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P56_57
開発最前線2
顧客の要望に応じてシステムからカスタマイズをおこない、 指紋認証などセキュリティにも万全を期す。 「ポラリス」はビジネス向けPDAの新しい形だ。
ビジネス向けPDAの新星「ポラリス」
シチズン株式会社
プロトタイプの「ポラリス」
用途を絞り込むメリット
九七年にNTTドコモより発売された「ポケットボード」は、”一〇円メール“でメール端末ブームの火付け役となった。ポケットに入れて持ち運べる手軽さとポップなデザイン、メール機能に特化したわかりやすさ、使いやすさで若い女性を中心に人気を集め、「ポケボー」は「ポケベル」に次ぐ新たなコミュニケーションツールになった。 じつはこれ、シチズン時計が提供するOEM(相手先商標製品)商品である。現在の「ポケットボード・パレ」で三代目になるが、昨年はその進化形である「カラーブラウザボード」のOEMも開始し、これも好評を得ている。これはカラー液晶を採用し、メール機能だけでなくウェブブラウザ機能を搭載、携帯電話からPHS、DoPa、P-in Comp@ctまでドコモのすべての回線に接続を可能にした、これまでの集大成的な製品だ。 さて、今回紹介するのは今年五月に発表された「ポラリス」と呼ばれる携帯情報端末。まだプロトタイプなので、見てのとおりパッケージは素っ気ないが、それ以上にこれまでのポケットボードと異なるのは、コンシューマ向けの商品ではなく、ビジネスユースの端末だということ。ポケットボードの開発経験を生かし、今度はシチズンが独自のコンセプトに基づいてつくりあげた製品である。 サイズは片手のてのひらに収まるほど、液晶画面はタッチパネルになっていて、ペン入力が可能。そしてパネルをくるっと回転させると、下からキーボードが現れ、ポケットボード同様に両方の親指で入力ができるという仕組みだ。 「私たちが想定しているのは、これを特定の企業向けにカスタマイズし、その内部だけで使っていただくという用途です。たとえば外回りの営業マンがこれを持ち歩き、会社のブラウザにアクセスして、受発注情報など必要な情報をどこでもすぐに手に入れることができる。単に機器を売るのではなく、そのためのシステムを顧客の要望に応じてプロトコルのレベルからカスタマイズしていくことが、私たちの役割なんです」と言うのは川島健信(情報機器事業部・ソリューション開発室長)。川島自身、今回このポラリスのプロトタイプを携え、国内外の営業活動にあたっているが、じつはほかならぬプロトコルの専門家でもある。 このように機能や用途を明確に絞り込むというやり方は、ポケボーと同じ。ポケボーはメール以外の機能を捨てることによって逆に使いやすさを得、「多機能」のパソコンとの差別化に成功したわけだ。
指紋認証による本人確認
ポラリスのもう一つの特徴は、セキュリティ対策である。 「従来のパスワードやIDカードなどの確認だけでは、『なりすまし』を完全に防ぐことはできません。最近はPDAで買い物をするという用途も出ていますが、とくにこうしたモバイル機器は持ち歩くだけになくしやすい。不正使用を防ぎ、安心して使ってもらうためには、確実な本人確認が不可欠です。その方法として、指紋などの生体情報を利用しようという世界的な動きがあります」(川島) ポラリスは端末に指紋認証による本人確認システムを備える。側面のスリットに指先を当てて動かすと、指紋を読み取り、所有者の指紋と照らし合わせる。 さらに安全を期すために、指紋データは各端末の中だけに内蔵する。こうしたプライベートな情報をサーバの中でまとめて管理する方法は、情報が流出する危険があるという判断からだ。 「前述のように、ポラリスはシステムからカスタマイズするので、指紋認証も一つのプログラムとしてOSのレベルで組み込むことができる。そのOS自体も独自に開発したものです。ウィンドウズなどの一般的なOSを使えば外部と互換性があり、便利な面はあるけれども、それだけ他人に見られやすい・使われやすいという危険がある。OS自体をクローズドにすることも、情報の機密性を高めることになるわけです。こうした安全面での提案を積極的におこなっていくべきだと考えています」(川島)
ともに形につくりあげていく
このように、ハードとソフト両方の設計をおこなうことは、ほかにもメリットがある。 「使いやすさや省電力にも、適切な配慮ができました。たとえば、通信モジュールは電池を消費するので、送受信のときだけ作動するようスイッチのオン/オフをこまめにコントロールする。これはソフトが何をやっているか把握しているからこそできるわけです」(同設計部・課長・北原清志) ちなみに北原は、ポケボー誕生のきっかけとなった「FAXC1」の開発からかかわっている。これは携帯型のハンディFAXなのだが、これが紆余曲折をへてポケットボードに化けるのだ。 「そもそもポケットボードも、最初は営業マンなどが持っているポケベルに電文を送る装置としてつくったんです。それがクライアントとの折衝の中で一般向けのメール端末に姿を変え、まったく新しい市場を開拓することになった。私たちの役割は、基本的には顧客が望む商品を実現すること。それは必ずしも明確でないことが多いのですが、そこにくらいついていく粘り強さが私たちの長所ですね(笑)。ポラリスも同じで、思ってもみないような形に変わっていくのかもしれません」 当面の目標は、来年上旬にOEMでの提供を開始すること。どんな「ポラリス」が誕生するのか楽しみだ。
P57キャプション 上・パネルを回転するとキーボードが現れる 下・指紋認証装置
NTTドコモへのOEM商品である 「ポケットボード・パレ」(左)と「カラーブラウザボード」
情報機器設計部・川島建信(右)と北原清志
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