NATUREINTERFACE.COM
ネイチャーインタフェイス株式会社 info@natureinterface.co.jp TEL:03-5222-3583
ネイチャーインタフェイス > この号 No.08 の目次 > P060_061 [English]

[NIヒューマンインタビュー] セイコーインスツルメンツ -- 入江 昭夫


(P060-061)

NI Human Interview

NIヒューマン・インタヴュー

セイコーインスツルメンツ株式会社

入江昭夫氏

代表取締役社長

聞き手・板生清(本誌監修)

入江昭夫(いりえ・あきお)

1939年東京生まれ。

1962横浜国立大学経済学部卒業後、

諏訪精工舎(現・セイコーエプソン)に入社。

1996年副社長に就任、

1999年にセイコーインスツルメンツに副社長として移籍し、2001年社長に就任。趣味は料理。

メカで差別化できる時代がやってくる

――入江社長に以前お会いしたときは、セイコーエプソンの副社長でいらしたわけですが、セイコーエプソンとセイコーインスツルメンツ(以下SII)の事業内容は、かなり違うのでしょうか?

入江――両社はもともとセイコーのウオッチ生産会社として設立されました。第二精工舎(SII)の諏訪工場がその後セイコーエプソンになったので、気質的にも似たようなところがありましたが、現在は、かなり変わってきていますね。エプソンの方がどちらかというとプリンタやパソコンといった民生品のウエイトを高めてまいりましたが、SIIの方はどちらかというと民生品よりもBtoB(企業間取引)が多いですね。セイコーグループというのは非常に変わっていて、ウオッチ以外のビジネス、たとえば電子デバイスなどは互いに競合しているんですよ。時計の開発にしても、SII、セイコーエプソン共に開発部をもっていたように、時計だけをやっていた時代からグループ内で競争して伸びてきたといえます。

――そういう意味では、時計の技術が両方の会社にきちんと根づいているわけですね。

入江――そうですね。両社とも時計から多角化へと進んできたわけですが、私どもでは、それをさらに進めてマイクロメカ、ナノメカの方向を目指しつつあります。低パワーの電子デバイスを軸に、機器デザインや小型化技術という強味を活かしてウェアラブル機器へと発展させ、それを無線等で繋ぎ、さまざまなソリューションを提供したいと思います。

 これまで情報機器の世界は、どちらかというとIC中心にエレクトロニクスが引っ張ってきたところがありますが、私はもう一度メカで差別化できる時代がくると思っているんです。ハードの微細化がより求められるようになってくると、メーカーによってできる/できないという差が出てくるでしょうからね。やがて、エレクトロニクスとメカは対等な立場になってくるんじゃないでしょうか。

――そのメカというのが、ナノメカになるわけですね。

入江――ええ。今後は当然、医療関係などもナノメカの技術を要求してくるでしょう。そうした時代に先駆けて、私どもでは一昨年、NECと姫路工業大学と組んで、ガスを吹き付けながら集束イオンビームを走査することによって、世界最小のワイングラスの作製に成功したところです。これは、外径が二・七五ミクロン(通常のワイングラスの約二万分の一)という大きさで、「ギネスブック」にも載りました。赤血球も入らない大きさなので、血も注げないワイングラスなんですけどね(笑)。

 この集束イオンビームの技術というのは、私どもが今後とも力を入れていきたい分野です。すでに、この技術を使って半導体用フォトマスクを、観察しながらナノレベルで修正する装置を販売しておりまして、世界中から高い評価をいただいております。今後は、この技術を使ってできた三次元構造物をバイオ素子や電子デバイスに使おうといったことも考えています。実用化までには、もう少し時間がかかると思いますが。

――つねに五年、一○年先の技術を研究開発されているという意味では、本当に大変ですよね。

入江――確かに、私どもはつねに研究室レベルのことをやっていますからね。今後はこうした最先端の技術を使って、いかにビジネスを展開していくのか、考えていかなければなりませんね。

「ネット時代も時刻はSEIKO」

――現在、SIIを引っ張っている事業は何ですか?

入江――売上高の割合からいうと時計の開発・製造から発展してきた低パワーの電子デバイスです。考えてみれば、二四時間、三六五日動いている機器というのは、時計以外にそれほどないわけで、いかに電池を食わない設計をするか、というのは時計メーカーの真骨頂ですからね。あとは、時計の技術から派生したといえばコイン形の小型電池。セルラー用のバックアップ用二次電池は、ワールドワイドでトップシェアなんですよ。

――WINSについてもお聞かせください。

入江――WINSというのは、今後フォーカスを当てていくべき事業を、社内の中堅どころが中心になって半年ほどかかってつくった柱なのですが、まずWはウェアラブル。ウオッチサイズにまとめる小型化技術やデザイン力をベースに、今年はぜひ新製品をリリースしたいと思っています。Iはインダストリアルシステム。ナノテクノロジーにかかわる製造業における、研究・開発・設計・生産・検査などさまざまなプロセスを支援するシステムを提供します。それから、Nはネットワークコンポーネントということで、先ほどの低パワー電子デバイス、ICや表示モジュール、光部品などです。そして、Sはeソリューション。さまざまなeビジネスにかかわるサービスを提案したいという発想で事業を進めています。とくに、無線カード決済システムは法人タクシーなどで導入が進んでおり、期待しているビジネスの一つです。

――時計メーカーならではの発想で、展開しているビジネスもあるそうですね。

入江――タイムスタンプ・サービスという新サービスを昨年一二月から始めました。これは、ネット上で決済をする際に必要になってくる時間の認証をするというもので、「ネット時代も時刻はSEIKO」が合言葉です。

――なるほど、それは非常に重要なサービスになっていくでしょうね。メールの遅配でトラブルになることもありますからね。ワールドワイドになればなるほど、いつ何時それがおこなわれたのか、正確な時間が重要になってくる。これは、電波時計を使うのですか?

入江――SII情報センターに設置するセシウム原子時計が組み込まれたマスタークロックから、各事業者へ設置されたタイムスタンプサーバに対し、基準となる時刻を配信します。原子時計の精度は一○○万年に±一秒ですが、さらに国家計量機関の時刻と協調したり、バックアップシステムを置くなど万全の体制を取っています。これに合わせて、セイコーによる時刻の証明書を発行する機械をつくるなど、ビジネスの幅は広がるでしょうね。日本も政府がIT化を進めていますが、第三者による時刻証明は必ず必要になってきますよ。

――最後に、日本の製造業が諸外国に勝っていくにはどこに注力したらいいのでしょうか?

入江――私が思うに、どうもアイディアとスピードで商売するアメリカ型のスタイルには、日本人は勝てないんじゃないかと思うんです。一方で、日本人はモノづくりに対する価値観が他の民族よりも高いように思います。日本人は、頭で考えていても、それを実現できなければしょうがない、と考える。こんな価値観をもっている民族というのはあまりないわけで、日本人がモノづくりの最先端をいくというのはあたり前のことだと思うのです。いわゆる「匠の世界」にこそ日本の生き残る道があるのではないでしょうか。そうした意味では、ナノメカの時代の到来には大いに期待したいと思っています。

――「匠の世界」ですか。日本人は器用ですから、そうした日本人の特性を生かした製品をつくることにこそ、日本のビジネスの新展開があるといえるのでしょうね。

NATUREINTERFACE.COM
ネイチャーインタフェイス株式会社 info@natureinterface.co.jp TEL:03-5222-3583
-- 当サイトの参照は無料ですが内容はフリーテキストではありません。無断コピー無断転載は違法行為となりますのでご注意ください
-- 無断コピー無断転載するのではなく当サイトをご参照いただくことは歓迎です。リンクなどで当サイトをご紹介いただけると幸いです
HTML by i16 2018/06/23