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[取材] 進化を続けるウエアラブル機器 -- ザイブナー/日立製作所/東芝







特集 

ウェアラブルで現場が変わる!?

 ウェアラブル・コンピュータは、産業現場やサービス業界の現場へ応用されるなど、徐々に社会に浸透しつつある。しかし、実際に手にとり、使ったことがある人は、まだほんの少数だろう。

 そこで、ウェアラブルPCの第一人者・ザイブナーコーポレーションと、ザイブナー社から基本特許をライセンスしてウェアラブルPCを開発、販売している株式会社日立製作所、そしてBluetooth技術を応用した独自のウェアラブル機器を開発している株式会社東芝を取材し、ウェアラブルが現在どのような能力をもち、どのような方向へ展開されようとしているのかをレポートする。

取材

進化を続けるウェアラブル機器

──ザイブナー、日立製作所、東芝

取材・文=桜井裕子

ノートPCと

変わらぬパフォーマンスを備えた

ザイブナー社の「MA V」

「身につけるコンピュータ」という概念で、一九九四年に基本特許を獲得したザイブナーコーポレーションは、「いつでも、どこでも」というコンセプトを他社に先駆けて具現化してきたウェアラブル界のトップランナーだ。八八年にウェアラブルPC第一号機を試作して以来、今日まで一貫してウェアラブルPCの小型化・軽量化・高性能化を推し進めてきた。現在は業務用途の「MA(Mobile Assistant)V」と、コンシューマ向けの「poma」の二タイプを販売しているが、ここでは工場や保守作業の現場などに導入されつつある「MA V」について見ていこう。

 ウェアラブル五号機に当たる「MA V」は、五〇〇メガヘルツのCPUを搭載、OSはウィンドウズ98とウィンドウズ2000対応で、能力的にはノートPCと遜色がない。本体の大きさは中型の辞書程度で、重さはほんの数百グラム。これを腰に装着して一日過ごした二〇歳代前半の男性は、「この程度の重さなら、腰に負担はかからない」と述べていたが、女性や年配の方は多少違う感想を抱くかもしれない。

 ディスプレイは、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)とフラットパネルディスプレイ(FPD)。HMDは頭に装着し、片目で小型画面を見るスタイルのものだ。最初はサイズの小ささに戸惑うが、慣れてしまえば文字を読むのもそう苦ではなく、景色の中に虚像が浮かんでいる様子は意外と楽しい。FPDのほうは、一般のモバイル機器と変わらない八・四インチ(もしくは六・四インチ)で、腰や腕などに装着して使う。この程度の大きさなら、設計図面なども比較的楽に見ることができる。

 入力は、キーボードやポインティング・デバイスを外付けする方法もあるが、ウェアラブルにふさわしいのは、やはり音声入力だろう。手を使わずにマイクを通して操作できれば、ウェアラブルPCの最大の特長である「ハンズフリー」機能が存分に生かせることになる。音声認識の精度も現在はかなり高くなっているので、使う場面によっては非常に有効だ。とはいえ、大きい音がつねに響いている場所には不向きだし、電車内や街中で音声入力するのには心理的な抵抗を伴うので、音声入力に関しては「どこでも」というわけにはいかないかもしれない。

 ウェアラブルPCは、人間を時間や場所の制約から解放する。他の記事でも見てきたように、時間の有効利用や、それに伴うコスト削減ができるなど、現在、ビジネスユースでその可能性に大きく期待がかけられている。

 その一方、「歩きながらゲーム」「レシピをHMDで見ながら料理」など、生活へも広く応用されていくだろう。ザイブナー社が今後コンシューマ向けに仕掛けていく用途に「ウェアラブル・ゲーム」があるそうだが、「人間の生活を立体的に豊かにしてゆくための補助ツール」として、ウェアラブルPCがどこまで日常生活に入り込んでゆけるかが注目される。

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ザイブナー社の「MA V」。

外観は意外とごつい。

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ザイブナー株式会社

山村道男代表取締役社長

日立製作所の「WIA」は

インターネットアクセスに機能を特化

 ウィンドウズマシンそのものの小型化を進めるザイブナー社とは異なり、機能を特化し「より軽く、より小さく」を目指しているのが日立製作所だ。「この機器上ではインターネットしかしない」と割り切って開発された「ウェアラブル・インターネット・アプライアンス(WIA)」は、その割り切りゆえに、本体三一〇グラム、HMD約八〇グラムという軽量化が達成されている。ブラウザ閲覧のみが前提という意味では、ウェアラブルPCとは異なるコンセプトといえる。

 開発を担当したユビキタスプラットフォームグループ モバイル端末事業部の海老名修主任技師は 「この機器上では専用のアプリケーションソフトウェアはつくらず、標準のブラウザソフトを使ってサーバとコミュニケーションするのがよいと思っています。サーバ側でホームページの設計をするだけでよいのです」と語る。あくまでこれは「インターネットアクセスデバイス」というわけだ。

 小型化、軽量化へのこだわりは随所に見られる。搭載されているOSはウィンドウズCE。ハードディスクは不要で消費電力も抑えられ、電池も小型のものですむ。また、インタフェイスはPCカードではなく、より小型のコンパクトフラッシュ用一スロットが選択されている。

 ディスプレイはやはり片目で画面を見るヘッドマウント型。外界と画面が重なって見える、シースルータイプの非常にクリアな画面だ。

 この画面、じつは六〇センチメートル先にピントが合っているのだそうだ。そこで見えるのは一三インチ大のフル画面だから、感覚的にはノートPCの画面を見るのと同じようなものだ。解像度は、SVGA八〇〇×六〇〇ドットの高解像度で、写真や地図、設計図などもクリアに見える(ちなみに携帯電話の画面は一〇〇×一六〇ドット程度)。また、LED(発光ダイオード)で順次パルス照明していくLCoS(Liquid Crystal on Silicon)という液晶技術を採用したことで、滑らかな高画質を獲得している。

 入力はポインティング・デバイスでおこなう。音声入力については、電車の中などではマナー上、工場の作業現場などでは騒音が大きいなど、いずれも不向きであるため、現在のところは採用されていない。

 各デバイスはそれぞれケーブルで接続されている。海老名氏によると、クライアントの多くは無線化を望むという。「しかしその場合、HMDに電池を載せざるを得ません。頭部が重くなると、非常に疲れます。首のところからケーブルを服の中に通すなど、”着こなし“を工夫すると、想像以上に気にならないものです。入力用デバイスの方は、いずれBluetoothなどでワイヤレスにしたいと思っていますが」

 ちなみに、バッテリー持続時間は連続表示で三時間。これを十分とみるか短いとみるかは用途にもよるだろう。

 現在、具体的にWIAを産業現場へ導入しようと試みている業種は、建築、製造、流通、食品、電気、エネルギー、医療機器等、多岐にわたるという。WIA自体はシンプルな機能しか備えていないが、それゆえに用途に応じて色づけするのが容易だ。シンプルさが使い勝手のよさにつながる好例となるかもしれない。

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日立製作所「ウェアラブル・インターネット・アプライアンス」。HMDは現在1サイズのみで、横に広い日本人の頭の形に合わせてつくってある。しかし最近、幅が狭く奥行きがある欧米型の頭形をしている若い人が増え、うまく装着できないことがあるそうだ。HMDから出ている紐は、その“応急措置”用とのこと。

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株式会社日立製作所

ユビキタスプラットフォームグループ

モバイル端末事業部

海老名修主任技師

モバイル環境での

インタフェイスを変える

東芝のBluetooth技術

 ウェアラブルPCのコンセプト「情報の携帯」に非常に適した無線通信技術Bluetooth。”ワイヤレスネットワークの新標準“ともいえるこの技術を、さまざまなウェアラブル機器に応用しようとしているのが東芝だ。

 ウェアラブル機器としては、音声認識技術を用いるヘッドホン型モバイル端末「ユビキタス・ヘッドセット」などが開発されており、モバイル端末を利用したシステムも、生体モニタリングシステムや、自動的にマルチメディア日記が作成できるウェアラブル・オーサリング・システム等、実用化に向けての研究が重ねられている。しかしここでは、Bluetoothをウェアラブル機器に利用することによって、ネットワークがどう変わるかということに焦点を当ててみよう。

 Bluetoothは無線LANとどのような点が異なっているのだろうか。研究開発センター マルチメディアラボラトリーの土井美和子研究主幹によると、「まず、無線LANに比べて消費電力が低い。ですから、携帯電話やモバイル機器など、常時持ち歩くような小さいものに向いています。とくにウェアラブルで何かをセンシングするときには、常時計測することが必要になるので、消費電力を抑えることは重要なポイントになるでしょう。

 もう一つは、アドホック・ネットワークという考え方ですね」

 このアドホック(一時的)・ネットワークは、Bluetooth独自のもの。「どこと、誰とつながるか」が従来の通信ネットワークと根本的に異なっており、Bluetoothの説明によくある「面倒な設定が不要」というのも、それゆえのメリットだといえる。

「無線LANなどでは、どの端末をどことつなぐかを個別に設定する必要があります。しかしBluetoothが目指しているのは、同じようなプロファイルをもっている機器があるかをBluetoothで周囲に問い合わせ、それら同士をつなげていくというものです。

 ホットスポットや街頭の広告塔から情報をダウンロードして携帯するスタイルは、これから急速に普及していくと思いますが、そのようなとき、広告塔のIPアドレスなどをセッティングするようなことは考えにくいですよね。そこで有効なのがBluetoothによるアドホック接続なのです」

 たとえば、携帯電話によって自販機から買い物ができるシステムがあるが、この場合は、携帯電話と自販機が無線で接続されているわけではなく、携帯電話に表示されたバーコードを読み取った自販機と飲料メーカーのサーバが、ダイヤルアップ接続によってつながるというものだ。しかしBluetoothであれば、自販機とウェアラブル機器は直接ネットワークされる。つまり、接続先はつねにサーバ、という従来の方法とはまったく異なるわけだ。

 この技術が応用されたウェアラブル機器は、携帯電話やPCの延長線上のものというよりも、新しいヒューマンインタフェイスを生み出せる可能性があるものだといえる。携帯電話の登場で私たちの生活スタイルが変わってしまったように、このウェアラブル機器の普及は、機械と人間の間にまったく新しい関係性をつくりあげることになるのではないだろうか。

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株式会社東芝 研究開発センター

マルチメディアラボラトリー

土井美和子研究主幹

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東芝の「ウェアラブル・オーサリング・システム」を身につけたところ。ディスプレイはなく、コマンドはすべて音声で伝える。小型カメラと音声によって記録されたものが、そのままデータとして保存される。

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