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NI Book Review



(P94)

NI

book review

『知識創造企業』

著者 野中郁次郎・竹中弘高

訳者 梅本勝博

東洋経済新聞社/定価二○○○円

 本書は、一九九五年に日本発の経営理論として英語版で出版されたものの翻訳である。企業の競争力の源は、組織的に新しい知識を生み出していくところにあるという理論が、おもに日本企業の成功例を引きながら展開されている。その後の経済状況はかなり変動したとはいうものの、説得力は今も変わっていない。

 知識には言葉や数字で表現しやすい形式知と、職人技や勘など主観的・直感的な暗黙知があるという。従来は形式知だけに注目することが多かったが、組織的な知識創造には両方が大事である。個人の暗黙知から経験などを共有して組織の暗黙知を創造するのが共同化、その暗黙知をコンセプトなどに明確化して形式知にするのが表出化、それら個別の形式知を体系化するのが連結化、それらのプロセスを体験することによって新たな形式知を各個人の暗黙知とするのが内面化であり、このような形式知と暗黙知の相乗作用が繰り返されることで、個人、グループ、組織、組織間に知識創造が拡大していくと説く。

 この知識スパイラルを促進するためには、組織の意図、メンバーの自律的行動、環境条件の不安定さ、情報共有のオーバーラップ、メンバーの多様性などの組織的用件が必要であり、トップダウンやボトムアップに対してはミドル層の役割が重要になる。そのためには、階層構造の効率性とタスクフォースの柔軟性を合わせ持ったハイパーテキスト的な構造が適しているという。

 本書は、ほとんどの日本企業が深刻な経済危機を迎えるたびに、どうしてそれを乗り越えてこれたのかという素朴な疑問にも解を与えてくれる。日本人は個人レベルでは暗黙知にとどまることが多く、それをもとに組織として知識創造を上手くおこなってきたことに原因があるようだ。しかしながら、現在、多くの日本企業で暗黙知の厚みが薄くなってきているのではないかと懸念される。またハイパーテキスト的な組織は、構築と維持に強靱な体力が必要であり、そこまでやりきれる企業は限られているのではないだろうか。

 話は飛ぶが、企業活動の世界と環境保全の世界では、西洋と日本では取り組み方に大きな違いがあるように感じられる。もしそうであれば、「形式化・体系化されていない知識にもっと注意を向けよ」という、西洋の企業への本書のアドバイスを、日本での自然環境対応に取り入れることで、形式知に基づいたトップダウン的な取り組みに対して、新しい展開が期待できるのではないかと思う。(森昌文)

『検証 なぜ日本の

科学者は報われないのか』

著者 サミュエル・コールマン

訳者 岩舘葉子

文一総合出版/定価二四○○円

 コロンビア大学文化人類学科にて博士号を取得した後、ノース・カロライナ大州立大学日本センター副所長を務め、日米科学協力のために指導的役割を果たしてきた著者が、一九九○〜九六年の間、日本の研究機関に滞在し、インタビューや所内ゼミへの参加、アンケート、文献調査などの手法を駆使して、日本の研究体制の問題点を詳細に解明したのが本書である。滞在したのは、大阪バイオサイエンス研究所(一九八七年大阪市が設立、ポストはすべて任期付)、蛋白工学研究所、食品総合研究所など、生命科学系の基礎研究、応用研究で成果を上げている研究組織だが、科学技術創造立国をめざし科学技術基本計画第二期がスタートした今、価値ある研究成果を求められるすべての研究組織にとって参考になる指摘が続く。

 科学者が科学者として評価され報われるために必須で、しかし日本には十分に備わっていないものは何か――研究成果をあげた科学者が必要な資金を獲得し、よりよい研究環境とポストを得、その結果が科学研究の成果を通して本人と社会に還元される、「クレジット・サイクル」の循環だと、著者は指摘する。そしてそのサイクルが機能するためにも、研究の意義を理解した技術系・事務系のスタッフが、強力に研究支援をおこなうように変革することが必要だと分析を進める。日本の大学に残る講座制が若い研究者の独立を遅らせている、あるいは官僚的な管理が世界レベルの研究成果の阻害要因となっているといった問題点が、淡々と紹介される豊富な事例から明らかになる。一九九九年に刊行された英語のオリジナル版は、海外の科学雑誌で紹介され、話題を呼んだという。

 しかし、コールマン最大のメッセージは、決して諦めてはいけないということだ。そのために「日本人は特別なのか?」まで論じられている(第九章)。ここでは、土居健郎(『甘えの構造』で有名)などが前提とする『不平等のもたらす影響を公然と無視、あるいは否定』するような「日本人論」もが「検証」の標的となる。そして、『「日本人論」学派お気に入りの、陳腐で古臭いことわざ「でる釘は打たれる」で は、誰が打つのかが特定されていない』と指摘し、(講座制のような)階層制支配の現行システムのもとで、『日本人科学者が研究を犠牲にしてまで対立を避けるのは、国民性のせいと決めつけることはできない』と結論づけているのだ。(林衛)

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