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[ケーススタディ3] 環境問題とモニタリング技術の行方 -- 後藤 良三





(032-035)

特集 包括的環境モニタリング

環境問題と

モニタリング技術の行方

後藤良三

東亜ディーケーケー株式会社 商品開発部 課長

(ごとう・りょうぞう)

1974年、弘前大学理学部化学科物理化学講座卒業後、東亜電波工業に入社し、CODモニタ、全シアンモニタの開発に従事。その後電極の開発を経て、1983年よりイオンクロマトグラフの開発を担当。現在、科学機器全般の開発並びに販売推進をおこなう。イオンクロマトグラフィ研究懇談会運営委員、FIA公定化検討委員、分析機器工業会環境委員、日本環境技術協会技術委員などを務める。著書に『よくわかる化学分析のすべて(共著),『食品危害分析・モニタリングシステム』(共著)などがある。

環境問題に対する国際的な流れ

 われわれ人類は、生存するうえで少なからず周りの環境に対して影響を与えてきた。これらの影響は、かつては自然の調和のなかで浄化され、自然環境は破壊されることなく保たれてきた。ところが、産業革命以降、人類の環境に与える負荷が過剰となり、さまざまな環境問題を生むことになった。

 ここでまず、環境問題の歴史的流れを追うことにしたい。

 化石燃料の消費による大気中二酸化炭素の増加は地球温暖化という問題を引き起こし、人類が生み出すさまざまな化学物質は地球自身をむしばむ結果となった。人類が生み出したさまざまな化学物質や農薬禍について、アメリカの動物学者であるレーチェル・カーソンは一九六二年発表の著書『沈黙の春』のなかで警鐘を与えたが、その後も化学工場などからさまざまな毒性物質が排出され続けたのは周知の通りである。結果、これらの被害は局部的なものから広域的なものへ、被害者や加害者の特定された状態から不特定の状態へと変化をしていく。

 こうしたなか、一九七二年、初めての環境に対する国際会議(国連人間環境会議、ストックホルム)が開かれ、本格的な議論の後、UNEP(国連環境計画)が設立され、さまざまな活動がおこなわれることになった。一九八四年に設立した「環境と開発に関する世界委員会(WECD)」の報告書「OUR COMMON FUTURE」は、環境問題解決の鍵を握るのは「SUSTAINABLE DEVELOPMENT(持続可能な開発)」の考え方に基づく行動であると発表した。すなわち、将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、現在の世代のニーズを満たすことが重要だというわけだ。その後に迎えた国際環境開発会議(地球サミット、一九九二)では、この考え方が基準となる。この地球サミットでは、「環境と開発に関するリオ宣言」および「アジェンダ21」の採択のなかで、環境問題に対する考え方(原則)と具体的な行動計画が述べられ、持続可能な開発の実現のために、利害の異なる各国の責任「Common but differentiated responsibility(共通だが差異のある責任)」が提唱されることになった。

 「アジェンダ21」の総点検・評価は、五年後の国連環境開発特別総会(UNGASS、一九九七)でおこなわれることになるが、残念ながら地球環境状況は全般的に悪化しており、実現に向けての取り組みの再強化や重点分野などがあらためて確認されるにとどまった。しかし、本年(二○○二)の国連総会による包括的レビュー(リオ+10)では、積極的な総括ができるとして、新たな動きに期待が寄せられているところである。

我が国の環境対策

 次に、我が国の環境対策を見てみよう。

 公害問題が発生し深刻化するなかで、公害対策基本法(一九九三年廃止)が定められ、初めて公害に対する国の姿勢が明らかになったのは一九六七年のことである。その後、大気汚染防止法、水質汚濁防止法などが制定され、また、水質環境基準(一九七一)が制定されるなど、国としての達すべき環境の基準を明らかにすると同時に、さまざまな環境対策が施行されるようになった。

 一九九三年には、地球サミットを受けて環境基本法が制定され、我が国としての基本理念が定められた。このなかで掲げられたのが、―環境の恵沢と継承―環境負荷の少ない持続的発展可能な社会の構築―国際的協調による地球環境保全の積極的推進の三点である。この環境基本法のもと、基本計画が策定され(二○○○年見直し)、長期的目標として「循環・共生・参加・国際的取組」の四つが掲げられ、二一世紀の初頭に取り組む重点施策分野に地球温暖化対策など十一の分野が定められることになった。

環境モニタリング技術の現状

 次に、現在の環境モニタリング技術の現状を見てみたい。

 各企業からの排水の場合、富栄養化に伴う有機汚濁物質の管理や重金属などの毒性物質の管理など、排水基準に基づく管理がなされており、そのための環境モニタリングがおこなわれている。一方で、河川や湖沼などの環境モニタリングをおこなう際は、有機汚濁物質などの生活関連汚濁に主眼を置いているが、最近では、これらの項目に農薬や揮発性有機物なども加わりつつある。農薬や揮発性有機物などは、濃度が非常に低いことや簡易分析法が見あたらないこともあって、ほとんどがサンプリングをして、試験室に持ち込んでの測定となる。この場合にはいつ、どこで、どのような状態でサンプリングをしたかというような位置情報や時間情報、分析までの経過情報が重要となる。分析方法はLC/MSやGC/MSなどの高感度質量分析機器が用いられる。

 一方、基本的な監視項目をチェックする場合は、電極法や比色法などの簡易測定方法や化学的な反応を自動化する機器が出回っており、実際に自動モニタリングやフィールド調査などで活躍している。有機汚濁指標であるBOD(生物化学的酸素要求量)やCOD(化学的酸素要求量)などは基準の測定方法が定義されており、これらの方法と相関をとることでフィールドや自動モニタリングに適した機器を使用することができる。たとえばCODの場合は過マンガン酸カリウムにより有機物を加熱酸化分解し、そのときに要した過マンガン酸カリウム量を滴定で求めていくが、UV吸収による方法や低温酸化による比色法、短時間加熱と電量滴定を組み合わせた方法などを代わりに用いることができるわけである。

 そのほかフィールドでは、電気伝導率やpH、溶存酸素などが電極(一部比色)を利用して、また、濁度、色度、クロロフィルなどは光を利用して測定される。窒素やりん酸などにおいても、パック化された試薬とともに小型吸光光度計などを用いて測定されており、サンプリングをして精密測定をする方法とは別に用いられているのが現状である。

今後の環境モニタリングの課題

 このように、フィールド、ラボラトリ、自動モニタリング(設置型、固定測定局)と、モニタリングする場所や方法によりさまざまな機器が用いられるが、今後は、ラボラトリ用分析機器のフィールドへの適応や、自動モニタリング機器への適応が進んでいくと思われる。

 今後の課題を考えた場合、これらのデータをキーステーションに集約し解析していくシステムの構築がおこなわれていく際に、どのような情報を把握するか、機器の精度の管理をどのようにするか、また、精度の違いをどのようにデータに盛り込んでいくかが問題となってくる。とくにフィールド調査の場合には、分析のスペシャリストのみが測定をおこなうわけではなく、データの信頼性の確保が需要となる。しかし、測定点を増やし、固定モニタリング地点や精密測定結果を補完する意味で、学校教育現場やNGO団体などの測定データの活用には期待できるだろう。

 この場合に必要なことは、個人誤差をできるだけ減らすような工夫や(測定の簡便化など)、安価な機器提供などが必要になる。さらに、必要な情報(位置情報、時間情報など)を入力することなく自動的に付加される仕組みも必要となる。また、測定自体が環境に負荷を与えないような工夫、たとえば試薬量の極小化や省エネ、リサイクル型などへの適応も必要となる。同時に信頼性のあるデータの確保と遠隔収集、機器の自己診断機能強化と遠隔診断などが求められていくと思われる。このことがやがて環境に対する負荷の軽減につながり、プラス方向での環境保全・修復につながっていくと確信している。

(033図キャプション)

図1 環境観測網イメージ

(034図・写真キャプション)

いろいろなタイプのpH計

携帯用pH計  卓上用pH計  工業用pH計

図2 河川モニターの例

(035図キャプション)

図3 CODモニターの概要

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