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[開発最前線] プロジェクターの新標準、小型・高輝度モバイルモデル -- セイコーエプソン










(P48-51)

開発最前線1

小型プロジェクターをノートパソコンとともに持ち歩き、

取引先ではカタログ代わりに、パソコンのプレゼンデータをプロジェクターで映し出す。

より軽く、より明るく、そして使いやすく――。今、プロジェクターの世界が大きく変わりつつある。

プロジェクターの新標準

小型・高輝度モバイルモデル

セイコーエプソン株式会社 

映像・デバイス応用機器事業部

(P48写真キャプション)

〈ELP-730〉

 今年四月に発売されたエプソンの小型液晶プロジェクター〈ELP‐730〉を手に取って、驚いた。軽い。片手のてのひらに、軽々載せられるほど。専用の手提げバッグに入れれば、もうプロジェクターだと思う人はいないだろう。

 エプソンはこれを「スーパーモバイルプロジェクター」と呼ぶ。ズバリ、持ち歩くプロジェクターである。そのためには、どのような性能、機能が必要なのか、それを使う側の立場に立って、徹底的に追求したという成果がこれだ。

小型化と明るさの両立

 最大のポイントは、小型化と明るさの両立だった。重量一・九キログラム、なおかつ、この大きさでは常識破りの二〇〇〇ANSIルーメンという高輝度を実現。高輝度一五〇〇〜二〇〇〇ANSIルーメンクラスではもちろん、3板式液晶プロジェクターとして、世界最軽量である。

「プロジェクターにとって、明るさと小型化というのは、相反する命題なんです。明るくしようとすれば重くなり、小型化すれば暗くなってしまうというのが常識だった。これを打破しようということから出発したんです。それにしても、二キロを切るというレベルで明るさを両立させるのは、本当に大変でした」と、開発を率いた伊藤治郎(VD開発設計部長)は感慨深げだ。

 小型化・高輝度化を実現するには、当然プロジェクターの心臓部である光学系自体を改良するしかない。幸い、液晶3板式光学エンジン自体、エプソンが九四年に世界に先駆けて開発したもので、ここには独自の技術・ノウハウがたくさん詰まっている(図1)。3板式とは、画像の色情報をR・G・Bの三原色に分け、再びプリズムで合成する方式。画質にすぐれ、今では世界のプロジェクターの液晶ほとんどがこの方式を採用するという、文字どおりエプソン発の世界標準技術である。

 今回、小型化・高輝度化のためのキー技術となったのは次の三点。

 まず、照明系では「集光型インテグレーター」を開発(図3)。ランプからの光の集光効率を向上させるとともに、部品の小型化・短光路化に成功。

 次に、液晶パネル「ドリーム2」の開発。パネルの開口率が従来よりも二〇パーセントアップし、高輝度化を実現。

 さらに、電源やランプなど要素部品についても、徹底的に小型軽量化を図った。

ユーザーから見た使いやすさ

 モバイル用途として、もう一つ重要なのが「使いやすさ」。設置型と違い、モバイル機は携帯性が重要だ。そして、出先でプロジェクターを使用する際、接続から設置、投写までにあまり時間や手間がかかっては、見るほうもイヤになってしまう。また、どんな場所に置かれるかも予想できない……。

 携帯性では、本体の小型軽量化には成功したが、リモコンなどの付属品がスペースをとってしまっては意味がない。そこでリモコンは、小さなカード形とし、本体収納型に。リモコンにはページ送り・戻し機能を搭載し、PowerPointで作成した企画書なども操作しやすくなった。

 次に、「自動台形歪み補正装置」。プロジェクターを置き、電源を入れると本体の傾きを検知し、スクリーンに投写される映像の台形歪みを自動的に補正する。従来はマニュアル操作で補正していたが、これでセッティングにかかる手間がずいぶん省ける。

 ただし、モバイル機能を重視しつつも、プロジェクターとしての性能も進歩していることは見逃すべきでない。二〇〇〇ANSIルーメンという、部屋の照明を消すことなく投写することができる十分な明るさ。ユーザーの耳も肥えてきたことから、静音性を向上させた。また、画像面では六つのカラーモードを用意(sRGB、ゲーム、シアター、ミーティング、プレゼン、ノーマル)、用途に応じた最適な高画質映像を提供する。

 こうした発想に一貫しているのは、次のような姿勢だ。「実際に既存モデルのプロジェクターを使って営業の場面を設定し、それをビデオに撮って、一つ一つ検証することから始めました。ケースからの取り出しやすさ、セッティングにかかる時間、リモコンの使い勝手……。ユーザーの視点に立って何が必要なのかを常に考えてきた結果なんです」(伊藤)

製販一体での商品開発

 ユーザーの視点に立つこと。それをマーケティングの側から実践したのがVD営業部長の小林政廣である。

 「ユーザーが今プロジェクターに何を求めているのか、まずそれを探るために広範な顧客満足度調査をおこないました。商品スペック、ブランドイメージ、アフターサービス、販売チャネルは妥当かどうか……顧客はそれらトータルなクオリティで、買うかどうかを決めるわけですね。そして、新たなマーケットを創造するために、『セールスマン一人に一台』という商品コンセプトを練り上げていった。まさに開発とマーケティングセールスが一体となってつくった商品なんです」

 じつは伊藤と小林のコンビは、今回に始まったのではない。エプソンがプロジェクター事業に参入したのは、八〇年代後半。八九年に発売された第一号機「VPJ700」は、世界初の3板式液晶プロジェクターだった。しかし当時はまだニーズが少なく、事業は存続の危機に立たされる。メンバーは開発、営業合わせても数人体制に縮小。まさに背水の陣で再出発を図る。この少数精鋭団を率いたのが伊藤と小林だった。

 世界中の市場調査をもとに、「PCを使ったプレゼンテーションデータ投写」にニーズを絞り込み、そして体積・重量・コストは二分の一、明るさは二倍にという「1/2・2倍」をスローガンに掲げ、九四年、世界初のデータプロジェクター〈ELP3000〉を発表。ウインドウズ95、PowerPointなどの登場と重なる幸運も手伝って、爆発的なヒット作となった。その後もエプソンは、次々と「世界初」「ナンバー1」商品を送り出し、また九七年に中日産業技術賞「通商産業大臣賞」、九八年「朝日新聞発明賞」、〇一年「大河内記念生産賞」など、さまざまな受賞歴を誇っている。

〈ELP‐3000〉は、データプロジェクターという世界を切り開くメモリアル的商品となった。モバイル機として一・九キロ、二〇〇〇ANSIルーメンを実現した〈ELP‐730〉もまた、新たな世界標準になるかもしれない。

(P49 コラム)

市場の変化をとらえ,

プロジェクターの可能性を広げる

映像・デバイス応用機器事業部長、専務取締役

木村登志男

 プロジェクター分野は今、大きな転換期にあります。プロジェクターといえば、高性能=高価格というのが常識でしたが、ここ一、二年、それが急速に崩れつつある。競争によって低価格化が進み、去年一年で三〇パーセントも価格が下がったのです。

 これをどうとらえるか。高性能・高価格の世界に居続けたいという人もいるでしょう。しかし、パソコンやプリンタは一年で五〇パーセントも値崩れしたことがある。それを考えれば、まだ序の口です。それは販売チャネルの変化を見ても明らかで、元来プロジェクターはオーディオビデオ系チャネルの商品ですが、米国市場では一、二年前からコンシューマ・エレクトロニクス系が勢いを伸ばしてきた。彼らはこれから売れそうな商品に注目します。つまりパソコン、プリンタ同様、プロジェクターも間違いなく低価格競争へ突入する。しかし、その波を避けようとすると転覆してしまう。高波に果敢に舳先を向け、がむしゃらに進むべき時期なのです。

 今こそ積極策に転じ、ブランドとして世界一のシェアになろうというのが私たちの考えです。今は米国のインフォーカスをわずかに下回っていますが、今年中に逆転できるでしょう。その理由は三つ。まず、商品力。エプソンはプロジェクターの心臓部であるTFT液晶表示パネルと光学系の優れた技術を多数もっていること。次に製造力・コスト競争力。先発のプリンタ分野でも示したように、強力な製造力を背景に競争を勝ち抜く力をもつこと。そしてブランド力・販売力。エプソンは、プリンタとプロジェクターを軸に、オン・ペーパー/オン・スクリーンの両面から「カラーイメージング・ソリューション」企業として認知されてきました。そして、プロジェクターの販売チャネルは前述のごとく、一部マニアのためのAV系から、より一般的なコンシューマ系へ、さらにリテイラー系へと移っていくはずです。それはまさにエプソンがプリンタで築き上げてきたチャネルにほかなりません。

 それと同時に、プロジェクターのもつ可能性をどんどん広げていかなければならない。今まではビジネス、教育分野をターゲットに小型化、高輝度化、低価格化を進めてきましたが、価格がもっと下がれば、エンタテインメント分野でも使われるでしょう。映画やゲームでは、プロジェクターの大画面の独壇場です。その場合、かつてステレオがシステム化で大衆化したように、プロジェクターもオーディオ機器などと組み合わせて商品化することで、もっと可能性が出てくるでしょう。また、一昨年わが社は世界初のネットワークプロジェクターを発売しましたが、たとえば教育ソフトを共同開発し、それと抱き合わせることによってもっと教育市場を広げられる可能性があります。つまり、用途や楽しみ方など、シチュエーション自体を商品で提案していくということですね。

 私自身、今までいろんな事業部を渡り歩いてきましたが、こんな大きな可能性をもった分野は経験がないほどで、じつは楽しくてしようがないのです(笑)。今後もユーザーのニーズを常に先取りし、市場をぐいぐい引っ張っていく所存です。

(P50図キャプション)

図1 エプソンのプロジェクター技術――エプソンから発進した世界の標準技術

図2 3板式光学エンジン

図3 集光型インテグレーター

(P50写真キャプション)

〈ELP-730〉と伊藤治郎(VD開発設計部長)。

片手でラクに持てるほど。

(P51図キャプション)

図4 エプソンの液晶プロジェクター系譜

(P51写真キャプション)

開発を率いた伊藤(左)と小林政廣(VD営業部長)

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