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(P090-091)
world watch
ワールド・ウォッチ
地球をウォッチする モーリ・オミーラ・シーハン (ワールド・ウォッチ研究所 研究員) 聞き手 山内規義 (東京大学大学院新領域創成科学研究科 客員教授)
ワールド・ウォッチ研究所とは
――日本語が大変お上手ですね。どこで勉強されましたか? シーハン ウイリアムズ大学(生物学およびアジア研究を専攻)で日本語を習いました。また、一〇年前に、日本の外務省で一年間研修する機会があり、その時にも勉強しました。 ――最初に、ワールド・ウォッチ研究所( World Watch Institute )について簡単に紹介していただけますか。 シーハン ワールド・ウォッチ研究所は、レスター・ブラウン博士により、一九七四年に設立されました。この組織は、健全で平等な世界を築くため、記者、学校の先生、政治家そして一般市民を啓蒙することを目指しています。それによって、人々が環境破壊や社会の不公平に対して効果的な政策要求を出せるようにするのが狙いです。ワールド・ウォッチ研究所にはレスター・ブラウン理事長、クリストファー・フレイヴィン所長以下、約三〇名のスタッフがおり、その半数が研究者です。私ども研究者は、環境問題や開発に関係するさまざまな問題を研究し、その成果を世界に発信しているのです。 ――ワールド・ウォッチ研究所の活動は、どのような分野を対象としているのでしょうか。 シーハン 大きく分類すると、―材料、エネルギー、および天候、―人間と環境の健全性、―社会制度、経済、およびセキュリティ、―食糧、水、および環境汚染、の四つの分野をカバーしています。 ――研究成果は、どのような形で公表しているのですか。 シーハン ワールド・ウォッチ研究所は、毎年、『地球白書(State of the World)』と『地球環境データブック(Vital Signs)』という二つの年報を出しています。また、隔月で「ワールド・ウォッチ(World Watch)」という雑誌を発行しています。「ワールド・ウォッチ」誌は、インターネットでも読むことができます(http://www.worldwatch.org/mag/index.html)。最近一年分は有料ですが、それ以前の内容は無料で読むことができるんですよ。その他にも、研究者がジャーナリストや政治家に意見を述べたり、主要な学会で講演をしたりして、研究成果の普及に務めています。
日米の協力で環境問題を解決したい
――シーハンさんは一九九六年にワールド・ウォッチ研究所に参加されたわけですが、その動機はどういうものだったのでしょうか。 シーハン 大学院修士課程(ジョン・ホプキンズ大学、環境社会学専攻)に入る前から、ワールド・ウォッチ研究所に参加したいと思っていました。大学院を志望する前にも、朝日新聞ワシントン支局でワールド・ウォッチ研究所の記者発表に出席する機会が何回かあったのですが、その際、ワールド・ウォッチ研究所が、説得力のある、学際的な分析の結果を発表して、より健全な環境を実現しようとしていることを知りました。それで、いずれワールド・ウォッチ研究所が発表しているような論文を書きたいという思いで、大学院進学を決めたのです。 大学院では、日本とアメリカが環境問題でどのように協力し合えるか、とくにNGOのレベルでどのようなことができるか、ということに興味がありました。一九九〇年代中頃は、アメリカのアジア地域での影響力は小さくなっていました。また、太平洋をはさんだ日米の交流は、必要な時期だったにもかかわらず、十分ではありませんでした。私は、日米の協力により、将来の環境危機を解決できることを示したいと思いました。このようなテーマの研究を継続したいと考え、ワールド・ウォッチ研究所に入ったのです。 私が「ワールド・ウォッチ」誌の一九九七年三・四月号に書いた最初の論文は、APEC (Asia Pacific Economic Cooperation)会議の枠組みで、各国が地域の環境問題を協力して解決できる可能性について検証したものです。 ――ワールド・ウォッチ研究所の本部はワシントン市にあり、シーハンさんはニューヨーク市内のご自宅から、通信回線を使って遠隔勤務をされているそうですね。 シーハン 私は二〇〇一年一月にニューヨークに移ったのですが、その後もワールド・ウォッチ研究所の仕事を続けることができるのは、大変うれしく思います。また、ワールド・ウォッチ研究所は、国連と協力するプロジェクトをもっていますので、ニューヨークに住む利点があります。私のほかにも二人の研究員が遠隔通勤をしています。しかし、通信回線を使った遠隔勤務は、まだ理想的な勤務形態になっているとは思いません。ワシントンのオフィスで日常的におこなわれているインフォーマルな意見交換に加わることができないからです。
持続可能な世界を目指して
――ワールド・ウォッチ研究所の活動姿勢をお聞かせください。 シーハン ワールド・ウォッチ研究所が一九七四年に設立された時は、地球環境問題の分析や観測がおもな関心事でした。具体的には、開発途上国に共通する食糧や水の不足、世界中で起きている種の絶滅、大気の状態の変化などがテーマでした。しかし、最近は、多くの人々が何が問題であるかを理解するようになりました。このため、ワールド・ウォッチ研究所のスタッフは、分析や観測にとどまらず、個々の問題の具体的な解決法を研究し、提案するようになりました。 ――現在、シーハンさんは、どのような研究テーマに取り組んでおられるのですか。 シーハン 都市化および都市基盤の整備が、人々の高い生活水準を維持しつつ、次世代の活動の余地も残して継続できるかどうか、という問題を研究しています。当面は、このテーマについて研究し、執筆と発表を積極的におこなうことにより、この問題への人々の関心を高めていきたいと思っています。 昨年二月に、国連の人間居住センターの要請で、ナイロビを訪れる機会がありました。その旅行で、開発途上国における都市化の問題への関心をさらに強くもつようになりました。全世界で六億から一〇億の人たちが、家もなく、清潔な水、トイレ、電気を満足に利用できない状態で暮らしています。ナイロビのスラム街、ボンベイの路上、サンパウロの貧民街など、発展途上国の至るところでそのような現象が見られます。人口増加のほとんどは、開発途上国の都市で起きています。持続可能な世界を目指す戦略を策定するにあたっては、これらの人々が、よりよい生活を享受できるようにすることを第一に考えなければなりません。最近は、スラム街の人々は、政府による基本サービスの施策を待ちきれず、自分たちの力で地域の環境を改善するようになっています。私は、このような現象について研究し、二〇〇三年版の『地球白書』で、各国政府や国際的な財政支援機関がどのようにすればこのような人々を支援できるかについて、明らかにしたいと思っています。 ――本日は、貴重なお話をありがとうございました。 (二○○二年一月三一日、東京大学本郷キャンパスにて)
(091写真キャプション) 『ワールドウォッチ研究所 地球環境データブック 2001-02』
編著者:クリストファー・フレイヴィン、ミカエル・レナー 監訳者:福岡克也 発行所:(社)家の光協会
本文中に登場する、ワールドウォッチ研究所の年報のひとつ。 環境問題に関する基礎的なデータが収録されている。
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