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[NI首長インタヴュー] 逗子市長 -- 長島 一由


NI首長インタヴュー

逗子市長

長島一由

聞き手=板生清(本誌監修)

ながしま・かずよし

1967年、神奈川県生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、フジテレビに入社。98年、東京大学大学院法学政治学研究科修了。同年、衆院選に神奈川4区から立候補するも落選。翌年、鎌倉市議選でトップ当選を果たす。98年には全国最年少で逗子市長に当選。バルセロナ五輪ウィンドサーフィン強化選手として活躍し、全日本チャンピオンに3度輝いたことがある異色の市長。

サンゴ礁やイルカを育む海、

ホタルのいる川を守る

――市長は、三一歳の若さで最年少の市長となられたとして大変に有名ですが、以前から政治に身を投じたいという志をもたれていたのですか?

長島―そうですね。きっかけは、テレビ局を休職して東大の大学院に行くときに、知り合いから、休職して学校に行く時間があるんだったら総選挙に出たらどうだ、と声をかけられたことでした。神奈川四区から出まして、一回目は負けましたが、その後鎌倉市議になり一年八カ月ほど在任し、九八年に逗子市長に就任しました。

――私は鎌倉市民ですので、逗子に行かれたのは大変残念なんですよ。また戻ってきてください(笑)。それはさておき、逗子も鎌倉同様、環境への取り組みが大変盛んですね。

長島―ええ。逗子は東京まで一時間ほどで通勤できる距離にありながら、山も海もある自然が豊かな場所で、それがこの地域の特色となっています。そうしたなか、現在、逗子市として保全に力を入れているのが、逗子の沖合三キロメートルほどのところにある「オオタカ根」と呼ばれる岩礁です。これは、水深三○メートルのところにある高さ約二○メートル、広さは約四五○平方メートルほどの岩礁で、岩の表面にはソフトコーラルと呼ばれる珊瑚だけでなく、ハードコーラルも生息しており、カラフルな熱帯魚や一メートル以上もあるクエやイシダイなども訪れるダイビングスポットです。現在は、ダイバーたちが自主的に釣り糸や錘、針などを回収していますが、今後は学術調査や定点観測をおこなって、エコツーリズムや環境教育などに活用していきたいと思っております。いずれは情報技術を駆使し、インターネット中継を通じて一年中定点観測をするという話もあります。

――それくらい小さな範囲だと、かなり精度の高い発信機を取り付ける必要がありそうですね。

長島―ええ。エリアが小さいことが問題なのです。自然保護の特別区域に指定されれば、国の補助がついて、学術調査もしやすいのですが……。それに、海というのは法律的にとても複雑なんですね。管轄でいうと、海域は国、海岸は県、海水浴場開設期間中の海辺の管理は市といった具合で、オオタカ根も結局、どこの管轄なのか曖昧なままで苦労していますが、逗子市の貴重な自然環境として保護に力を入れていきたいと考えています。

 そのほかにも、逗子の沖合にはイルカも出没するんですよ。これは、もともと江ノ島にいた二頭のイルカが泳いできたもので、たびたび目撃されています。それと、二〜三年前くらいからホタルがずいぶん出るようになりました。人里離れた奥まったところならいざ知らず、田越川という住宅街を流れる川で見られます。このように、逗子というのはじつにすばらしい立地条件を備えているわけで、もともとの住民だけでなく、ほかから移り住んでくる人たちにとっても、こうした自然環境は大変大きな魅力といえますね。

――そうしたなかで、市民の環境に対する意識も非常に高いわけですね。

長島―ええ。開発には非常にシビアです。現在、国立市のマンション訴訟が注目されていますが、逗子も同様の問題を抱えています。法的にはクリアしている開発計画に対して、行政として行政指導や条例を駆使していかに開発を抑えていけるか、それが現在の課題です。実態としては、市民の側に立って環境保全を進めているのですが、そのためには署名を集めていただくなど、市民サイドでアクションを起こしていただく必要がある。そうした役割分担をお互いがきちんと理解しなければなりません。もう一つ重要なのは、情報の共有。なかには、市が進んで開発をさせているんじゃないかと、誤解されている場合もありますからね。

――環境保全というのは、それぞれの利益の享受のかたちが目に見えにくいだけに、難しい問題を孕んでいますね。

長島―そうなんです。これからは、いかに直接のメリットやインセンティブを市民に提示していけるかだと思います。ゴミの分別をして、資源化・減量化を進め、地球環境を守りましょうと、ただ言っただけでは、意識の高い人しか実行に移してくれません。マンションにしても、本来なら五階まで建てられるところを条例のために三階までしか建てられないとしたら、それだけ資産価値が下がると考えますよね。ところが、この地域は適切な規制をおこなうことで、むしろ資産価値があがりますよ、と経済的なメリットもきちんと説明していきたいと思います。

地域通貨やタイムダラー制度に期待

長島―そうしたなか、現在注目しているのが早稲田商店街の「ラッキーチケット」のようなしかけです。これは、空き缶やペットボトルを回収機に入れると、コーヒー券からハワイ旅行券までさまざまな無料券が当たるというもので、リサイクルだけでなく、地域の活性化にも役立っているといいます。というのも、コーヒー券が当たった人は、喫茶店でコーヒーだけをタダで飲んで帰る人は少なくて、一緒にトーストやピザを注文するというんです。つまり、商店街の売り上げにもつながるわけで、こうした、三方一両得みたいなしかけが、環境行政には必要だなと感じています。

――現在、地域通貨は非常に注目されていますね。環境に対して何か行動したら、それに応じて地域通貨をもらえる。その地域通貨が別のアクションを生む。これは地域の活性化に大いに役立てられるように思います。

長島―現在、逗子市ではコミュニティ・シンクタンク創設の準備を進めていて、市民の皆さんに集まっていただき、地域活性化のために議論を重ねていこうとしているのですが、そのとっかかりのテーマとして挙がっているのも地域通貨なんです。そうしたなかで、現在注目しているのがアメリカのタイムダラー。これは、たとえば小学校一、二年生を三、四年生が教え、三、四年生は五、六年生に教わる、というような、ボランティアの時間預託制度といったものなんです。

――イタリアにも時間銀行という制度があるらしいですね。ボランティアが外国人にイタリア語を教えると、その時間を預金することができて、その預金を使って、たとえば壁のペンキ塗りをお願いできるとか。何かサービスを施した分だけ、自らもサービスを受けられる。面白い発想ですよね。

長島―ええ、いろいろな可能性がありますね。ただし、こうしたことは、やはり市民が中心になって実現していかなくてはいけない。逗子という市民意識の高い土地柄もあるかもしれませんが、行政が手を出しすぎては文句が出るばかりなんです。市民に任せた以上、市民に中心になってやっていただく。といっても、中国共産党もアメリカの大統領制も、最終の意思決定をするのはどんなに多くても五人までといわれるように、五人のキーマンの見定めもポイントだと思います。

――五人ですか。面白いですね。

長島―もちろん、市民参加といっても、市の職員はたんにサポートするだけでなく、住民運動のなかに入り込んでいく必要がある。その中でリーダーとなり得る方を見極めて、その人たちとしっかり情報交換しながら土台づくりをしていくこともすごく大事だな、と思っています。逗子というのは、池子の米軍家族住宅の問題を抱えていたこともあり、実際に三回もリコールがおこなわれたことがあるんです。人口五万八○○○人というのは、リコールが成立しうる可能性のある自治体だということですね。逆に言うと、小さい自治体だけにモデル事業は展開しやすい。そういう利点を活かしていきたいですね。

――ますます、情報公開や情報の共有というのが、重要になってきそうですね。

長島―ええ。共通の言語や物差しをもつことが大事です。環境問題においても、確実なデータを採る手法や数値化をする手法が必要だと感じています。WINやネイチャーインタフェイスの考え方を活かしたいですね。

――見えざるものを見えるかたちにしていくこと、まさにネイチャーインタフェイスの世界ですね。本日は、どうもありがとうございました。

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