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| ネイチャーインタフェイス > この号 No.10 の目次 > P20_23 | [English] |
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一口に「産業現場」と言っても、その状況は業種やメーカーによって千差万別だ。よってそのIT化も一筋縄ではいかないことは想像に難くないだろう。NTTは、そうした現場の多様なニーズに対応したネットワークシステムの構築にいち早く取り組んでいる。そこでウェアラブル機器はどのように使われているだろうか?
取材
工場と人をつなぐネットワーク ――NTTのファクトリネットワークシステム 取材・文=安藤聡
P20キャプション NTTサイバーソリューション研究所 ビジネスイノベーションSE プロジェクトマネージャ・柿崎隆夫部長
特集 ウェアラブルで現場が変わる!?
人と機械の共存関係
NTTは今年、製造業のIT化を推進する新たなサービス「ファクトリデータセンタ」構想をスタートさせた。これは、工場の機器とそのユーザー、ベンダー(機器納入者)などをネットワークで結び、機器のリモートメンテナンスを可能にするとともに、機器の稼働状況などのデータをサーバに蓄積していくことによって、メンテナンスやサポートなどに役立てていこうというシステムだ(図1)。サーバの開設・維持には大きな手間と費用がかかるため、これはNTTが管理するデータセンターにサーバを提供する。そしてサーバからネットワーク、端末、ソフトウェアまで、機能を共通化したプラットフォームを一まとめにして提供しようというのが「ファクトリデータセンタ」の基本構想だ。 このサービスはまだ動きだしたばかりだが、すでにNTTでは、工場などのネットワークシステムの構築において実際に取り組みを始めている。その任に当たっているNTTサイバーソリューション研究所(東京・武蔵野市)・ビジネスイノベーションSEプロジェクトを訪ねた。 「私たちがおこなっているのは、ネットワークによる通信環境とそれを集約するサーバ機能の整備、そこで必要とされるソフトウェアの開発などで、それらを総合的なサービスにまとめ上げて提供することです。工場の機器の稼働状況をネットワークにのせて、常時モニタリングすれば、トラブルの際にもすぐに対処できます。そしてそのデータを蓄積し解析することによって、その後のメンテナンスに役立つ重要なデータを得ることができる。もちろん先進的な工場の場合は、高度にコンピュータ化されているので、機器がはき出すデータももっているのですが、しかし現状ではそれがほとんど活用されていないんです。 ちょうど医者が人の健康を診るのと同じように、機器の『健康診断』をおこなうわけですね。しかし、それを機械に一〇〇パーセントやらせるのは必ずしも効率的ではない。全体のオペレーションなどは、やはり人間がやったほうがよい。機械に人間が適宜介在していく、そこにウェアラブル情報機器の必要性も出てくるわけです」(部長・プロジェクトマネージャ・柿崎隆夫氏) いくら工場内の自動化が進んでも、トラブルの際には人間がかけつけなければならない。また、最近はいきすぎたオートメーション化の見直しも起こっている。ベルトコンベア式の単純流れ作業から、各作業員が一つのものを責任をもって仕上げる「一人やぐら方式」への移行などもそうだ。そうした場合、一人でさまざまな仕事をこなさなければならない。作業環境のIT化が進むほど、つまり省力化が進むほど、仕事の種類は増える。つまり、より多くの機器や情報を帯同しなければならない。その手段として、ウェアラブル機器が必要になるわけだ。それは「人が工場や機械とコミュニケーションをとりながらコラボレーションするためのツール」(柿崎氏)である。
リモートコラボレーションシステム
では、システムの詳しい内容を、メンテナンス作業の遠隔支援システムを例に説明してみよう。図2を見てほしい。 機器のメンテナンス作業のため現場Aにおもむいた作業者は、音声・画像入出力が可能なウェアラブルPC(A1)を装着している。現場には、状況を詳細に把握するための無人カメラ+画像伝送用PC(A2、A3)が設置されている。これら各PCや工作機械・周辺装置は、無線LANを介してファクトリゲートウェイと接続されていて、そこにデータが集約される。 一方、現場とサポートセンターB、CはIPネットワークでつながれ、その上に多地点音声画像通信サーバと、作業記録を登録・閲覧するための作業記録DBサーバが設置されている。 遠隔地(サポートセンター)から現場の状況を把握するには、画像・映像情報が最も効果的だ。大規模施設などの場合は、作業者(A1)からの画像だけでは限界があるため、多地点音声画像通信システムを導入し、遠隔操作が可能な無人カメラ(A2・3)を設置して、多角的な画像・音声情報をとることができる。 作業者は、ウェアラブルPCで対象機器の操作マニュアルを参照しながら作業をおこなう(図3)。メニューの選択方法は、音声入力、マウス入力どちらも可能。また、ネットワークでつながれた他のPCの情報を呼び出すこともできる。図4のように、サポートセンターの話者、作業者目線の画像、現場の無人カメラの画像など、複数の情報を同時に表示することが可能だ。同様に、サポートセンターの各PCでも必要な情報を随意に閲覧しながら、作業者に指示を与えることができる。 このように、リアルタイムにさまざまな情報を参照し、また相互にコミュニケーションをとりながら、メンテナンス作業を進めることができるわけだ。 そしてこれと並行して、作業者は作業記録をとる必要がある。PC1のフォーマットに従い、作業情報や画像を入力して作業レポートを作成する(図5)。音声による記録も可能だ。レポートを送信すると作業記録DBサーバに登録されるが、その際、モニターに表示していた他PCの関連画像も自動的に記録される。このように、作業者の入力データや画像データ、各種機器データなどを統合的に処理できるので、記録作成の効率は大幅に向上している。
使える道具として
以上がシステムの概略だ。 さて、これらの作業を整理すると、次の三つのポイントに絞ることができるという。 @情報を見ること A作業を記録すること Bコミュニケーションをとること 実際にシステム構築のため全国各地の現場を飛び回っているという下倉健一朗氏(同プロジェクト・主幹研究員)によれば、「この三つがシステムの柱なんです。もちろん、現場の状況は千差万別ですし、顧客のニーズもさまざまなので、それに応じてシステムをつくる必要がありますが、基本的にはこの三つの課題をいかに実現するかが重要になります。そのために最も重要なのは、いかにデータの安全性を確保するか、いかに安全なネットワークを構築するかということです」。 とはいえ、現場では思いもかけない難問にぶつかることも少なくないようだ。たとえば、顧客が使用しているネットワーク環境がバラバラだったり、古い機器類が混じっていたりすると、ネットワークを組むこと自体が大変だ。そして、どれだけ苦労して複雑なシステムをつくったとしても、そのインタフェイスは極力単純化しなければならない。「見た目は何の変哲もないものにしないと、使ってもらえないんですよ」と下倉氏は苦笑する。いくら最新の設備であっても、使いやすくなければ受け入れてもらえないのだ。 ウェアラブル機器もしかり。「今まで簡単にできたのに、かえって複雑になった」「雨が降っても放り投げても壊れないものを」「バッテリーは二四時間もたせて」などなど、パソコン開発者が聞いたら泣くようなことばかり言われるそうだ。いくら最新の機械でも、現場の人間にとっては「道具・工具」と同じ。それが本当に「使えるかどうか」が問題なのである。 「ウェアラブル機器自体、人と共存すべきツールなんですね。だとすれば、それと意識せずに使えるコミュニケーション手段になることが理想です。たとえば今のウェアラブルPCは、ノートパソコンを小型化したものですが、それだけでは十分ではなく、何らかのパラダイムの転換が必要なのかもしれません。ユビキタスという言葉が示すように、部品一個一個にチップを埋め込むような時代がやってくれば、もはやウェアラブルは人間に限ったものではなくなります。そうした変化を視野に入れつつ、産業環境の将来像を模索していきたいと思います」(柿崎氏) 工場と人の新たな共存関係を目指して。NTTの今後の取り組みに期待したい。
P21キャプション 図1 ファクトリデータセンタ構想
P21キャプション 図2 リモートコラボレーションシステム
P22キャプション 図4 ウェアラブルPCにおける多地点音声画像通信
P22キャプション NTTサイバーソリューション研究所では実際に 工作機械やウェアラブルPCなどネットワークで つないだ実験システムをつくっている
P23キャプション 図3 作業マニュアルのブラウジング
P23キャプション 図5 マルチメディア作業レポートの作成
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