境問題は、時間的にも空間的にも非常に広範囲なものであるために、これを実感としてとらえることは困難であり、これが環境問題への関心の低さを招く一因ともなっています。

 NTT生活環境研究所(以下、NTT環境研)では、情報技術(IT)をどのように環境保護に役立てるかという観点から、環境ITの研究に力を入れてきました。「見えれば変わる」「知れば変わる」をキーワードとして、生活環境情報ネットワークの研究開発を進めています(図1)。この生活環境情報ネットワークは、各種センサを使った河川や大気のセンシングネットワークから、動植物の分布などの自然環境情報、花粉予測、家庭のリサイクル情報などの生活情報、さらには、環境NGOなどの市民活動情報などの生活および環境に関する情報を流通させようとするものです。 

 ここで、市民が環境に関する知見

を得て快適な生活を実現するために、NTT環境研で取り組んでいる二、三の研究開発例を紹介したいと思います。

 

都市環境アセスメントの将来像

 一つ目は、市民が身近な環境を知り、適切な対応をおこなうための指標を与えるアセスメントに関連したシステムの例です。現在、二酸化窒素(NO2)や浮遊粒子状物質(SPM)など、自動車の排気ガスに起因する大気汚染が問題となっていますが、現状では、身近な環境でのこれらの濃度を知るすべがありません。というのも、自治体で用いている大気環境測定装置は大型で測定場所が限られるために、測定点が多くないからです。大気環境の状況をきめ細かく測定するには、小型センサを数多く設置して、それをネットワーク化することが有効だと考えました。

 このために、ナノテクノロジーを用いて小型で超高感度なNO2センサを開発するとともに、これを通信ネットワークに接続できるようにして、多地点モニタリングが容易にできるNO2センシングネットワークシステムを開発しました(図2)。センサはバッテリー駆動式で、無線による通信を利用する自立可搬型です。これらによって、NO2の局所的な濃度分布をリアルタイムで測定できるようになりました。大気環境のアセスメントをおこなうためには、こうしたセンシング技術とならんでシミュレーション技術も重要だと考え、GIS(地図情報システム)を利用した大気環境シミュレーションシステムの開発も進めています。

 環境アセスメントの課題としては、騒音、悪臭も重要な課題です。NTT環境研では、GISを用いた道路騒音評価システムを開発しました。このシステムでは、従来は騒音測定が交差点等における点測定だったことにより沿道騒音の実情と乖離しがちだったものが、騒音を受ける建物位置で評価することが可能になりました。これらの分野でも、GISを用いたアセスメントシステムが重要なテーマになると考えています。今後は、大気環境モニタリング、シミュレーションおよびGISシステムを駆使して、交通制御システムや、きめ細かい環境アセスメントサービス、さらには環境教育ツールへの応用を検討していきたいと考えています。

環境情報流通は市民参加が鍵をにぎる

 二つ目は、市民が積極的に環境に触れることができるイベントに参加して、得られた環境情報を共有するためのシステムの例です(図3)。市民団体、環境NPO等の皆様が中心となって、身近な環境を見てみようというイベントを企画されることが多いと思いますが、このシステムはその場合に有効であると考えています。子供たちが野原や屋外の観察で用いるノートをフィールドノート(野帳)と言いますが、このシステムはその電子版である「電子野帳」を用いるものです。

 環境情報とは、センシングした情報だけではありません。周りの風景の写真、昆虫の数、植物の分布、参加した子供の感想の声等、環境に触れて導き出されたすべてのものが情報です。参加者の方の携帯型情報入力端末から送られる、写真、調査結果、位置情報等が、インターネット経由で環境ホームページサーバへ送られ、そこで地図上にマッピングされた環境情報を、参加者だけでなく、市民で共有することができます。

 実際、滋賀のNPOの方々がおこなわれた環境調査では、水質調査結果、生き物調査、調査模様およびGPSによる歩行記録が環境GISとしてホームページで配信されました。市民がこうしたイベントを通して、環境に接して、その環境情報を共有することで、環境問題への関心を高揚させることが期待されます。

スギ花粉予報も進化する

 最後は、市民が環境と共生しながら、快適な生活をすごすためのシステムの例です。いまや日本人の一○人に一人がスギ花粉症に罹っており、国民病のようにいわれています。現在の花粉予報は、専門家が自然落下した一日分の花粉の個数を顕微鏡で数え、温度や風速などの気象条件から半経験的に判断することでおこなわれていますので、時間的、地理的にきめ細かい予報までは期待できません。そこで、日常生活に密着した生活情報を流通するしくみとして、花粉予報を取り上げ、そのシステムの開発をおこないました。

 このシステムは、花粉センサと、シミュレーションをおこなう花粉情報センタからなります。まず、花粉センサを花粉発生源であるスギ林の近くに配置して、花粉の個数をリアルタイムで計測します。花粉情報センタでは、開花時期の予測結果、風速、温度、湿度などの気象データから花粉発生を解析し、花粉センサで得られた花粉計測値と併せて花粉の飛散シミュレーションをおこなって、きめ細かい花粉予報を実現するというものです。現在、関東地域十数箇所に花粉センサを設置して、インターネットやiモードで、スギ花粉量の現在の状態および二日程度先までのスギ花粉予報を提供する実験サービスをおこなっています(図4)。今後は、花粉予報だけでなく、他の予測情報も組み合わせた生活環境情報システムの実現をめざしてまいります。

 以上、市民のための環境情報流通システムの研究開発例を紹介させていただきました。今後も、市民のライフスタイルに革新をもたらす生活環境情報ネットワークの実現を目指していきたいと思っています。

(028図キャプション)

図1 生活環境情報ネットワークのイメージ図

(029図キャプション)

図2 多地点モニタリングができるNO2センシングネットワークシステム

(030図キャプション)

図3 環境情報を共有するためのシステム例

(031図キャプション)

図4 花粉情報サイト

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