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[NIヒューマンインタビュー] 日立製作所 -- 長谷川 邦夫


(P062-063)

NI Human Interview

NIヒューマン・インタヴュー

株式会社日立製作所

長谷川邦夫氏

専務取締役

聞き手・板生清(本誌監修)

長谷川邦夫(はせがわ・くにお)

1941年生まれ。

1965年、東京大学工学部を卒業後、

日立製作所に入社。おおみか工場長を経て、

現在、専務取締役。趣味は家庭菜園。

携帯電話の次にくるもの

――長谷川さんは、日立製作所の半導体部門の長を務めておられたわけですが、半導体事業の現在の状況はいかがですか?

長谷川――半導体事業は、一昨年、前年比の一五○パーセントと大変大きく伸びたんですね。世界のマーケットでみると、約二四兆円ですか。その一番の原動力となったのが携帯電話とパソコンです。なかでも携帯電話の伸びは大きくて、われわれメーカーは設備投資に躍起になったんです。そうしたら、昨年になって、あっという間にIT不況に陥ってしまった。半導体業界というのは装置産業ですから、どうしても固定費がかかってしまうんですね。苦しい状況ではありますが、IT不況もだいたい底を打った感じじゃないでしょうか。

 現在、日本で携帯電話は約七○○○万台普及していて、これ以上の伸びは期待できませんが、中国では全人口の一○パーセント程度、インドなどは一パーセントくらいの普及率ですから、まだまだ市場は開拓できます。とはいうものの、やはり、ポスト携帯電話ともいうべき機器の開発に期待が寄せられています。PDA(携帯情報端末)もその一つですが、さらに先に進んでウェアラブル・コンピュータのようなものに取り組んでいかなければならないと考えています。

――実際に、情報端末といっても今や驚くほど小さいものがつくれる時代になりましたからね。

長谷川――ええ。そうしたなかで、今、モノづくりに携わる者として非常に重要だと感じているのが、インタフェイスですね。近い将来、我々の日常生活を取り巻くあらゆる機器、設備、道具にマイクロコンピュータが内蔵され、さらに、それらがコンピュータネットワークにより相互に接続されて、協調動作することにより、人間の活動を多様な側面から支援することになるでしょう。まさにユビキタス(Ubiquitous;空気のようにあまねくコンピュータがネットワークされること)の時代の到来です。そうした技術を実現するために必要になってくるのが、インタフェイスなんです。現在、東京大学の坂村健先生が中心になって、TRON (The Real-time Operating system Nucleus )プロジェクトが進められており、私どももかかわっていますが、その最大の課題もインタフェイスといえます。

――一つの抽象的なイメージがあったとしても、最終的にはハード・ソフトともに現実的なかたちにしていかなければならないわけですからね。半導体技術を活かし、センサやメモリをワンチップに収めて、さらにそれらを繋げていくためには、確かにインタフェイスが重要です。

長谷川――そもそもTRONというのは、一五年ほど前に日の丸コンピュータをつくろうという感じで始まったんですよね。I-TRONは工業用で、B-TRONはパソコン用だったわけですが、結局、日米の摩擦とかいろんな問題があって、マイクロソフトに負けてしまった。しかし、今やI-TRONはほとんどの携帯電話に使用されていますし、TRONを利用してできることは無数にあると考えられます。しかもTRONは、コンソーシアムを目指してインタフェイスをすべて公開している点も魅力的です。

 先日も、人工の眼をつくりたいということで、ある企業の方がお見えになったばかりです。これは眼の網膜の部分に半導体センサーを、水晶体の部分にCCD(Charge Coupled Device)カメラを埋め込んで、脳に刺激を与えるというものなのですが、まったく見えなかった人が鮮明ではないにせよ見えるようになるというのだから、すごい話ですよね。われわれ半導体の世界でも、まだまだ切り拓くべき技術は残されているなと痛感した次第です。しかも、眼というのは、まさにインタフェイスですからね。

――昔から考えると、いまや魔法みたいな話が実現されつつありますね。

長谷川――ええ、本当に驚きます。

ユビキタス社会を実現する

無線技術とマイクロ技術

長谷川――もう一つ、ユビキタスを実現するために重要になってくるのが無線技術、ワイヤレスですね。ブルートゥース(Bluetooth:携帯情報機器向けの無線通信技術)も一つの例ですが、いろいろな機器を配線せずに接続でき、屋内は無線LANで完全に繋ぐことができるようになります。家庭内の電灯線を通して通信をおこなうこともできるようになります。この技術は、すでにエコネット(家庭内の電灯線を利用したネットワーク)で実験されていますね。

――そうなれば、ネイチャーインタフェイスの世界の実現にまた一歩近づくわけですね。

長谷川――そうですね。それから、パソコン用のマイコンについてはすでにインテルが独占していますが、今後は、SOC(System On a Chip)、すなわち、ワンチップのなかにメモリ、CPU、センサなどが入ったチップの開発に期待が寄せられています。今は廉価で消費電力が少ないCMOSを使っていますが、より小さなものをつくるためには、さらなる研究が必要です。今、実現しているのは線巾がコンマ一三ミクロンですが、さらに半分くらいの線巾にすることは可能じゃないかと思います。

 それと、もう一つ重要な技術が低消費電力技術です。今、半導体技術では、使用していない回路の電源は完全にシャットアウトして消費電力を低く抑える技術の開発が進められています。

――ウェアラブルの実現のためには、エネルギー・マネジメントは重要な課題ですね。現在、酸素オキシレーターといって、患者さんの酸素の結合度を測るウェアラブル機器が開発されていますが、この場合も、一番の問題はいかにエネルギー消費を低く抑えるかです。そのためには、端末自身が判断してスリープモードに切り替えるなどの技術が必要ですが、たとえば無呼吸症候群を感知するためには、やはり一晩中動いている必要があったりと、いろいろ難しい問題があります。

長谷川――なるほど、ウェアラブル機器を使えば、生体情報や位置情報、センサ情報などを通信できるわけで、さまざまな用途があるわけですね。

 先日、聞いた話なのですが、人間というのは、どうやら一二○歳までは生きることが可能なんだそうです。高齢化社会において、ウェアラブル機器の果たす役割は非常に大きなものになるでしょう。何年か前に長嶋茂雄監督が「初めての還暦です」と言って騒がれていたけれど、あながち第二の還暦というのが珍しくない時代がくるんじゃないでしょうか。

――第一還暦、第二還暦という具合にですね。

長谷川――ええ。そのうち、ウェアラブル情報機器をつけているだけで、「あなたはあと何年生きられます」なんて、簡単に計測できてしまう時代がやってくるかもしれません(笑)。

――そうなれば、ますます半導体の役割というのは大きくなっていくでしょうね。

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