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[開発最前線] 時計の生命感を体現する ロボット「Eco-Be!」 -- シチズン





(P056-057)

「Eco-Be!(エコ・ビー)」は、シチズンの先端技術とあそび心が生んだ、愛すべきミニチュアロボット。

別に、言うことを聞くわけでも、芸をするわけでもない。ただただ、気の向くままに動いているだけ。

でももし、この中に時計の今後をうらなう大切なキーが隠されているかもしれないとしたら――。

時計の生命感を体現する

ロボット「Eco-Be!」

シチズン時計株式会社

時計モータの不安定領域

 腕時計の文字板を三つもつ小さなハコが、ふらり、ふらりと小刻みに動く。前進していたかと思うと、ぶつかって後退したり、あるいは回転しはじめたり。この気ままな動きを生み出すのは、両側面でバラバラな動きをする二つの文字板の車輪。それを駆動するエネルギー源は、上面の文字板(この時計は正確に時を刻んでいる)から採り入れられる光だ。

 光で動く腕時計といえば、そう、前号でも紹介したシチズン「エコ・ドライブ」である。エコ・ビーは、この「エコ・ドライブ」のモジュールを三個搭載し、ソーラーセルで発電をおこない、両車輪を駆動する。電池は積んでいない。車輪の文字板は、「分円板」で、ここに秒針だけがついている。つまり、車輪が「五分」回転すると、秒針は五回転しないといけないわけで、結構な速さでくるくる回っている。

 「『エコ・ドライブ』の時計自体の消費電力はわずかなもので、じつは時計用ソーラーパネル一個で最大一○○個以上もの時計を動かすパワーをもっているんです。それを使って、一秒に一二○○○回転という高速回転を得ています」

 と、エコ・ビーの生みの親である吉川一彦さん(生産本部・時計開発部)。ふらふらしているようで、本当はすごい働き者(?)なのである。しかし、その動きはというと、あくまで気ままだ。その秘密もまた、高速回転にあった。

 「時計用のモーターは、一定以上に高速回転すると、ちょっとしたきっかけ(負荷や電圧変動)で回転方向が変わったりするという特性をもっているんです。つまり制御不能な、不安定領域に入ってしまう。その特性を逆手にとって、あえてエコ・ビーに使ってみたわけですね。さらに、マイコンを搭載したタイプは、そのプログラムによってもいろんな動き方をすることになります」

 この不規則で、緩慢な動作を見ていると、なんとなく引き込まれていくから不思議だ。

隠れた技術を見せること

 エコ・ビー誕生は、九五年ごろ、吉川さんが時計モータの研究に携わっていたときに、これを高速度で動かすとおもしろそうだと考えたのがきっかけだった。最初は、リモコン操作でと考えていたが、数年後、環境に負荷をかけない技術開発をおこなっていくエコプロダクツ・プロジェクトが発足。その一環として、社内の協力も得ながら、ソーラーシステムを用いた時計ロボットが誕生することになった。

 今のところエコ・ビーは、販売目的ではつくられていない。それはいわば、技術開発の過程でたまたま生み落とされ、幸運にも形になった「おもちゃ」にすぎない。が、ただの「おもちゃ」ではない。そこには、「エコ・ドライブ」モジュールをはじめ、シチズンのさまざまな新しい技術や素材が活用され、今も改良を重ねている。

 腕時計というのは、技術が見えない、いや見えてはならない製品だ。技術を最小化し、それを美しく使いやすいデザインの下に、隠す必要がある。

 だからエコ・ビーは、その技術を「見せる」ということ、そしてそれを時計とはまた違った方向に活用するという役割も、もっているわけだ。実際、エコ・ビーは国内外の時計展示会にもたびたび出品され、また量販店や専門店の店頭にも置かれたりして、人気を集めている。

時計の生命感を回復する

 さて、エコ・ビーはこれからどうなるのだろう?

 製品化しようという声がないわけではない。デザインもいくつかのパターンが試作されてもいる。しかし、時計モジュールを三つ使うため、コストが高く、また装置自体が露出しているので壊れやすいなど、製品化には課題が多いそうだ。

 ロボットとしての魅力はどうか? エコ・ビーは、今はやりのロボットのように、頭がよいわけでも、愛嬌をふるまうわけでもない。 別に目的もなく、ただ動き回っているだけだ。優柔不断なヤツなんです、と吉川さんは笑う。しかしそんな押しの弱さこそが、エコ・ビーの魅力かもしれない。むしろ「癒し」「なごみ」という今の時流には、ぴったり合っているだろう。

 「でも、エコ・ビーをたんなる『癒し』や『ペット』的存在では、終わらせたくないんです。エコ・ビーには、不思議な生命感を感じますよね。それは、私たち時計づくりにかかわる人間が、忘れてしまいがちなものではないかと。私たちは、えてして時計の機能価値のみを追い求めてしまう。しかしユーザーにとっては、時計はたんなる機械ではなくて、情緒感・生命感をもったモノでしょう。そこがじつは、日本の時計メーカーが苦手とするところでもある。

 エコ・ビーは、技術的には『エコ・ドライブ』からスタートしたわけですが、『エコ・ドライブ』自体、もともと生命感をもったシステムなんですね。これから私たちは、どんな時計づくりをしていくべきなのか。その一つのヒントを、エコ・ビーは示しているんじゃないかと。具体的に、それが何だとはまだはっきり言えないのですが」

 と、吉川さん。その言葉を受けて、同席していた企画部・開発技術室室長の福島信人さんはこう言った。

 「実際的なメリットにならなくてもいいんですよ。エコ・ビーによって、私たちは時計づくりの違う感動を味わうことができたんです。それに気づいたということが大きいんだと思いますよ」

 エコ・ビーの登場は、確かにそれだけのインパクトをもっていたわけだ。

 エコ・ビーは、これからも進化していきそうだ。吉川さんたちには、すでにいくつかのプランがある。時計のパワーセーブ機能を使ったエコ・ビー(昼は動き回り、夜は寝ている)、電波による時刻修正機能を利用したエコ・ビー(アラームが鳴ったら、なぜか逃げ回る、誕生日は忘れない、四月一日には狂う――)。そんな時計があったら、楽しいに違いない。エコ・ビーは何より、そんな時計づくりの楽しさを、再認識させてくれるのではないだろうか。

(057写真キャプション)

エコ・ビーのデザイン・コンテ

エコ・ビーを開発した

吉川一彦さん(生産本部・時計開発部)

上のソーラーパネルから光をとり入れ、左右の分円板を駆動する

Eco-Be!ホームページ http://watch.citizen.co.jp/eco/eco-be/

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