NATUREINTERFACE.COM
ネイチャーインタフェイス株式会社 info@natureinterface.co.jp TEL:03-5222-3583
ネイチャーインタフェイス > この号 No.08 の目次 > P074_075 [English]

DNAコンピューター 遺伝子を利用した超高速コンピュータ誕生



(P074-075)

NI report1

DNAコンピュータ

遺伝子を利用した超高速コンピュータ誕生

DNAコンピュータは、一九九四年に概念が提唱され、

欧米を中心に研究が盛んに進められてきた。

今回、日本で開発され、実用化された世界初のDNAコンピュータは、

次世代を担うコンピュータとして世界中から注目されている。

DNAの化学反応による計算処理

 今回のDNAコンピュータは、東京大学大学院総合文化研究科の陶山明助教授の技術支援のもと、オリンパス光学工業株式会社と遺伝子解析サービスをおこなう研究開発型ベンチャー株式会社ノバスジーン(三井情報開発株式会社との共同出資で設立)が、共同開発したものだ。

 DNAコンピュータの正式名称は、デオキシリボ核酸コンピュータ(deoxyribonucleic acid computer)という。一九九四年、米国の南カリフォルニア大学のレオナルド・エイドルマン教授によって提唱され、欧米諸国を中心に研究が進められている。

 遺伝子の本体であるDNAは、不思議な二重螺旋の構造をしている。二本の鎖は、DNAを構成する四つの塩基、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)からなり、AとT、CとGとの組み合わせにしか結合しないという特性をもっている。

 DNAコンピュータは、この「鍵」と「鍵穴」のような塩基配列を使って計算するものだ。従来のコンピュータの心臓部は、半導体で〇と一の電子信号で計算しているのに対し、DNAコンピュータの心臓部は、塩基配列の断片である。塩基配列に置き換えられたデータを入れると、特定の塩基と結合することで計算がおこなわれ、答えが求まるのだ。

 DNAの化学反応は、順番ではなく、全体で同時に、しかも一気に進むため、超並列処理が可能となる。結果、膨大なデータを超高速で処理することができ、電子コンピュータで数年かかっていた膨大な組み合わせ問題などが数カ月で求められるのだ。

 また、電子コンピュータでいうところのCPUやメモリにあたる人工DNAは簡単に設計、合成ができるため、低コストで計算できるという大きなメリットもある。

 DNAコンピュータは、次のようなDNA分子の自己組織性を利用している。

 たとえば、校庭に小学生を集め、「じゃんけんゲーム」をする。

@出会った人とじゃんけんをする。

A負けた人は、勝った人の肩に手をかけて後ろにつく。

B二人以上の列ができたら、先頭になっている勝った同士がじゃんけんをし、負けたほうが勝った列の一番最後の人の肩に手をかけて並ぶ。

4最後は一つの長い列になり、最後にできた列の先頭の人が最終的な勝者、「じゃんけんに一度も負けていない人」である。

 DNAコンピュータでは、このように一つ一つの分子が互いに相手と結びついたり離れたりしながら、最適な条件を満たすDNA分子(ここでは小学生)を組織化していくことで、答えを導き出す。さらに、DNAコンピュータが最も得意とするのが、組み合わせ問題だ。この種の問題を完全に解くためには、あらゆる可能な答えをすべて調べ上げる必要があった。

 たとえば、将棋の次の一手を考えるとき、すべての自分の駒のあらゆる指し方を考えて、それぞれの手に対して次に相手がどの駒を打つかの二手を考えるだけで、膨大な指し手の組み合わせがあることがわかるだろう。現在の電子計算機は、すべてを考えずに一部の手までで計算を済ませているので、最強の手を打ってくるとは限らない。プロの棋士は十手先まで考えて打っているというが、現在の電子計算機でプロを上回る強い棋士をつくろうとすれば、一回の計算で数百年かかってしまうといわれる。

 このような組み合わせ問題には、すべての出先を最短時間で回る道筋を見つける「巡回セールスマン問題」などもある。

遺伝子解析分野への応用が期待される

 今回のDNAコンピュータは、細胞内にあるmRNA(DNAの遺伝情報を運ぶ核酸の一種。メッセンジャーRNAといわれている)の種類や量を解析し、遺伝子の機能・役割などを高精度、高速、低価格で計測する、実用的なものとしては世界で初めての「遺伝子解析用DNAコンピュータ」だ。

 同コンピュータの構成は、「分子計算部」と「電子計算部」のハイブリッド型になっている。分子計算部は、入出力を分子DNAでおこない、前述したDNAによる組み合わせ計算、反応の自動実行や結果の出たDNAの取得・検出(計算の処理)をおこなう。電子計算部では、処理プログラムの実行・出力、計算反応計画、結果の解釈などができるようになっている。

 大きな特長は、従来方法に比較して工程を自動化し、DNAの反応が簡単になったうえに、高精度になったことだ。従来、手作業で約三日間かかっていた作業が、これにより六時間程度に短縮され、格段に計測精度が上がるという。コストの面でも従来方法より優れている。

 DNAコンピュータの登場が世界へ伝えられたとき、オリンパスはその特徴に目をつけ、いち早く応用を考えたのが遺伝子解析・医療の分野だった。

 ヒトの遺伝子の解明が進み、何万人、何千人に一人という先天的な疾病だけでなく、癌や生活習慣病なども、いずれ遺伝子の解析によって予防、治療が可能になるといわれている。病気を未然に予防するのは、人類のテーマであるが、と同時に世界最大のビジネスでもある。

 オリンパスは、今年一月末に遺伝子解析用DNAコンピュータをノバスジーンへ設置した。実サンプルを使った遺伝子発現頻度計測の性能評価を今年中に完了させ、来年一月より本格的な遺伝子解析サービスの開始を予定している。ノバスジーンの資本金は四億円(オリンパスが五一%、三井情報開発が四九%を出資)で、同社の二〇〇三年度の売り上げ見込みは一〇億円、二〇〇五年度は六〇億円としている。

 将来的には、遺伝的な個人差を知る有力な手がかりとなるSNP解析(病気発症の素因や薬の効果の表れ方の違いなどを配列一つのレベルで解析すること)などへの汎用性を追求し、ゲノム創薬、遺伝子診断など、医療での実用化に役立てたいとしている。

 遺伝子研究については、欧米諸国に出遅れた感のあった日本だが、今回の遺伝子解析コンピュータの登場によって、人類への大きな貢献が期待される。

(075写真キャプション)

「遺伝子解析用

DNAコンピュータ」

開発機

同・分子計算部

NATUREINTERFACE.COM
ネイチャーインタフェイス株式会社 info@natureinterface.co.jp TEL:03-5222-3583
-- 当サイトの参照は無料ですが内容はフリーテキストではありません。無断コピー無断転載は違法行為となりますのでご注意ください
-- 無断コピー無断転載するのではなく当サイトをご参照いただくことは歓迎です。リンクなどで当サイトをご紹介いただけると幸いです
HTML by i16 2018/06/25