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[特集] 産業環境とウエアラブル情報システム -- 大和 裕幸









情報端末の小型化、軽量化、高機能化が進むなか、産業分野での実用化が進められる「ウェアラブル・コンピュータ」。

なぜ、造船所や発電プラントなど、人の手がかかる現場でこそウェアラブル・コンピュータは期待されているのだろうか。

今後、産業現場を大きく変革するかもしれないウェアラブル・コンピュータの次代のかたちを探る。

特集

ウェアラブルで

現場が変わる!?

――産業環境とウェアラブル情報システム

大和裕幸

東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授

やまと ひろゆき

1954年生まれ。工学博士。産業環境学専攻。82年東京大学大学院工学系研究科船舶工学専門課程博士課程を修了。同年、航空宇宙技術研究所に入所し、低騒音短距離離着陸実験機「飛鳥」の開発と飛行試験に従事する。東京大学工学部船舶工学科助教授、同環境海洋工学専攻教授を経て、99年より現職。

http://www.nakl.t.u-tokyo.ac.jp/~hn/III/rhome.html

photography by Naruaki Onishi

「ローテク」分野でこそウェアラブルは生きる

 コンピュータの小型化により次第に実現してきたウェアラブル情報システムですが、じつは、「ウェアラブル」が実現するようになったことの最大の背景には、コンピュータの進歩よりも、むしろ通信技術の進歩があります。

 たとえば、数年前のPDA(携帯情報端末)に比べると、今の製品には通信用のスロット

がついていてインターネットもできるしメールもできます。古いタイプのものはそれができないから全くのスタンド・アローンであり、結局は手帳レベルで止まってしまっていた。それが、ここ二年くらいの間に通信のインフラも確立され、PDAのような小さなサイズでも簡単に通信でデータのやりとりができるようになってきました。この通信技術により、人間一人ひとりをオンライン化することができるようになったのです。

 現在、実際にウェアラブル・コンピュータを取り入れようとしている分野の一つに、巨大船舶の製造あるいは運航があります。なぜ造船という分野なのか。

 たとえば自動車の製造工程を見ると、すでに最初から機械がすべての作業をこなしています。ですからウェアラブルを入れる必要がない。それに対してウェアラブルという機能は、人間がその場その場でやり方を考えながら進めていって、それを知識として客観的にまとめることが難しい分野、ましてそれをコンピュータのデータとして取り込んだり、製造ラインとしてまとめたりすることができない分野において、情報の収集や伝達に威力を発揮するものなのです。

 そういう意味で、いわゆる「ローテク」の世界こそが、ウェアラブル情報機器の導入にうってつけといえます。ローテクの分野にこういう情報システムが入ってくることによって、動いていく人間の行動をきちんと把握できるようになる。そして、人間の行動をコンピュータに記録し分析することによって、初めて人間の行動分析ができる。これにより、もっと効率的な動き方はないのか、あるいは人間は何を考えてそういうことをしたのか、人間はなぜそういう行動を取ったかというようなことまで明らかにすることができるようになるでしょう。

 人間の行動、人間の作業など、人の手がかかっている領域というのは、最終的には熟練の人にしかできない部分があります。ところが、熟練の知識というのは熟練の人に聞いてもわからないものであることが多い。よく、技術は言葉で伝えられるものではなく盗むものだ、などといわれます。しかし、じつは熟練者もそのときそのときに複雑な情報を整理してきちんと何らかの論理に従ってやっているはずです。ウェアラブル・システムがあれば、状況とそれに対する人間の行動をデータとして取れるだろうということなのです。

 今後、音声入力システムを備えたウェアラブル・システムが実用化されれば、熟練の人たちが今こういう状況だからこういう作業をやります、などとその場でしゃべりながら作業を進めることで、その状況をデータとして分析し、誰もが利用できる客観的、数値的な情報として蓄積することができるようになると考えています。

ウェアラブルがもたらす質的な効率化

 さらに、音声で情報を取るだけでなく、何をやっているかをCCDカメラで記録すれば

もっと有用です。最近の携帯電話についているような、ああいうカメラで十分です。そうすると、たとえば船の場合なら、鋼板がどういうふうに曲がっているときに、どこをどう焼いて成型しているかといったことが映像で記録できます。

 ウェアラブル・コンピュータは人間に限らず機械にもつけることができます。溶接機や切断機がいつスイッチがオンされたか、アセチレンの量はどれくらいか、といったデータを取っておくことも可能です。熟練の人がやっているときにも、何をどうしているかを、映像と一緒に記録できるわけですね。

 こういうことを実際に情報化するにあたっては、通信のインフラ整備や、使いやすいヒューマン・インタフェイスの構築、操作の負担の軽減という必要条件が、ハードウェアに対して求められていました。それらが今、やっと満たされる状況になってきたということです。

 また、機械以外にも、部品ごとにウェアラブル・コンピュータをつけておけば、コンピュータ制御がもっと簡単になるでしょう。今、造船所などでは部品群がどこにあって、どういう状況で、どこまで組み立てたかといったことを手で入力しています。それが、現場で音声入力をしてデータとして貼り付けるようになれば、それがどこに置かれているかが、ウェアラブル・コンピュータによってオンライン化された作業員全員にすぐにわかるようになる。そうすることで、現場の人間に依存していた作業を軽減することができるのです。

 産業の効率化ということを考えるとき、まず、産業の本質そのものを変える必要があります。造船でいうと、価格ではすでに韓国や中国に負けている。これに打ち勝つためには、たんに生産ラインを効率よくするだけでは不十分です。たとえば圧倒的に高品質で安全性の高いものを、廉価に提供できる仕組みをつくるなど、質的なところで変えないと競争できません。

 船の安全性というものは、じつは溶接によるところが大だと言います。今はもう日本の船はそんなことはありませんが、船が壊れる原因というのは、たいていは溶接の不始末です。溶接の精度をしっかり管理してやればそういうことは防げる。その溶接を、どういう手順でやると間違いが多くなるかとか、こうやるといいとか、あるいは、熟練工がやるといいけれども新米がやるとダメというのはなぜなのかとか、そういう細かいことが改善されれば、性能や安全性など、価格とは違う部分で競争力が生まれるはずです。

 こうしたことをきちんとやるためには、ウェアラブルのようなシステムを使ってデータを蓄積していくしかない。これにより工場の中での人の動きももっと効率よくなり、より精度の高いものがつくれるようになる。ウェアラブル・システムは、成熟産業をさらに一歩進めるうえで、かなり本質的な産業改革の一翼を担う可能性を秘めているわけです。

 

自動対応するデータベースの構築

 飛行機もそうですが、船の操作の手順にはマニュアルがあって、そのとおりにやることになっています。ところが、そのマニュアルがたしかに完全かどうかという立証はまだなされていません。急にエンジンの具合が悪くなったというような突発事故に対して、はたしてマニュアルは役に立つだろうか。そもそもマニュアルというのはやたら分厚いものですから、船長や航海士が内容を全部覚えるというのも大変なことです。

 そこで今、考えられているのが、そういう突発事故に遭遇したとき、操舵室にいる人間がどういう行動をとるかという作業分析にウェアラブル・システムを活用することです。シミュレータによる操船訓練の際などに、突発事態のときに誰が何をやるかといったことを音声でどんどん入力していって、それを分析しておく。誰が、どういう場面で、どういうふうに実際に動いていたかというデータに加えて、そのときのレーダー画面も一緒に入力しておけば、他の船が近くに何隻かあった場合と一隻もいなかった場合の違いなどを見ることができます。

 さらに、船の運航を管理するソフトウェアが開発されれば、そのシステムが指令を出しつつ、対応をいろいろ分析することができます。たとえば、エンジンが回っているにもかかわらず、エンジンの燃料流量計が何かおかしい、というようなとき。

 まず、エンジンには異常がないが計器が違っているかもしれないということで、船長に報告がいく。あるいは、エンジン自体がおかしいかもしれないというときは、機関室にも指示がいく。そして、陸にいる運航管理責任者にも連絡がいく。こういう一連の対応が自動的におこなわれます。

 今までは、こういう連絡はたとえば機関長がいちいち全部に電話しなければなりませんでした。それが、運航管理システムのようなソフトがあれば、必要なメッセージを一度にメールで流してくれます。メールだけでは不十分なら警告音も一緒に送る。メールを受け取ったかどうかがもちろんチェックできますし、受け取った者がちゃんと対応したかどうかもチェックできます。そういうことをすべて、システムがやってくれるのです。

 そして、エンジンがおかしい場合、計器担当者に対して、たとえば、計器のここを調べてみなさいとシステムが言ってくる。すると、その指示を受け取った人はそのとおりやってみなくてはいけない。作業者の作業報告があるかどうかで、それをしたかどうかも、すべてシステムで管理できます。

 こうした対応を全部記録に残せば、最終的にやはり計器がおかしかったとか、別の何かがおかしかったのでこの部品を取り替えた、といった一連の処理が、一つの知識として蓄積されるわけですね。燃料流量計がおかしいときは、計器の担当者とエンジンの担当者、それに運航管理者にまず伝える。そして、調子がおかしければまずここを調べろ、といった指示を出す。一度それで問題が解決したなら、次回からは、全員にメールを送る前に計器担当者に、まずここを調べてみなさい、とコンピュータから指示が出るようになる。そういうことが体系的な知識として蓄えられていれば、いちいち各署へ連絡しなくても、調べてすんだらそれでOK。次回からは、もっと早く原因がわかって対処できることになる。こういうことが大きな効率化につながるのです。

 しかもそういう事例をすべて貯めておけば、汎用性のあるデータベースになります。今は、陸にいる運航管理者にいちいち照会したり、船長が、今までの経験からこのケースではこういうことが多い、などとやったりしている。しかし、ウェアラブル端末があれば、チェックすべき項目がバーッと出てきます。しかも、この計器がおかしい場合の七○パーセントはここの異常のせい、といったこともコンピュータは把握していますから、異常の起こりやすい順に調べていけばいいわけです。

 

産業環境の本質的な改革

 課題もあります。コンピュータの小型化が進んでいるとはいえ、現在のウェアラブル・システムは、まだ装置が大きすぎます。建設業の現場などもそうですが、造船業は巨大なビルに相当するサイズのものをつくる現場なので、地上から五○メートルといった高所作業が少なくない。身につけるうえで、もっと小さく、もっと軽くしていく必要があります。

 記憶容量ももっと大きくしないと、ビジュアル化に対応しきれずオーバーフローしてしまう。一方で、それほど容量を取らないようなソフトも必要でしょう。そういうハード、ソフトができれば、設計のときなども処理データを増やすことができ、二次元の図面だけでなく三次元の構造を見られますね。裏側から見るとこう、こっちの側面から見るとこう、というふうに、全体を把握しながら作業の途中でチェックできるわけです。

 電源の問題もあります。長時間の作業にも継続して使えるように、省電力化と長時間電源の開発が待たれるところです。そして、ウェアラブル情報端末を導入しようという産業のニーズに合ったソフトウェアの開発。こういう課題がクリアされていけば、今後、ウェアラブル・システムはいろいろな分野で応用が進むと思われます。

 たとえば、病院でのウェアラブル・コンピュータの活用です。アーム・デバイスをつけた看護師が、患者のデータ、その人の症状、投与すべき薬や血液型などを、病院内の無線LANを使って瞬時に呼び出して見る。ウェアラブルをカルテ代わりに使うわけですね。あるいは患者さんがつけているバーコードを読み取って、血液情報をネットワーク・サーバに送ることができれば、血液型識別などの単純な医療ミスを事前に防ぐことができます。

 サービス産業でも利用できることは多いでしょう。巨大ホテルの場合など、その日のチェックイン情報、VIPや団体の情報、海外からのお客に対してよく使う英会話、いろいろな宿泊プランから周辺の観光情報、天気情報、地下鉄マップまで、細かいデータをウェアラブル・コンピュータから引き出せれば、フロント係もベルボーイも案内係も全員が高いレベルで顧客に対応することができます。リピート客はサービス業にとって重要な財産ですが、誰でもいつでも顧客のデータを呼び出せれば、確実にサービスの向上になる。今はまだ入力やデータの呼び出しが面倒ですが、音声での入力といったインタフェイスが改善されればもっと広く使われるようになるでしょう。

 サービス産業もそうですが、従来、いわゆるローテクといわれる分野には、ベテランや熟練者の経験や感覚に頼る部分、言葉にうまく表現できないような部分があり、キーとなる技術がなかなか標準化できなかった。熟練者その人にしかわからない感覚や非常に専門的な言葉などが障碍になっていたわけです。それが、ウェアラブル情報システムの導入によって、データという共通言語での正しい理解が可能になる。これは、産業環境にとって、本質的な意味での改革をもたらすことになるのではないでしょうか。

P13キャプション

photography by Naruaki Onishi

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操舵輪のないデジタルブリッジ

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オゾン層破壊や地球温暖化による環境問題を見つめて─

十数年来、自然冷媒による環境保全型テクノロジーの開発・実用化に取り組んできたマエカワ。産業用冷凍機のトップメーカーとして私たちが目指すのは、この地球の環境を守りつつ、人々が安全、快適に、豊かな営みを続けていくことです。私たちができること。それは未来につながる斬新な発想の創出。あきらめない勇気。息長い努力。企業を挙げての若々しい意欲の持続。これらをベースに私たちは、これからも省エネルギー・創エネルギー技術や加工ロボットの開発に貢献してまいります。

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