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(P24-27) ケーススタディ 3
特集 生体情報──ヘルスケアの未来
身体の異状をいち早く検知・発報する―― ウェアラブル・ワイアレス体調モニター 異状自動警報システム(リストケアシステム)
山武ビルシステム(株) 健康福祉事業開発室 課長 許斐秀則
このみ・ひでのり 1951年福岡県生まれ、1975年(株)山武(旧山武ハネウエル(株))入社、20数年工業システムの国際事業部で市場開拓および海外との直接営業を担当し、現在、海外の経験を生かし、山武ビルシステム(株)健康福祉事業開発室にて最先端の海外技術を日本市場に導入するなど、ヘルスケア新事業を展開中。
高齢社会到来とフィンランドの試み
現在、わが国では急速に高齢化が進展しており、かつて経験したことのない長寿社会が到来しようとしています。一九九四年には、高齢者(六五歳以上)人口比率が一般に「高齢化社会」と定義づけられる一四パーセントに到達。厚労省の推計によれば、今後も高齢者は毎年六○万人ずつ増加し、西暦二○二一年には国民の四人に一人が高齢者になると予測されています。この高齢者人口増加の速さは他の欧米諸国をはるかに凌ぐものであり、早急なる高齢者対策が求められています。 こうしたなか、国連が提案する障害者問題の長期戦略テーマ「万人のための社会に向けて」(Toward a Society for All)は、次のような問題提起を掲げています。「人は誰でも自分自身にとって大切なゴールに到達するために、自身の生活を”コントロール“しようとする。身体に障害をもつ人々が自身の生活をコントロールでき、それによって他の人々と対等に自身の福利を維持できるためには、彼らの特別な身体能力とニーズが考慮されなければならない。しかし、今の時代は製品を実際にだれが使うのか限定しにくい。人によって能力が異なるからだ。老人を例にとるなら、彼らは高齢であることが唯一の共通点である」 この問題提起に、いち早く取り組んでいる国の一つがフィンランドです。フィンランドでは国民一人ひとりが広範な保健サービスを受ける権利をもつことが広く認識されており、自治体が住民の健康をあらゆる方法で推進しなければならないことが義務づけられています。このことはフィンランドにおいてサービスの大部分が公金でまかなわれていることを意味しています。 フィンランドの福祉・保健省は、高齢社会対策のなかで大切な役割を担っており、一九九九年、同省は二○○○〜二○○三年に向けたガイドラインを発表しました(福祉および保健の目標および行動計画2000-2003)。高齢者サービスの目的は、彼らを日常生活において支援し、社会的統合に向けて彼らの能力を伸ばし、また必要なケアを得られるようにすることにあります。同時にサービスの的確な提供と提供のしかたにも注意が払われています。入手可能なサービスの種類を増やし、さまざまなニーズに応えるべく多様化がなされているのです。
フィンランドで誕生した、 世界初の異状自動通報システム
このような背景のもと、フィンランドは今や、ウエルネス分野において世界一の先進国に成長しています。とくに遠隔医療やジェロンテクノロジー(老人のための人間工学)の分野では、近年なされた数々の研究と試験的利用が技術的あるいは商業的アプリケーションとして実を結びはじめています。なかでも注目されるのが、開発計画や新サービスの商業化を加速するために打ち上げられたiWELL計画です。 テケス(Tekes:フィンランド技術庁)の一技術開発プログラムとして遂行されるiWELL計画の焦点は、世界市場を見据えた、競争力のある福祉機器やサービスを開発することにあります。自立した在宅生活が困難な高齢者や障害者、難病者たちが、健康でバランスのとれた暮らしを送るためのソリューションを見出すことがiWELLの主眼です。具体的には、高齢者、障害者、難病者のための製品やサービス、護身および緊急安全のためのデバイス、移送サービス、電子情報サービス、遠隔医療、遠隔モニタリングなどの福祉商品の開発を推進するというもの。一方で、健常な就業年令者を対象とする製品やサービス、運動器具、フィットネス、職場保健などの分野で国際競争力をもつ製品やサービスを開発するほか、定年退職者もターゲット・グループとしています。 このiWELL計画に後押しされて生まれたのが、世界初の体調モニター・異状自動通報システム「Vivagoリストケア」です。 リストケアは、通常一時間といわれる救急救命時間「ゴールデンアワー」内に、いかに早く体調の異状を検知し、通報をするかということを基本設計値としています。体調異状を早期に発見できれば、本人の救命率の向上およびケア・医療費用の軽減が可能になります。さらに予防領域においては、体調の持続的低下を注意喚起メッセージとして発報することにより、より軽い状態変化での異状を発見できます(図1)。 腕に装着されたリストケアは、個々人の大きな動き、微細な動き、皮膚の温度、リストケア装着有無などのモニター項目を常時監視します。さらに、リストケア本体の自己異状診断もしており、異状が認められた場合は、自動で警報を発報します。また、施設向けとして開発されたものには、個人別の二四時間の生活リズムカーブを生成し、そのカーブを用いて個別に動きの状態を分析することができます。停電時には、バッテリーでデータをバックアップできるという安心性もそなえています。
在宅用と施設用の違い
在宅向けリストケアの場合、受信器は公共の電話回線に接続します。警報が発報されると、電話回線を通じて登録された受信センターに自動ダイアルし、話中であっても必ずかかるまで自動ダイアルし続けます。電話が通話状態になると、受話器を持たずに話すことが可能になり、そのままの状態で話をすれば、受信器の中に入っている高感度マイクロフォンおよびスピーカで相手と対話をすることができます。 施設向けはリストケアの電波を受信して、受信した受信器の位置情報を含め、センター側の監視パソコンにデータを送信します。施設の広さおよび建物に使用されている材料により、受信器の設置数は異なります。受信器間はシールドケーブルでつながっており、パソコンの中に入っているリストケアの信号を受信するソフトウエアに取りこまれ、顧客情報、警報内容、履歴、リアルタイム生活リズム解析カーブ等がパソコンの画面上に表示されるしくみになっています。警報内容は施設・院内の携帯電話等に自動転送することも可能です。さらに、使用者の過去の生活リズムデータがパソコンの中に記憶されるため、いつでも必要な時にデータを呼び出せ、その人の状態変化を解析することができます。 フィンランドにおける、実際のアクティビティ・カーブ(解析)の事例を紹介しましょう。 図3に示すのは、昼間のみ看護師が常駐し、夜間は警備会社に委託している施設の例です。患者が午前三時五○分頃、夜中トイレに起きて突然無意識に転倒してしまい、約三○分後に自動警報が発報して、夜間委託している警備会社に体調異状通報が入りました。発報後、即座に警備員が出動して、午前五時過ぎに救助され助かった実例です。このまま転倒状態で翌朝の看護師の出勤を待っていた場合、患者の状態がどうなっていたかは定かではありません。
リストケアの将来性
この世界で初めてのウェアラブル・ワイアレスで複合センサを利用した体調モニター・異状自動通報システムは、現在、広範囲な応用が可能であるとして注目されています。短期的な見通しとしては、受信器のモバイル化により、外出先でも自動的に異状をモニターすることが可能になり、位置センサ(GPS)等を内蔵することにより、より早く通報された場所を特定し、早期の救命が可能になると考えられます。 また、地域ケアをするうえで最適な予防ケア支援機器となり得るだろうと期待が寄せられています。リストケアのコンセプトおよび将来の製品開発の方向は予防医学領域にあり、いかにその人の異状をいち早く検知するかに主眼が置かれています。フィンランドでは次期製品の開発がすでに始まっています。 二一世紀は予防の時代であり、予防は治療に勝るということを念頭に置き、私どもも最適かつ最新鋭の機器・サービスの開発に向け取り組んでまいりたいと思います。 (リストケア詳細 http://www.canplaza.com)
(P25図キャプション) 図1. Vivagoリストケアの動作目標領域
図2. リストケアのモニタ項目と警報内容
(P26図キャプション) リストケアの機能
(P27写真キャプション) 図3. アクティビティ・カーブ(解析)の事例(フィンランド)
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