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[ウェラブル最前線] 燃料電池


(P76-77)

ウェアラブル最前線

燃料電池

森昌文(本誌記者)

高い発電効率をもつ「ミニ発電所」

 燃料電池が話題になっています。もともとは電力の供給源として、ビルや工場あるいは家庭に分散して設置する、いわばミニ発電所として開発されてきましたが、次世代の自動車のエネルギー源に向けての開発も活発になっています。そしてさらに小型のエレクトロニクス製品の電池としても注目されてきました。

 エレクトロニクス技術の進歩で、パソコンや携帯電話など多くの便利なIT機器が身近なものになっています。それらの装置には半導体の電子回路や精密メカ、表示デバイスなどが密度高く実装されていますが、当然のことながら、それらが働くにはエネルギーが必要になります。家庭やオフィスなどではコンセントから電気の供給を受ければよいのですが、モバイルでは電池が頼りです。電池は、それが使われる装置の大きさや稼働できる時間ばかりでなく性能にまで影響します。高速の電子回路とするとそれだけ消費電力が多くなるからです。小型で軽く、大容量をめざした電池の進歩がIT社会を支えてきたともいえます。しかしながら、これまでの電池技術での限界が見え始めました。従来とは原理の異なる、飛躍的に性能を高めることができる新しい電池が求められているのです。それによって、たとえばブック型のパソコンであれば一度の充電で大陸間の飛行の十数時間を超える連続動作が可能になりますし、携帯電話でも電力消費量が多い動画像の扱いを電池切れを心配せずにおこなうことがでるようになります。

 電池にはため込んであるエネルギーを使いきってしまうと寿命となるものと、充電して繰り返し使えるものがあります。昔から乾電池として親しまれているマンガン電池や、腕時計などに使われている酸化銀電池は前者で、自動車の鉛蓄電池や、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池などは後者です。これらは化学エネルギーの形でため込みますが、それを担う媒体材料は電池の中につくり込まれます。

 これに対して燃料電池は、名前は「電池」ですが、ミニ発電機といったイメージがあります(機械的な動きがなく化学エネルギーを使うところはまさに電池と同じなのですが)。「燃料」となる水素と空気中の酸素を反応させて、水の電気分解とは反対に、電気と水を発生させます。供給する燃料を、反応器で燃焼して、電気を起こすのが燃料電池ということになります。

 燃料電池は発電の効率が高く、重量あたりの容量、あるいは容積あたりの容量で、現在もっとも優れているリチウムイオン電池に比べて一桁近い大幅な向上が期待されています。さらにカートリッジの差し替えなどで燃料を供給すれば、簡単に実質的な動作時間を延ばすことができます。

モバイル、ウェアラブル機器へ採用

 燃料電池では水素や酸化物のイオンの動きがキーです。一つの方式の例をあげますと、電池の一方の電極で水素が水素イオンと電子に分解され、その電子が外部回路に流れて電気として使われます。一方水素イオンのほうは電池の内部を移動してもう一方の電極で、外部回路を回ってきた電子と一緒に、外から供給される空気中の酸素と結合して水となり、その水が排出されます。このとき、たんに水素を燃やすのではなく電池として動作させるには、水素と酸素との反応を、ゆっくりと、かつ安定的におこなうようにしなければなりません。

 このような動作をおこなうためには、それぞれのプロセスでいろいろな方式があります。まず水素の供給ですが、純度の高い水素を蓄えておくやり方と、メタノールなどの扱いやすい形の燃料を改質器を通して水素にして使うやり方があります。またそれほど効率を追わなければメタノールをそのまま供給して改質器を省くこともできます。モバイル機器に向けた小型の燃料電池ではメタノールをそのまま使う方式での開発が多いようですが、半導体リソグラフィーの技術を使って超小型の改質器を開発して高い発電効率をねらう例も出てきています。

 水素の分解を促進するには温度を上げることが有効で、電力向けの燃料電池では摂氏二〇〇度から一〇〇〇度の動作温度にしますが、モバイル機器向けでは常温での動作が望まれるので触媒が頼りになります。この触媒を有効に働かすには水素を分解する電極をどのような材質で構成すればよいか、また燃料の中に残る一酸化炭素によって触媒の効果が低下することをいかに少なくするかなどの課題があります。

 電池の中でイオンが移動する電極間の構造や材料もポイントです。モバイル機器向けの燃料電池では、燃料がそのままの形で通過することは阻止しながら、水素イオンは抵抗なく移動させるために、フッ素系のイオン交換膜が用いられています。このとき性能や寿命の面から適当に水で湿らせた状態を保つ必要がありますが、それが不要な炭素のフラーレンを使うことも試みられています。

 電極のペアと高分子膜からなるセルを、セパレータを間に入れながらいくつも重ね合わせて燃料電池が構成されます。このとき燃料や酸素の通り道もつくり込むことになります。

 このように燃料電池にはいろいろな開発要素があって、また電力用が先行しているためにコストや信頼性の要求が高く製品化の例は限られていますが、このところモバイル機器に向けての試作の発表が相次いでいます。利用が普及するのはこちらのほうが先行しそうです。あと数年すればモバイル機器、さらに小型になればウェアラブル機器への採用が期待できます。

(P77コラム)

カシオ計算機が

超小型高性能の燃料電池を開発

 ノートパソコンと携帯電話が必携の時代に登場したのが、超小型高性能の燃料電池だ。今年、カシオ計算機は小型デジタル機器向けの燃料電池として、主流の充電式リチウムイオン電池と同じ体積で4倍の電池寿命のある改質型燃料電池を開発、2004年の実用化予定を発表した。

 今まで改質燃料電池は、発電効率は高いが改質器の構造が複雑で部品点数が多いため、小型情報機器には適していないとされていた。今回の同社の技術は、自社のLSI(大規模集積回路)の技術を応用し、300〜1000点の部品が必要だった改質器を新技術「マイクロリアクター」で大幅に小型化したもの。これにより発電効率が高く、容量の小さな燃料電池が可能となった。同社はまず自社のパソコンやデジタルカメラなどへの搭載を進め、近い将来、動画の送受信など高度で消費電力の高い情報機器が出回る時代に備える。

(写真キャプション)

ノートパソコン用燃料電池(イメージ)。

下が超小型改質器「マイクロリアクター」

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