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[ケーススタディ1] ホームケアサポートシステム -- 常磐 優






(P16-19)

ケーススタディ 1

特集 

生体情報──ヘルスケアの未来

ホームケアサポートシステム――

ITを活用した在宅医療・看護・健康管理支援事業

エム・シー・メディカル株式会社取締役 常盤優

ときわ・まさる

エム・シー・メディカル株式会社(三菱商事100%出資会社)取締役。ヘルスケアネットワーク事業・薬事担当役員。

医療を取り巻く環境と今後の動向

 戦後五○年を経た今日、わが国はこれまでの枠組みや価値観の大きな変革の時機を迎え、まさに模索の最中にあるといえる。とりわけ医療と福祉は、抜本的な医療改革と公的介護保険制度の導入によって、大きな変革の前夜にあり、こうした環境変化への迅速な対応が医療機関には求められている。つまり、従来の延長線上で捉えることはもはや不可能であり、新たな医療システムスタイルの確立が必要不可欠であるといえるだろう。

 すでに、二○○○年四月の公的介護保険制度の導入や患者ニーズの多様化などを背景に、厚労省は、増大する医療費の削減・抑制に向かって、医療保険及およ医療提供体制について抜本的な改革を推進している。なかでも、医療機関の機能分化や病床数の適正化(在院日数の短縮、外来制限、一般病床と療養病床の区分など)など、とくに病院を急性と慢性の症状別に機能分けする制度改革が図られている。

 こうした状況を背景に、現在の病院は、短期の、しかも急性期の治療のみに対応する医療の通過点となっている。しかしながら、人々が期待している医療は、入院治療だけでなく、予防や健康管理、介護、ライフケアにまでおよび、まるで生と死の間にかかる吊り橋のように連なっている。吊り橋の一点としての役割しか果たさなかったこれまでの病院と、利用者の期待や満足感との間にはかなりの隔たりが存在するわけだが、今後の病院は、その隔たりを埋める存在となる必要があるだろう。

 一方で、戦後の日本の医療は施設収容中心の医療提供体制であったため、医療機関の「在宅」への進出は、経営が苦しいからという後ろ向きなものだった。しかし近年は、日本の医療費三○兆円のうち四割ほどを占める入院にかかわる費用の是正を図るため、療養施設や在宅医療へのシフトによる医療費の抑制が進められてきた。昭和五六年の在宅自己注射指導管理料を皮切りに、平成六年には在宅にも「医学管理料」が新設されるようになり、診療報酬改定のたびに在宅医療の枠が広がり、在宅医療推進のための条件整備が進められてきたのである。

 今や入院医療、外来医療に次ぐ第三の医療といわれる在宅医療は、一つの制度として確立しつつあり、今後はさらに進展する高齢化社会を背景に、在宅医療は確実に定着していくだろう。

 ここにおいて在宅ケアは、生活の場にその人の生き方に沿った医療を提供する立場にあり、高度医療を担う病院医療とともに、今後の一つの極を形成するものである。そこで私どもは、新たな医療観や死生観を担う在宅ケアをバックアップする目的で、ITを活用した「ホームケアサポートシステム」を企図したいと考える。

在宅医療がITに期待すること

 在宅で診療を受けている人はもとより、疾病予防・管理においては、日々の健康状態をチェックし、それに応じた医療機関の指導を継続的に受けられることが理想的である。そこで期待されるのが、医療機関と在宅患者間を結ぶIT技術や、簡易在宅用診断機器等の導入である。これによって、患者の日々の生体情報を入手できれば、的確な診療行為が可能となり、複数の医療者で患者をモニタリングすることが可能になる。万が一、かかりつけ医の訪問が不可能でも、その代替要員である別の医師が患者情報をみて診療にあたることもできる。また、ネットワークの構築により、薬剤のデリバリーから医療廃棄物の回収指示、将来的には診療報酬の請求業務を合理化することも可能だ。かかりつけ医を本来業務に集中させ、付帯業務を軽減させること、これがITの役割である。

 また、現在の在宅医療の課題は、異なる医療機関に所属する医師を始めとして、看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士等の医療プロフェッショナルが、患者の支援体制を地域で固有に構築することにある。ここに、調剤薬局や民間のサービス業者が参画してくると、さらに機能が分化して利害が発生するため、一人の患者・家族に対する個別の医療ニーズを満たすには、複雑なチーム医療が必要となる。在宅かかりつけ医にとって、これらの特殊性が在宅医療を推進していくうえでの障害となってきた。

 この問題を解決するのがIT技術である。チーム医療のメンバー間で患者情報の共有化が図れるかどうかが、在宅医療の成否の鍵となるだけに、ITに寄せる期待は非常に大きいものがあるといえるだろう。

ホームケアサポートシステム事業とは

 ここで私どもが提案するホームケアサポートシステムについて紹介したい。

 ホームケアサポートシステムとは、居宅に住む利用者に対して、通信回線・技術を利用して、あたかも家がそのまま病院になったかのような保健・医療サービスを提供するものである。具体的には、各個人の生体情報や病態情報(生活習慣病情報)を、自動生体情報通信端末装置を介して医療機関または医療情報管理センターに収集し、情報処理(バイタルチェックや画像処理等)をおこなうというもの。また、これらの情報をデータベース化し、在宅患者等支援対象者と医療機関(病院、診療所、訪問看護ステーション等)との双方向伝送を図ることで、より的確かつ綿密な在宅診療・看護・介護・指導推進に活用できる。さらには、地域の保健・医療・福祉基盤の整備、医療費の削減や機能分化の推進にも寄与できると考える。

 システムとしては、医療機関から退院し、在宅治療や療養施設に移行した患者に対して、簡易型検査機器(生体センサ)を用いて、医療機関または在宅サービス業者と在宅患者宅との間に情報通信機器を設置し、公衆回線やインターネット網、PHS網等の通信回線を介して、患者の生体情報を医療機関に送信するものである。送信されたデータを医療機関で一元管理するとともに、必要に応じて患者にメッセージを送り、患者宅内に設置された生体情報通信端末装置からそのメッセージをプリントアウトすることもできる。つまり、本システムを用いれば、在宅においても診断・診療、看護、指導、介護などの患者支援をおこなうことが可能で、医療機関や療養施設と同じような療養環境を実現することができるのである。

予防医療を変える

健康管理支援システム

 一方で、在宅医療とともに現在、医療の課題となっているのが、生活習慣病のための予防医療の領域である。

 わが国における生活習慣是正の対象者は高血圧症三五○○万人、糖尿病一三○○万人、高脂症や肥満症二○○○万人と国民の半数以上となり、既存の病院や診療所、保健所というような医療システムでは、もはや対応できない時代となってきた。そこで、国民一人ひとりの生活習慣を含めた健康状況を把握し、それに基づいて国民一人ひとりに対して生活習慣是正とその適切な医療支援をおこなう新たなシステムの構築に期待が寄せられている。

 慢性疾患の予防のためには、生活習慣を含めた日常の健康状況と職域や地域での健診データを時系列で把握し、情報の共有化を図ることが重要である。そこで私どもが、「生活の場における健康管理システム」として提案するのが、先述のシステムを応用した「健康管理支援システム」である。

 本システムは、簡易家庭用検査機器(生体センサ)を用いて、各個人の日常の生活習慣と病態情報を、情報通信機器を介して健康情報センター(医療機関、民間企業などが運営)に収集し、情報処理をおこなって、本人と医療機関(提携先病院・診療所、主治医のいる医療機関等)に伝送し、生活習慣病および疾病予防に対して全人的医療支援をおこなうことを目的としたシステムである。将来的には、これらの病態と生活習慣の情報に基づいて、運動管理や栄養管理等の生活リズム管理とも直結したいと考えている。

ITによる医療機関連携

ネットワークに期待

 今後は、医療機関の機能分化を推進する意味で、医療機関間の情報の共有も進められていくことになるだろう。すなわち、インターネットなどを通じて地域の医療機関がネットワーク化され、中核病院と診療所が紹介患者の診療情報を相互にやり取りするようなシステムの構築が想定される。ITによる医療機関連携のネットワークが本格的に稼動すれば、地域にある病院、診療所、介護保険施設などが、あたかも一つの病院のように機能するようになるにちがいない。

 たとえば、MRIやX線CTなどの診断機器の利用状況、特定領域の専門医の所在、ベッドの空き状況などの情報を共有し活用することで、地域にある医療資源をより有効に利用できるようになる。あるいは、検査結果などの共有により、患者には医療機関が変わっても継続的な医療が提供されるようになる。病歴や服薬歴などの情報が共有され、同じ検査の重複が減るなど、患者の安心感も高まることになるだろう。

 IT活用の成果はいずれ、日本の医療制度をも大きく動かしていくにちがいない。制度の抜本的な改革には、まず医療の実態を正確に把握することが必要であり、全国の医療機関から客観的なデータを収集することができれば、二一世紀に合った合理的な医療制度を策定することができると考える。

 今回、私どもが推進するシステムは、今後増大していく在宅ケアのより具体的な支援策や、在宅患者に対する診療形態のあるべき姿、生活習慣病予防の効果的な改善策を示すものだ。医療機関と居宅間を情報化により結び付け、在宅患者の日常の病態把握情報を医療機関間で共有できれば、良質な医療を合理的・効果的に提供できると信じている。

(P17図キャプション)

これからの医療供給体制

(P18写真キャプション)

テレメトリー指輪型パルスオキシメーター

生体情報通信端末

(P19図キャプション)

在宅医療支援システム

生体センサ

「テレメトリー指輪型パルスオキシメーター」

 「無意識・無拘束・無侵襲」をテーマに開発された生体センサ「テレメトリー指輪型パルスオキシメーター」。指にはめた時点で電源が入り、計測の煩わしさを意識することなく、指にはめていれば、自動的に血中酸素飽和濃度(SpO2)と脈拍数を継続的に測定し、計測データの蓄積をおこなう。内蔵されているテレメトリー機能(微弱電波)により、患者宅内に設置された生体情報通信端末装置(双方向中継端末装置)に計測されたデータを定期的に自動送信する。

生体情報通信端末装置

 各種センサからの測定データを微弱無線で受信し、医療機関・データセンター等に測定データを電送する装置(アナログ網・ISDN網・PHS網に対応)。セッティング後、基本的に利用者側で調整する必要はなく、測定データの表示が可能。また、医療機関・データセンター・サービス業者等からのメッセージ、問診表示が可能(将来的には販売価格との兼ね合いもあるが、ボイスメール等の付加機能などのバージョンアップを図る予定)。

患者情報管理ソフト

 生体情報通信端末から伝送された生体情報データを受信した医療機関が、患者のデータおよび個人情報を管理、メッセージ編集送信などをおこなうためのサポートソフトウェア。

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