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[NIヒューマンインタビュー] NTTアドバンステクノロジ  -- 田崎 公郎


P58_59

NI Human Interview

NIヒューマン・インタヴュー

NTTアドバンステクノロジ

田崎公郎

代表取締役社長

聞き手=板生 清(本誌監修)

たざき・きみお

1939年熊本県生まれ。

1962年東京大学工学部卒業後、

日本電信電話公社(現NTT)入社。

ネットワーク開発センタ所長、

取締役長距離通信事業本部長などを歴任。

1998年より現職。

趣味はスキューバダイビング、

スキー、登山、囲碁。

研究所の成果をビジネスに生かす

――NTT│AT社は、NTTの保持する先端技術の技術移転を事業化する会社としてスタートしたと理解していますが、現在はいかがですか?

田崎――ええ、AT社というのは、三○○○人の研究者を擁するNTT研究所の成果を使って、ビジネスを展開している企業なんですね。つまり、わが社の特徴というのは、そのままNTT研究所の特徴と重なるわけで、IT関連ビジネスが中心になります。具体的に言うと、LSI、光ファイバー、ネットワーク、ソリューション、アプリケーションなど非常に多岐にわたります。我々が自負しているのは、選りすぐりの研究者たちが出した成果をもとにしていますから、技術的には非常に優れているという点です。しかしそれゆえにいささかシーズ先行になってしまい、ニーズとの間にややズレが生じがちというのが悩みのタネという面もあります。

 インターネットが出てきた当初も、研究所ではいち早くコンピュータ・ネットワークの研究を進めていたのですが、当時は、パソコンも家庭にはあまり入っていなかったし、回線料も高かったですから、一般の人たちからみればまったく現実味のない研究に見えただろうと思います。でも、研究というのは本来そういったもので、時代を先取りしてこそ意味があるというものではないでしょうか。こうした研究をビジネスにつなげていくのは、経営者が研究の価値をどれくらい的確に把握し、どれくらい素早く事業化のアクションを取れるかにかかっていると思うんですね。その意味で弊社の役割も、研究所の優れた成果を発掘し、それをいかにビジネスに展開していくかにあると思っております。

――私もNTT研究所に二四年間おりましたからよくわかりますが、研究の成果を社会にどうやって結びつけていくか、そこが一番難しいですね。

田崎――よく、日本の情報通信産業がアメリカに負けたのは技術力の低下のせいだと指摘されますが、そんなことは絶対にありません。技術力ではけっして負けていない。むしろ、アメリカに負けているのは経営力、営業力、仕事のやり方、マネジメントで負けているわけですね。まさに、それこそが私どもNTT│ATに課された最大の課題だと思っております。

閉じた系を実現するための環境技術

――そうしたなかで、田崎社長が今注目されておられる技術というのは何ですか?

田崎――環境に関する技術です。私は環境問題については、非常な危機感をもっているんです。というのも、産業革命以降の人口増加はもう異常としかいいようがないですからね。かつては、食糧やエネルギーも限られていましたし、病気の蔓延や災害などもあって、それらが自然の抑止力として働き、自然と人口の微妙なバランスが保たれていたんですね。ところが我々は産業革命という「リンゴ」を食べたとたん、自然の抑止力を突破してしまった。これまでの家畜や人間の力を遥かに超えた機械力を手中にすることにより、都市を築くために山を切り崩したり、治山治水のためにダムや堤防をつくったり、さまざまなかたちで自然に働きかけるようなりました。その歪みが、今まさに出てきているのです。

 その一番の歪みが廃棄物の問題ですね。我々だって食べたら必ず出すように、自然に何か働きかけたら、必ず廃棄するものが出てしまう。それは当然のことなのですが、産業革命以後の廃棄物の量は自然の許容の限界をはるかに超えてしまい、自然を痛めつけつつある。人間の身体もそうですが、自然も、ある限度を超えるともう修復不可能なんです。その悲惨な歴史の一例が、水俣病であり、イタイイタイ病であったわけですよね。しかも、産業革命後の文明を享受しているのは、日本を含めた欧米先進諸国だけだという現実。全体の一割か二割の人たちだけが自然を痛めつけ、物質的な豊かさを享受し、そのツケだけを残りの大多数の人たちに押し付けている現実は、考えようによっては大変に不公平なことだと思います。

 二一世紀中には、世界人口は間違いなく一○○億人を超えるだろうといわれていますが、そうなればこうした不公平さ、つまり貧富の差はますます大きく広がっていく。さりとて、この先、貧富の差を縮め、すべての人が先進国並みの生活を享受するようになったら、とてもじゃないけど地球はもちません。政策的に人口を減らすか、皆が生活パターンを変えるか――。いずれにしても、このままでは我々人類の将来は立ち行かなくなってしまうところまで来ているということです。

――そこで、環境のための技術、環境ビジネスというものが重要になってくるわけですね。

田崎――ええ。現在の自然の状況を人間に置き換えてみるとよくわかります。我々も、身体がおかしくなるとお医者さんに診てもらいますよね。問診したり、脈や血圧を測ったり、治療が必要な場合は薬を飲んだり手術をしたり。ひどい場合には隔離しなければならないこともある。でも、よく考えてみると、そんなに悪くなる前に、予防措置をとったほうがいいわけです。生活指導、食事指導といったヘルスケアが一番重要です。

 自然もこれとまったく同じで、おかしくなったらまずは診断をする必要があります。センサを使って調査したり、保全したり。そして、もうこれは危険な環境だということになったら、除去したり、焼却したり、化学処理を施したりと、治療措置をとることになります。しかし、そもそも治療措置などはとらずにすむならそのほうがいい。そのためにはなんと言っても予防措置が大事です。環境調査をしたり、啓蒙活動をしたり、情報公開を推進したり、自然にやさしい製品をつくったり、リサイクルを進めていくことこそが重要なんですね。

 そう考えると、NTT│AT社は、これからはその優れた技術力と研究能力を使って、環境における予防措置のための技術を提供していく必要がある。NTT研究所の最先端技術を生かして環境問題の解決に貢献していく。これが我々に課せられた大きな使命だと考えています。

――非常に共感できます。じつは、私はNTT研究所にいた一九九○年頃からネイチャーインタフェイスを提唱していたのですが、当時はあまり理解されなくて……。でも、今、田崎社長がおっしゃられたように、ネイチャーインタフェイスという考え方は、自然界のセンシングをきちんとやって、自然を理解し、人間と自然と人工物とのインタフェイスを見直していこうというものなんです。ITを人間の享楽やビジネスのためだけに使うのではなくて、地球を守るために活用していきたい。いよいよそういう時代になってきたな、という感じがしますね。

 具体的に、注目されている技術はありますか?

田崎――ええ、今はマイクロポーラスに着目しています。これは、古紙を固めてボール状にしたものなんですが、じつはこれ、リンや窒素の吸着率が活性炭素以上に高いんです。つまり、水質の浄化には最適な素材といえます。しかも、使用後はリンや窒素を豊富に含んでいますから、粉砕して肥料として使うことができる。その肥料を使って木を育て、また紙をつくると。

――まさに循環型ですね。

田崎――そう。完全に閉じた系でモノをつくるということができる。いらないモノを燃やしてしまおうという考え方は系が開いているわけで、必ず廃棄物が出てしまう。ところが、閉じた系でつくれば、廃棄物は出ません。こうした循環系の製品は、目先の経済性だけでみるとどうしても割高に見えてしまう傾向にありますが、いったん病いにかかってしまった自然を回復させるための費用とエネルギーを考えると、じつに安いものなんです。自然環境関連のコスト評価の場合は目先の経済性ではなく、つねにこうした自然環境問題を意識した、より次元の高い視点での評価が必要になるのではないでしょうか。

――確かに、自然環境問題というのは思想抜きでは語れないような世界ですよね。ただ、その問題を技術で解決していくことが、我々の、そしてそれぞれの企業の使命といえるでしょうね。

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