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電子政府 ― 利便性と個人の利益保護とのせめぎ合い



(P076-077)

NI report2

電子政府

利便性と個人の利益保護とのせめぎ合い

昨年一一月、住民基本台帳法の一部が改正された。

これにより日本国民すべてを対象とした

住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)が

今年八月より一部稼働を開始、本格的な電子政府が幕開けする。

質の高い行政サービスが四六時中受けられる

 そもそも「電子政府」とは、何か。

 身近なところでいえば、図書館や体育館などの公共施設、転居届や介護サービスを受けるために申請に行く市区町村役場、さらに厚生労働省や総務省などの官公庁がある。これらあらゆる公共機関や役所をインターネットでつなぎ、どこでも行政サービスを受けられるようにするのが、電子政府である。

 たとえば、これまで学校や仕事を休んで役所に出かけ、申請書に記入していた手続きも、オンライン行政サービスなら会社のパソコンや駅、コンビニなどにある端末から申請や届け出ができるようになる。

 また、各省庁にまたがっていた申請なども、必要なデータを一括送信して、完了だ。

 新車を購入したときの手続きを考えてみよう。車庫証明の取得、自動車取得税の支払いなど、これまで警察署、都道府県庁、陸運支局などそれぞれに申請しなければならなかったものが、クリック一つで済んでしまうのだ。時間がお金に換算される現代において、二四時間三六五日、会社や自宅に居ながら、買い物帰りのついでに行政サービスを受けられるのは、市民にとっての最大のメリットといえよう。

 もちろん、行政にとってもメリットはある。東京都庁は、電子基盤がおおむね完成する平成一六年度の都庁内部の事務効率化を予測している。

 まず事務効率の向上として、電子メールや電子決済の利用によって「連絡待ち時間」が減り、職員の可処分時間が年間二五〇万時間創出される。この時間は、都民サービスのための時間に充てられる。またペーパーレス化による事務コスト削減は一八億円、都が発行する刊行物出版経費の削減など、大幅なコスト削減も期待されている。

 

カード一枚にすべてが含まれる危うさ

 では実際に、一番身近な自治体では、どのような動きがあるのだろうか。

 岐阜県多治見市は、今年になって住民票などが自動交付可能なカードや市民病院の診察券などをまとめたIC(集積回路)カード「たじみITタウンカード」を希望者に発行した。端末で本人確認ができれば、健康情報データベースが呼び出せ、血圧や脈拍など自分の健康情報や福祉情報などを記録させることもできる。さらに市民病院を出先から予約できる院外受付サービス、国民健康保険証資格の確認も可能という。

 岩手県水沢市の「Zカード」は、端末にかざして本人確認が済めば、住民票や印鑑登録証明書が受け取れるし、兵庫県の加古川市、播磨町、稲美町が発行している医療カードからは、検診記録や投薬履歴が呼び出せる。院外受付サービスができ、投薬履歴がわかるカードは、高齢者だけでなく、子供をもつ共稼ぎ夫婦にとっても魔法の一枚となるだろう。

 こうしたIT(情報技術)が全国の自治体に定着し、本人確認が簡単にできるICカードと組み合わせて使えば、「電子自治体」の実現も近い。この魔法のICカードのベースとなるのが、市区町村の住民基本台帳ネット(住基ネット)である。

 しかし、電子自治体構想や来年八月からの住基ネット稼働に慎重な動きをみせる自治体もある。すべての国民に一一桁の背番号をつける「国民総背番号」ともいわれる住基ネットは、一枚のカードですべてが完了するという便利さの裏側に、番号一つで住所や生年月日はもとより、読書傾向、病歴、投薬状況まで知られてしまうという危険を含んでいるからだ。

 東京都杉並区は、昨年九月に住基プライバシー条例を制定した。条例には、東京都に送信する事項を明らかにする、住基ネットへの情報提供の状況や苦情について情報公開する、情報の漏洩や不正な仕様のおそれがあるときは、住基ネットへの情報提供を一時停止する措置をとるなどが定められている。同区が行った区民アンケートでも、住基ネットに対して七割が疑問を抱いているという結果が出ており、今後も慎重に対応していく姿勢を崩していない。

 自治体のほかにも、住基ネットに反対する住民グループ「やぶれ!住民基本台帳ネットワーク市民行動」が、東京都に国が進める住基ネットに参加しないように求める要請書を提出するなど、各地でさまざまな動きがみられる。

 もう一つ懸念されるのが、所得差、年齢差、障害の有無、居住する地域のインフラ整備状況などによって生じる受益差(デジタルデバイド)である。一部の人々にしか恩恵を与えない「電子政府」では、意味がない。

 人だけでなく、自治体にもデジタルデバイドは存在する。進捗にもかなりの温度差がみられる。価値総合研究所やガートナーが参加する「電子自治体共同研究会」が、「電子自治体に対応できる可能性があるのは、全都道府県、市町村のうち約三・五%」――という調査結果を発表した。「対策が遅れている自治体に配慮しないと、自治体間のデジタルデバイドを助長する可能性がある」とも警告している。

 「日本電子政府」は、出航したばかりである。今後は高い質と利便性、そしてより安全な電子政府をつくるため、利用する私たち一般市民が、高い意識をもって舵取りに参加することが課題となってくるだろう。

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