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[NI特別企画] EXPO 2005 AICHI 〜 万博通信 -- 荒木 由季子




(P40-43)

特別企画

EXPO2005 AICHI〜愛知万博通信

2005年に愛知県で開催される21世紀最初の国際博覧会「愛・地球博」。

「自然の叡智」をテーマに掲げたこの博覧会は、広く環境と人間の関係を考えて行こうという万博といえる。

開催まで3年を切った今年、いよいよ具体的にプロジェクトがスタートし、

万博ホスト国である日本政府も「人間社会と自然の新たな関係を創造する」というコンセプトを発表。

そして、同出展の環境・エネルギーに関するアドバイザーとして、本誌監修である板生清・東京大学教授が就任した。

そこで、経済産業省博覧会推進室長の荒木由季子氏に、博覧会全体の構想と、

自然・人間・技術のインタフェイスについて、板生教授がインタヴューをおこなった。

愛知万博のキーとなるのは、

人間と技術のインタフェイス

荒木由季子

経済産業省 博覧会推進室長

聞き手板生清

本誌監修

あらき・ゆきこ

1960年、東京都生まれ、東京大学工学部卒業。1983年に通産省に入省。資源エネルギー庁、科学技術庁を経て、2001年4月、博覧会推進室長に就任。

(写真キャプション)

荒木由季子氏

自然と人間の建設的な関係を求めて

――この万博は広く「環境」をテーマとしているわけですが、会場予定地の利用法について国際的な環境団体から批判が出るなど、計画段階からさまざまな紆余曲折があったと聞いています。環境破壊と万博開催との折り合いをいかにつけていくかは、現時点でも大きな問題だろうと思いますが、荒木さんはこの事業をどのように進めていこうとお考えでしょうか。

荒木―この博覧会のテーマは「自然の叡知」というものですが、これを「自然保護」「環境保護」という単純なイメージでしかとらえていない方が多いような気がします。しかし「自然の叡知」というからには、人間と自然のもっと積極的な関わりを考えていくものであるべきではないでしょうか。

 たとえば、当初会場に予定されていた土地の近くで絶滅危惧種のオオタカの巣が見つかり、会場計画の変更がおこなわれました。しかしオオタカが見つかったら、そのまま何も触らずにやめようというだけでいいのでしょうか。現在の予定地の近くでまたオオタカが見つかったらどうしようかと、関係者は今も心配しているのですが、では、オオタカと共生できる方法は本当にないのでしょうか。オオタカも含めた猛禽類は、じつはあまり生態がわかっていないそうですが、それならむしろ、この機会にもっとよく生態を調べたってよいわけです。自然に対して「触らぬ神に祟りなし」というような姿勢でいるだけでは、何も生まれてこないのではないか――、そのようなことを考えさせられました。

 ですから単純な開発否定、技術否定の自然至上主義ではなく、もう少し建設的な関係を見出していくものにできたらよいと思っているのです。

二一世紀は「人々のための科学」の時代

――これからの科学技術は、技術のための技術ではなく、人々のためにあると、吉川弘之東大元総長が本誌創刊号の巻頭対談でおっしゃっています。今お話しされたような動物の生態研究も、これまではいちいち学者が木に登るなどして生態を観察していたかもしれませんが、もっと効率よく研究できる技術はすでにあるわけです。たとえばウェアラブルコンピュータや小型PHSなどを使えば、動物の行動はずっと楽に観察できます。そのような自然環境分野、あるいは生活分野には、まだまだ技術が行き渡っていないと感じますね。

荒木―私は以前、医療福祉機器産業室の室長をしていたのですが、医療分野で最先端技術が導入されている一方、福祉や生活支援の分野にはほとんど技術は入ってきていませんでした。現場に技術や産業化を否定するような空気があることも事実なのですが、そうはいっても「寝たきりの人の体重を楽に測りたい」など、ニーズは確実にあるわけです。それは必ずしも最先端の技術ではなくとも、今ある技術を応用すれば簡単にできることなのですが、ニーズを感じている側はそのようなことは思いもよらなくて、非効率な状態に甘んじている。技術者サイドとニーズのある人々の間には、コミュニケーションが成り立っていないことを思い知らされました。

――それほどのハイテクではなくても、技術の恩恵に浴していない分野にそれを行きわたらせることは必要ですね。

荒木―ハイテクに対してローテクと言いますが、ローテクと言うとあまりイメージがよくないので、私は「ポピュラー・テクノロジー」と言っています。最先端のチャンピオン・データを目指すのも必要かもしれませんが、生活の隅々にまで技術の恩恵を行き渡らせるには、むしろ、すでにある技術をどう応用していくか、いかに技術をポピュラーにしていくかがポイントなんです。

――私は長く産業技術に携わっていたのですが、産業化やビジネス優先で考える現場では、そのような小さなニーズはやはり後回しにされてしまうことが多かったですね。じつはそういうところにこそ、これからの新しい産業の芽があるのではないかと思いますが……。

荒木―そうですね、開拓すれば大きい産業になる分野はまだまだあると思います。

 しかし、これまでのような産業技術の考え方では、人間と機械の接点、いわゆるヒューマンインタフェイスの部分はうまくいかないことが多いのです。企業のいろいろな提案を聞くと、モノからの発想にとどまっていて、生活の場にそれがあったらどうなのか、人間が使う場合にどうなのかといった視点が、まだまだ欠けています。しかし人間側からの発想をつきつめてゆけば、新しい産業の形態は確かに出てくるだろうと感じています。――まったく同感です。私はそれを「ソリューション工学」と名づけているんです。技術はあくまで単なる手段であり道具なんです。いわばノコギリやカンナの類です。何をどうしたいかが最初にあるはずなのに、今はノコギリやカンナを売ることばかり考えている。これからは、これをするためには何をどうするかという、ソリューションが重んじられるような形をとっていく必要がある。

荒木―おそらく今は、どこの分野でもそれが求められています。

――ハイテクをやっている人と、現場でニーズをもっている人とをつなぐもの、それがソリューション工学なんだと思いますよ。

自然との関係を考えなおすために

――さて、万博全体の構想はどのようなものになるのか、少しお聞かせいただけますか。

荒木―二一世紀の万博は非常に難しいといわれています。大阪万博の頃は日本もまだ経済成長真っ只中で元気がよく、万博もそういう時代にふさわしい国威発揚の場といえました。新しい未来を見せてみんなに元気を出させるというような。しかし今はもう、同じような方法は通用しなくなっています。エンタテインメント性も必須の要素ですが、今はそれだって日常化してしまい、万博でなければおもしろいもの、珍しいものを見られないなどということはありません。そういう中でわざわざ万博をやる意味は何なのだろうか――。

 「自然の叡知」というのは、非常に含蓄のあるテーマだと思います。二一世紀というのは、人間と自然、あるいは経済活動や技術を含む人間社会と自然との関係を、今一度考え直す大きな節目の時代なのではないか。私はそのように「自然の叡知」という言葉をとらえているんです。

――環境問題はこの時代のもっとも重要な問題のひとつですからね。

荒木―その環境問題というのも、一言で言ってしまっているけれども、いったい何なのか。自然を守れと言っている人もいますし、昔に戻れと主張している人たちもいますが、とはいえ江戸時代の生活スタイルに戻れと言っても戻れるわけではないですし、戻りたいと思う人はそれほどいないでしょう。極端な主張というのは、必ずしも私たちの本当に目指すべき方向を示しているわけではないと思います。それでは未来に対して夢がないような気もします。

 確かに経済至上主義というのは、もうないだろうと思いますし、エネルギーを無駄にしている部分など、今の生活において考えるべき問題は大いにあります。エネルギーや物質を浪費する現代のライフスタイルで、この先このままいけるかというと、やはりそうではないわけです。その生活を変えるためには、普通の生活をしている人たちの意識を改革しなければいけませんね。そしてそれは、技術をそこに折り込んでいくことなしには実現し得ないのではないかと私は思います。

――技術を持っている側としても、これまでの産業的な発想のままではなく、ヒューマンインタフェイス、そしてネイチャーインタフェイスの考え方で技術を浸透させる必要がある。

荒木―そうですね。今までは、最先端の技術を入れればまあ何とかなる、というようなところがありましたが、そういう形ではなく、見えないところ、自分たちの気がつかないところにいろいろな形で技術を浸透させていく。そういう中でうまく自然と折り合いがついたり、持続可能な形でのライフスタイルが実現していくのだと思います。それを「自然の叡知」というテーマの中で体感できるようにしたいですね。

――とくに万博では海外からの出展も多数ありますから、「自然の叡知」というテーマの下で、各国のさまざまな展開が見られればおもしろいですね。

荒木―海外のケースから学ぶことも、自然環境が違うとこんなケースがあるんだなどと違いを感じる部分も多いと思います。技術を実際に活用するうえでは、文化や自然環境に制約される部分もあるでしょうから、そういうこともわかるようにしたいですね。

希望のもてる未来を!

――博覧会には、一〇年後、一〇〇年後に生活はどう変わるのか、そのためにどういう技術が開発されていくのか、最先端のハイテクがどう生活に影響をおよぼすのかなどを示すことも期待されると思います。

荒木―そういうものにもしたいですね。一〇〇年後、一〇〇〇年後といった自分の人生とかけ離れた時代ではなく、たとえば自分の孫の時代ぐらいの、ある程度自分たちが真剣に考えられるような未来の生活を見せたい。二一世紀の万博であっても、未来を見せる役割は変わらず求められていると思いますから。

――地球環境などの未来を見せると、今は結構暗くなりそうですけどね。

荒木―でも、暗いだけではダメだと思うんです。もちろん現実を見ることは大切ですが、やはり博覧会に来たら、未来を感じて、「よし、自分もここをちょっと考えてみよう、頑張ってみよう」と前向きに思って帰っていただきたい。とくに若年層、子どもや学生さんには、たとえば修学旅行や学校の課外授業などでも来てほしいんです。そして、子どもたちが将来自分がしたいことや、今後どうなっていくのかを考える時に、この博覧会で見たことを思い出してくれればいいですね。

 大阪万博はやはり何らかの一つの節目みたいなもので、それぐらいのインパクトがありました。あの時には新しい技術だけではなく、新しいライフスタイルや産業も示されたんです。ファーストフードが初めて導入されたのも大阪万博ですし、外国人をあそこで初めて見たという人も大勢いた。それだけのインパクトを与えるのは大変かもしれませんが、今回の博覧会も、とくに子どもにとって心に残るものであれば、それだけでも価値があるだろうと思います。

――当時と違って今はいろいろな情報が溢れていますし、子どももちょっとやそっとのことで感動などしませんから、難事業であることは確かですね。

荒木―どうしたらインパクトを与えられるエンタテインメントになるか……。たとえば、開幕したらそこに何かモノが置いてあってみんな見る、ということだけではなく、ずっと継続的に何かがおこなわれ、次に行くと違う場面が見られるようなスタイルも考えています。政府出展事業も、会期前から会期後まで継続してつねに変化しているような、そういう出展、催事を考えたいですね。

――たとえば、思いつきですが、竹などの植物が見る見るうちに伸びていく――というような技術展示はどうでしょうか。

荒木―そうですね。そのように、リアルタイムで実際にモノをつくったり、育てたりしているところを見せるというのも、一つの新しい切り口になるかもしれないと思っています。

――継続的に変化していくモノづくりの現場というのには、農業も当てはまりますね。現代の農業はサイエンスのフロンティアのような部分もありますから、最先端を楽しく見せることができる分野といえるのではないでしょうか。三年後がどうなるか、大いに期待しています。

 また、何かお手伝いできることがありましたら、WINや学生とともに力を合わせていきたいと思います。本日はありがとうございました。

(P42図キャプション)

政府出展3事業(日本政府館、サイバーパビリオン、

里山日本館。いずれも仮称)の構成概念図

会場の全体配置図

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