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(P051-055)
report 開発最前線
モノづくりの最先端企業が挑む、 最新技術を追う。 セイコーエプソン株式会社 シチズン時計株式会社 セイコーインスツルメンツ株式会社
1968年に発売されたヒット商品ミニプリンタ「EP(Electric Printer)-101」は、わずか2kgの世界最小プリンタだった。 そしてこのミニプリンタの名は、“EPの息子(SON)がたくさん生まれ育つように”という 未来への思いを託した社名「EPSON」へと取り込まれる。 あれから34年、EPSONの事業は多角化したが、ここシステムデバイス事業部は、今もEPのルーツを継続しながら、 世界標準の技術開発や時代を見つめたテクノロジーの可能性に向かって走り続けている。
新たなビジネスモデルを提案する インクジェット・ミニプリンタ
セイコーエプソン株式会社 システムデバイス事業部
コンビニのレジで受け取るレシート、銀行のATMから出てくる取引明細書、タクシーの領収書、ロトくじ等のくじ券、ガソリンスタンドの領収書――、じつはこれらのほとんどは、機械に組み込まれたエプソンのミニプリンタから印字されたもの。われわれは日々、エプソン製品に関わって暮らしているといっても過言ではない。エプソンは世界のミニプリンタ市場でナンバーワンのシェアを誇るのだから、それもそのはずだ。 一言でミニプリンタと言っても、印字の技術はさまざまに進化してきた。タイプライターの原理を利用し、活字(アルファベットと数字のみをエッチングしたもの)を印字することに始まり、それがワイヤドットプリンタ(ヘッドのピンの突き出しがインクリボンを叩いて印字)へ進化し、現在の主流であるサーマルプリンタへ、そして近年はインクジェットプリンタの小型化が進んでいる。 それではエプソンの基盤を守るシステムデバイス事業の現場から、創業以来のサクセスストーリーと、ミニプリンタ開発者の声を紹介しよう。
始まりは東京オリンピックから システムデバイス事業部 事業部長 矢島虎雄氏
ミニプリンタのスタートは一九六四年の東京オリンピックにさかのぼります。このとき、全競技の公式計時をセイコーが担当し、計時に関するさまざまなシステムをセイコーグループ各社が協力して開発しました。なかでも当社は、たんに計時するだけでなく、その結果をリアルタイムで印字して記録に残すプリンティング・タイマーをつくり、それがミニプリンタのルーツとなりました。これをビジネスに展開できないかとマーケティングしたところ、当時は電卓の創成期。電卓にミニプリンタを組み込むというこちらの提案と、メーカー側の要望が合致して製品化されたのが、EP‐101です。一九六八年のことです。 じつはプリンタというものは、総合技術がないとつくることができません。メカニズムを開発するだけでなく、本体とつなぐための制御方法の開発も一体でおこなわないといけませんから。そういったインタフェイスをどう標準化していくかが大きなポイントでもあります。私どもは、お客様がプリンタのための機構を新規に開発したり、生産に必要な金型の投資をするといったことが一切必要なく簡単に印字できる製品を開発し、提供することができました。それによってミニプリンタ市場が拡大しただけでなく、電卓市場も活性化されましたし、消費者への電卓普及率にも拍車がかかったのです。
ミニプリンタからOPOSまで その後インテル社がワンチップのCPUを開発し、電卓だけでなくPOS(Point of Sales)や計測器も小さな会社で簡単につくれるようになりました。さまざまな機器にミニプリンタが組み込まれるうちに、アルファベットや漢字を印字したいというニーズが生まれ、ワイヤドットヘッドの開発に至りました。これが現在では、パソコン用プリンタ開発へと展開していっています。 一九八七年、当時パソコンは一般にはまだそれほど広まっていませんでしたが、POSにもパソコンが活用されるのではと予測し、新たな開発事業として、PC‐POS用途向完成品プリンタを商品化、さらに一九九五年には、標準化したPC‐POSシステムの完成品をつくりあげました。これをきっかけに、マイクロソフト社のOPOS(OLE for retail POS:WindowsをベースにしたPOSシステム)の標準化に、日本企業唯一のコアメンバーとして参画しています。 今当社がもっとも力を入れていることの一つは、小型のインクジェットプリンタの開発です。現在主流となっているのは、スピードが速くて印字密度が高いサーマルなのですが、サーマルにはレシートの保存性、擦過性の問題、それに加えて、使用済みのサーマル紙が再生しにくいなどといった環境問題も懸念されています。そういった問題を解決してくれるのが、インクジェットプリンタなのです。カラー印字という点から、新たな市場への展開も期待しています。
いかに小さくまとめるか システムデバイス事業部 SD開発設計部 部長 羽片忠明氏
システムデバイス事業部では、活字輪方式・ドットインパクト方式・サーマル方式・インクジェット方式の四つの印字技術でミニプリンタをつくっています。最近は活字輪方式・ドットインパクト方式からサーマル方式に置き換わってきています。それはサーマル方式により小型かつシンプルな構造で使い勝手の良いプリンタが実現できたことと、環境の温度変化に対応し、高精細・高速印字ができる発熱制御技術と印字要素技術が確立できたことによります。 しかし、ご存じの通り当社はインクジェットのメーカーですので、今後はインクジェットを主流にしていこうと、インクジェットのミニプリンタを開発しました。基本的にはPOSシステムの中に組み込まれるプリンタを商品として出しています。インクジェットを業務用途で使う場合、画質よりもむしろ、印字のスピードやインク代の節約といったことがお客様から望まれるところです。業務用途でお使いいただく場合、ランニングコストはもっとも重要なポイントですから。印字スピードとのトレードオフが画質の低下なのですが、それでもいかに画質を上げてスピードを出すか、また、インクのランニングコストをどこまで下げられるかといったことが、乗り越えなければならないハード的な課題でもあります。 当社の商品がさまざまなところに使ってもらえているのは”小さい“ということが大きい。そういう点からいえば、インクジェットもサーマルのように手のひらサイズに、といった要望も出てくるでしょう。それはとても難しいことですが、われわれの目指す方向だと思っています。また、業務用途として使われることがほとんどですので、耐久的な信頼性を確保することが重要です。商品として長くお使いいただける、ということにも付加価値を見出しています。小型・高信頼性というのが、これまでも、そしてこれからもキーワードです。
業務用途で使い続けられるために システムデバイス事業部 SD開発設計部 部長 小林正明氏
業務用のプリンタが、シェア・ナンバーワンで使われ続けていくために、プリンタの基本性能をきちんと向上させていく要素開発も重要です。パラレル、USB、無線LANなどのネットワークに合わせて対応していくことはもちろんのこと、それぞれのインタフェイスの高速化にも対応しなければなりません。さらには、既存の商品のより高信頼化、省電力化、小型化の方向に向けた開発も、つねに模索し続けています。 開発という観点では、プリンタに新しい仕組みを提案することも重要です。たとえば、プリンタにスキャナを内蔵したハイブリッドプリンタの開発。このミニプリンタは海外の市場にて発売されており、レシートを発行するだけでなく、小切手のチェックもできます。さらにその小切手を磁気リーダーで読みとり、電子データとしてクレジット会社の銀行や、買い物をしたエンドユーザーの銀行へと送り、その場で認証することができます。従来は小切手という紙ベースでのやりとりですから、時間がかかりますし、認証されなかった場合のリスクもありましたが、このプリンタが導入されれば、そういったことが一気に解消されるはずです。 これはプリンタにスキャナを合わせた新しい開発が、お客様の業務効率の向上につながるという一つの例です。このように業務用のプリンタを単品で提供するだけではなく、ビジネス全体の流れをどうするかといったことまでも踏まえて開発しています。
新しい視点や切り口を提案 システムデバイス事業部 SD営業推進部 部長 堀川利郎氏
これまでは、同じサービスをいかに安く提供できるかということだけに視点が向いていましたが、これからは、今までなかった部分に付加価値を見出して、お店にどれだけ儲けていただけるかを探っていく時代だと思っています。先ほどの小切手を電子化するスキャナ内蔵のプリンタの例も、そういった動きの一つです。ほかにもたとえば、インクジェットプリンタで四色カラーのレシートが出るのならば、そこにクーポン券を印字して付けてみる。そうすればリピーターの増加につながっていくかもしれません。 このようにわれわれのマーケティングは、エプソンの商品を使っていただくと、違った視点や切り口から新しいサービスがありますよと提案していく方向に変わってきています。 たんなる商品営業ではなく、従来のお金の流れやビジネスモデルを良い方向にガラッと変えてしまうような仕組みを提供していく、といったサービス展開がこれからの鍵だと思っています。
(052写真キャプション) IM―310 PC一体型POSターミナル
(053写真キャプション) システムデバイス事業部 事業部長 矢島虎雄氏
(054写真キャプション) システムデバイス事業部 SD開発設計部 部長 羽片忠明氏
TM―T88III サーマルプリンタ
TM―H6000II ECC スキャナ内蔵ハイブリッドプリンタ
(055写真キャプション) システムデバイス事業部 SD開発設計部 部長 小林正明氏
TM―J2100 インクジェットプリンタ
システムデバイス事業部 SD営業推進部 部長 堀川利郎氏
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