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[NI特別企画] EXPO2005 AICHI 〜 万博通信 愛知万博におけるゼロエミッションの実践と”環境立国日本”の世界へのアピール   -- 鵜浦 真紗子



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「愛・地球博」の名のとおり、2005年に愛知県で開催される21世紀最初の国際博覧会は、

広く自然環境と人間の関係を考えていこうというものになる。

今年度、同万博の運営母体となる(財)2005年日本国際博覧会協会の環境マネージメントプロデューサーに就任した、

日本のゼロエミッション運動の推進者・鵜浦真紗子氏に、

これから協会に対して積極的に導入を働き掛けようとしている内容を中心に、

博覧会協会として環境への配慮や取り組みに向けての方向性、

ならびに環境マネージメントプロデューサーとしての今後の抱負や構想案を聞いた。

EXPO2005 AICHI〜愛知万博通信

特別企画

愛知万博におけるゼロエミッションの実践と

“環境立国日本”の世界へのアピール

鵜浦 真紗子

国際連合大学ゼロエミッションフォーラム・

コミュニティー・ネットワークアドバイザー

(財)2005年日本国際博覧会協会

環境マネージメントプロデューサー

聞き手=水田由紀

うのうら・まさこ

1955年、東京生まれ。高校在学中にアメリカ、国際基督教大学在学中にフィリピン留学。青山学院大学大学院国際政治経済学科修士課程。20代前半にローマ・クラブの創設者アウレリオ・ペッチェー氏と出会い、その生き方と世界観に影響を受ける。財務関連調査企業、労働省外郭研究機関、財団法人今日庵等を経て、94年より国連大学にて国際連合大学ゼロエミッション研究構想の設立から参画、99年より同大学高等研究所にて同構想プロジェクトマネージャーとして、ゼロエミッション関連のさまざまな委員会メンバーを歴任。現在は国連大学に所属、国連大学ゼロエミッションフォーラム・コミュニティー・ネットワークアドバイザー。02年、2005年日本国際博覧会「愛・地球博」の環境マネージメントプロデューサーに就任。

ゼロエミッションの実践など、

「環境」の思いきった実験の場に

――二〇〇五年に愛知県で開催される日本国際博覧会「愛・地球博」で、鵜浦さんは、環境分野の総合プロデューサーである環境マネージメントプロデューサーに就任されました。

 これまで日本のゼロエミッション運動を推進してきた中心的な存在の一人である鵜浦さんが、二一世紀最初の万博における環境に対し、どのような姿勢で取り組まれるのかをお聞きしたいと思います。

鵜浦――現在、開催まで残りわずか一〇〇〇日未満という状況のもとで、環境に対するさまざまなアイデアや構想を一つずつ具体的にしているところです。愛知万博はメインテーマに「自然の叡知」、サブテーマの一つに「循環型社会」を掲げています。博覧会協会活動としておこなわれる環境マネージメントは博覧会としてユニークであり、愛知をフィールドとする博覧会協会独自のものであるべきだと理解しております。したがって、私は博覧会協会の環境マネージメントプロデューサーとして、全身全霊をかけて計画や実施項目にアドバイスを惜しまず、しかもさまざまな角度から組織・団体との意見交換や合意形成を高めていくことが第一と考えます。さらに、愛知万博におけるミッション(使命)として、万博の環境の取り組み全般に対してもチャレンジ精神を発揮し、積極的にかかわっていきたいです。

 そのなかでも、私の夢はやはりゼロエミッションの実践です。具体的には博覧会サイトや近隣地域にゼロエミッション・ファクトリーやゼロエミッション・コミュニティーを構築するなどして、「ゼロエミッションって何?」というこれまでのユニークで多彩な質問に応えたい。同時に廃棄物処理を含む自治体や産業界、一般生活者、エンジニアや研究者など、あらゆる方面からゼロエミッションに関心のある人々にその概念を理解してもらい、さまざまなアプリケーション(応用)を実践してもらうためのラボラトリー、すなわち”実験場“のようにしたいですね。

土地資源の活用とエコ・ビジネスの可能性

――具体的には、どのようなことをお考えですか?

鵜浦――現在、 提案を検討している内容のひとつに「愛知の土地資源を活用したものづくり・製品開発とエコ・ビジネスの可能性」があります。

 たとえば、愛知県の瀬戸市の周辺地域には樹木が育たないハゲ山が多くあります。この種の土地は陶器産業に適した土壌であり、歴史的にも、この地にある瀬戸焼きは土という資源が興した地の利を生かした産業といえます。そのような場所に、今回はあえて広大なヒマワリ畑を考えています。そして、ヒマワリから応用できる、たとえば医薬品、食料品、農業としての栽培経営家の育成などの新しい産業を興し、同時にその種からできる油を化石燃料に替わるエネルギー源として使えるようにする――といったような多角的なものづくりや、今後の市場として有望といわれる二一世紀型産業、すなわちエコ・ビジネスへの幕開けなどを一例に、地元の自治体や産業界と連携をとって、産業・環境関連のパートナーシップ事業を試みたいですね。

――かなり規模の大きい、しかも長期的な取り組みですね。

鵜浦――そうです。万博の環境関連活動や実施項目をまとめていく際に私が意識しているのは、おっしゃる通り、長期的な視野で計画を検討しているかどうかという点、そして同時に、万博を契機に、会期中のみならず、会期後も何らかの形で継続できる未来型(志向)事業としてすすめていく可能性を探るという点です。

 博覧会そのものは会期が半年と限定されていますが、万博という国家事業がさらに”持続可能な社会づくりのための事業“としての意義を付加価値としてもち、そのような位置づけで、計画の段階から着地点を見据えて実践すること、これこそが二一世紀最初の万博にふさわしい試みではないでしょうか。したがって、当然、私はそれらを優先したいですね。このような観点も広い意味でゼロエミッションが目指す方向性と合致します。

 そこで、愛知の万博会場を中心に環境に関する”実験“を関係者のみなさんとともに創造することを願っています。

 ハゲ山の例を、少し古いですがソフィア・ローレン主演の映画「ひまわり」を想像しながら喩えてみましょう。まず、ヒマワリを一面に植えて、自然の雄大さや穏やかさに触れます。 二一世紀のライフスタイルは大量生産、大量消費、大量廃棄といった社会構造から訣別したものとよく言われていますが、同時に「真の豊かさとは何か?」といったような日常生活に対する質や変革も問われています。そこで、お花見や花観察といいましょうか、植物そのものを皆さんに愛でていただいて、心の栄養にしてもらいます。ヒマワリを愛でるように、心にゆとりをもった生活が体験できる環境を自分たちの手で土おこしから始めてつくる。

 さらに、成長したヒマワリが、新産業としてもう一つの顔をもって「ものづくり」の材料になる。 ヒマワリの種油を化石燃料の代替エネルギーとして活用し、やがて省エネ対策にもつなげていく。そのような過程で、ヒマワリ畑によってハゲ山の土壌が改良されたら、今度は植林するのです。林が雑木林に育つまで三〇年ぐらいはかかるそうですが、万博の会期の二〇〇五年を契機に、その地域の子供たちや孫の代まで、大きく育っていく姿を静かに見守っていける、長期のプロジェクトとして構想中です。

 ゼロエミッションは、一般に、廃棄物を減らすことであり、廃棄物のリサイクルをすることと捉えられています。しかし、本来はそれだけではなく、自然という生態系のなかの産業界や社会構造全体にかかわる広い視野をもった活動なのです。

 「廃棄物に付加価値を与えて、新たな資源として用いることで産業を活性化し、廃棄物が循環していく産業構造を構築、最終的には廃棄物そのものをも限りなくゼロにしていく、あるいは化石燃料によるエネルギーを代替エネルギーや天然資源を活用したエネルギーに替えていく」。 そのような社会の構造やシステム自体を変革すること、それがゼロエミッションのコンセプトです。そして、ゼロエミッションはその完成型として、新事業を創出して利益や雇用を生み出していくのが望ましいのです。

 国家プロジェクトとしての万博会場で、その実現に向けての奇抜で奇想天外な実験をしてみたいと思っています。 相当難しいチャレンジではありますが、志を高くもって、あきらめないこと。それが実現のための秘訣でしょうか。

”環境技術立国・日本“をアピール

鵜浦――今後さらに、環境のソフト面やハード面を開発、充実させていきたいと思います。とくに、日本の環境に関する情報を、いかに世界に向けて効率よく発信するかに関心をもち始めています。ビジネス感覚をもって、エコ・ビジネスの展開を前提に、あるいは環境学習・環境関連の人材育成のために発信するかが重要です。しかもこれは、文化の異なる先進国、開発途上国双方が、お互いに環境に対する徳を積んでいくツールとしてのハード開発も必要不可欠となります。

 そこで、今後、ITを駆使してこそ可能となる多言語化による情報発信システムを導入し、万博における環境情報はいうまでもなく日本の環境事情全体について、継続的に情報発信することを検討したいと思います。とくに環境情報に関しては、国連公用語や少数派といわれる言語に対しても、可能な限り情報開示できるツールを導入してみたい。これは、私自身が日本とアメリカを往復する生活環境から辿り着いた構想です。

 私は月の半分近くはロサンゼルスに住んでいるのですが、ロスのような大都市でも日本に関する情報は驚くほど少ないのです。日本人が日々海外に注目しているほど、海外では日本に関心がないのでしょうか。それとも、日本に対する魅力度の問題でしょうか。私は前者の議論をあえて進めないまでも後者を決して否定せず、まず日本の情報をグローバルな視点にもっていくツールを開発すれば、情報ギャップは多少とも解決できるのではないかと確信をもつようになったのです。

――その情報発信システムとは、どういうものなのでしょうか?

鵜浦――具体的には、UNL(ユニバーサル・ネットワーク・ランゲージ)というシステムで、私たちが万博の情報を日本語で発信すると、それをキャッチする海外の人々は、たとえば韓国であれば韓国の、その国の言語や言葉で読めるようになるのです。以前、英語と日本など二カ国言語によるマシン・トランスレーションシステムが世界各地で導入されましたが、UNLは二一世紀社会への貢献となるインターネットのマルチネットワークシステムを活用した、それらの拡大版といっていいでしょうか。

 日本は技術立国というお家芸があるわけですが、今後はさらに、環境対策や環境のための技術分野においても世界のトップランナーである面を他の国々にもっとアピールすべきだと思っています。

 これまで日本の企業が、公害や産業廃棄物など、過去の苦い経験を踏み台に、蓄積してきた環境のノウハウや技術には莫大なものがあります。しかし今までは、各種の環境博やプロダクト展といった専門的な紹介の場を除いては、その成果を発表する場は決して充分だったとは思えません。

 したがって、愛知万博をきっかけにこれまで培ってきたさまざまなベストプラクティスを、産業界、自治体、NGO、学会から吸い上げて、万博をサーバとして世界に発信したい。そろそろ「環境立国日本」を世界にきちんとPRし、その内容を売り込んでいく時期ではないでしょうか。それと同時に、海外から受けるさまざまなフィードバックにも大いに期待したいですね。

――そのUNLというシステムは、すでに完成しているのですか?

鵜浦――私の所属した国連大学高等研究所の関係者たちがUNLプロジェクトチームをつくり、現在も東京とヨーロッパを拠点に開発を続けています。きっと、そのシステム自体のデビューにとっても万博はよい機会になるでしょう。実験がうまくいけば、環境情報のみならず、万博会場でもさまざまな情報が可能です。たとえば「今日はAパビリオンが混んでいるのでこちらを見てください」といった個々の情報についても、大型掲示板や携帯電話などで多くの言語で伝えられるようにしたいですね。

チャレンジ精神に満ちた万博に

――万博の準備は、現在、どのような段階にきているのですか。

鵜浦――インフラの整備をおこなっている段階で、ゾーニングや敷地の割り振りをはじめ、いろいろな基礎工事をしています。同時にパビリオンの設計の詰めや、具体的なイベントの構想や実施に向けての準備に入ります。

 私の仕事は環境的側面からみて望ましい会場設計、会場周辺地域との連携、パビリオン運営内容の構築といったハード面と、広く環境教育や環境情報などのソフト開発の両面があります。博覧会協会では、環境の担当セクションが参画する関係者のための環境ガイドラインを順次出していきます。また、万博のエコロジーについての哲学や方針を謳った「エコロジー宣言」を、近々発表する予定です。

 じつは、環境マネジメントシステムの導入はもちろんのこと、それらをサポートする環境問題に対する測定システムや環境レポートの作成、さらに、建築物に関してもこれから協会に提案しようと思っている内容がいくつかあります。たとえば、エネルギー問題と環境デザインにおける「Green Building Rating System」という、現在認められている技術を基礎に、市場に影響を与える建築物に関する評価システムで、US Green Building Council.が積極的に推進しているものです。”グリーン建築物“といわれる明確な基準を設定し、建築物の生涯(ライフサイクル)から建築物全体の環境に関する実績を評価するシステムですので、認知されているエネルギー・環境の原理原則に基づいており、実践と理念とのバランスが魅力的です。他の評価システムと違い、米国建築業界のあらゆる部門から構成されているUS Green Council Membership が先導しており、評価が公開されています。査定対象は、新築・既存の商業建造物、組織団体建造物,高層住宅で、それぞれの基準を満たすことによって、得点単位が加算されるのが特徴です。それらの得点の合計をもとに、それぞれのレベルに応じた”グリーン建築物“という判定が下され、検定・証明書が与えられるわけです。これは、目的は豊富でありながら実施内容や操作は簡素といわれ、現在、米国ではこの評価を得られるような建築設計が優位とされてきています。この評価システムが日本に導入されているかどうか調査中ですが、愛知万博の建築会場には導入したいですね。

さらに、ソフト面ではもう一つ、産業方面の話ですが、愛知の中小企業をアピールしたいと思っています。 愛知は日本のものづくりの要、地理的にも日本の中心地に位置しており、トヨタという大手企業に連携している関連企業や中小企業が多いエリアです。彼らは日本経済の原動力になっているにもかかわらず、その技術力をアピールする場がほとんどない。だから、そういう企業のピカピカに光った技術にスポットを当てる場を万博が用意できればと思うのです。地場産業を育成することも、ゼロエミッションの大事な仕事の一つだと考えています。

 とにかく、全体を通じて出展した企業、来場者、かかわった人たちがワクワクするような万博になるといいですね。何によって人が喜び、刺激されるかといえば、やはり、夢を語っていること。フィロソフィーや心意気を掲げて挑戦する姿勢が大事ではないでしょうか。もちろん、予測できないことを実行する場合は大いなる失敗もありますが、それらを経験しないと物事は前に進みませんから。予算の問題や、クリアすべき課題は山ほどありますが、すでに出来上がったものをそのままもってくるだけの安全な万博では意味がありません。失敗を恐れない、チャレンジ精神に満ちた万博にしたいと思っています。

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